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小さな展示で壮大なスケール感に浸る『海の人類史-パイオニアたちの100万年』

東京駅近くの博物館「インターメディアテク」で、日本列島に初めて上陸した私たちの祖先を知る特別展示が開催中です。

海を越えて日本列島へ辿りつき、海の恵みを受けながら営みを始める…それは各地で発見された小さな出土物から知ることができます。

展示の一部、旧石器時代の日本列島人の軌跡を見ていきましょう。


「日本列島の人類史の始まり」

私たちの祖先、ホモ・サピエンスがアフリカで誕生したのは30万年~10万年前。
その後彼らは陸を移動し拡散し、やがて海をも越えていきます。そして遅くとも47000年前までにはオーストラリア大陸へ到着しました。

ホモ・サピエンス以前の原人の骨(レプリカ)の展示

その後、約1万年後に日本列島への航海が始まり、旧石器時代の今から約38000年前頃に、ついに日本列島に到達しました。

当時の日本列島の気候は氷期にあたり、そのため海面が低下し陸地は拡大していましたが、北海道以外は大陸とは繋がっていませんでした。

ホモ・サピエンスは対馬ルートと沖縄ルートから海を越えて辿りつきました。そしてその後シベリアからも陸路で北海道へとやってきました。

「海上輸送の世界最古の証拠」

海の向こうの島でしか得られないものが、ここにある…それは海上輸送が行われていた証拠になります。

静岡県沼津市の約37000年前の「井出丸山遺跡」から発掘された石器(生活の道具)の中に、伊豆諸島の神津島こうづしま産の黒曜石が含まれていました。
日本各地で採取できる黒曜石ですが、わざわざ船で輸送されたことを示しています。

神津島の黒曜石は良質で知られていた

黒曜石はマグマ活動で作り出される天然のガラスです。
母体となるマグマの組成を反映するので、原産地となる場所が特定できるといいます。
神津島産の良質な黒曜石は、この後も繰り返し海を渡ったことがわかっています。

地元産(上)や他の地域(中)の石と共に出土しました。
下:神津島産の黒曜石の石器

「世界最古の釣り針」

沖縄県南城市の23000年前頃のサキタリ洞遺跡から、世界最古と思われる釣り針が出土しています。
ギンタカハマという巻き貝の底部を割りとり、磨いて仕上げる工程がうかがえるものです。

インドネシアのティモール島で23000~16000年前の地層から同様の釣り針が発掘されていて、現時点ではこの両者が世界最古の釣り針とされています。

最下部が完成品 

丸木舟を知る…映画「スギメ」

当時の海上交通を担ったのが「丸木舟」だと考えられています。
その丸木舟を試行錯誤して再現させ、台湾から与那国島までの航海を成功させたドキュメント映画「スギメ」の映像の一部が上映されています。

あの大海原をよくぞこのような舟で!
逞しい私たちの祖先はさらに日本各地へと…展示はまだまだ続きます。

海とともに果敢に挑戦しながら生きてきた…この日本列島での私たちの最初の姿を思い浮かべ、まるで壮大なドラマの一部を見たかのような感覚を覚えました。

最後までお読みくださり有難うございました。

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