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今日会いに行きたい!気になる土偶#094伊勢堂岱縄文館

土偶の多くは頭部や手足が無くなり、体は欠け、バラバラの欠片となって出土する…人形ひとがたとして完全な形であるのはごく稀なことです。

今日の土偶も同じように頭は欠け…と思いきや、頭部がないのは壊れて無くなったのではなく、「もともと頭が作られなかった」とされるとても珍しい土偶です。

今から約4000年前縄文時代後期

『頭部なし土偶』
肩の線が一直線に象られ、首につながる余韻を一切持たない造形です。最初から頭部や頸部を作ろうといった意思が無かったようです。
その分、肩全体にくっきりと刻まれた刺突文(何かで刺した丸い文様)が際立って見えています。

高さ11.7㎝

肩の大きさを見ると、大きな腕が付いていたと想像できるようです。
刺突文を施した大きな肩は、縄文時代後半の東北地方の土偶に多く見られる姿です。

その刺突文のある肩と共に際立つのは、尖った胸。
その地肌は艶々と金属的にも見え、どこかサイボーグ的な雰囲気が漂います。

腹部は大きく凹み、短い足へと繋がっています。

土偶は約12000年前の縄文時代草創期から作り始められました。
その最初の2体の土偶には手足はなく、女性を思わせる体形を表すことに重きをおいたものでした。
さらに1体は頭部がありませんが、その存在を感じさせるように頸部に孔があります。

右が三重県の粥見井尻遺跡の土偶
左が滋賀県の相谷熊原遺跡の土偶

このように土偶が作り始められてから暫くの間は、頭部の表現は曖昧に作られていました。やがて時代が進むと、様々な表情を持つ顔や髪型を表したような頭が付くようになります。

そのような中にあって、頭を表現しなかった唯一の例と言われるのが、この『頭部なし土偶』です。

他に類を見ないこの造形は、いったい何を意味するのでしょうか。
頭部のない人形ひとがたの違和感や不気味さ…
目に見えない現実を超えた世界や呪術的な現象が絡んでいるようにも感じてきます。


*参考資料
土偶美術館 小川忠博/原田昌幸 平凡社

<写真&文章は著作権によって守られています>

最後までお読みくださり有難うございました☆彡

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