私が飛んだバイトの話
私は大学6年間でいくつかバイトをやってきた。
塾講師、設計事務所での模型制作、百貨店での売り子、子どもプログラミング教室のスタッフとか。
大抵のバイト先ではトラブルなく仕事をしてきたんだけど、一回だけ、どうしても耐えられずに飛んだバイトがある。
それが某有名百貨店でのお中元承りバイトである。
その時の案件がお中元承りだっただけで、それ以外にもバレンタイン期間はチョコを売ったり、お正月は初売りイベントスタッフなども同じ場所でやっていた。
しかし事件が起こったのはお中元の時だった。
いや、これといったでかい事件が起こったわけではないのだが、バイトに通う日々の中で様々な嫌なことが重なり、お金のために出勤しようと頑張ってみるも、どうしても家を出られない、涙が止まらない、嫌な出来事が思い起こされるみたいな状態になってしまったので、特に連絡もなくその後バイトに行くことはなかった。
バイト先には5~10人ほどのおばさん社員がいて、10人ほどのおばさんバイトがいる。
まず、この時点でしんどい。
というのも、ある程度年齢の離れた人がこんなに大勢いると、名前と顔は誰も一致させられないし、誰が社員で誰がバイトなのかも把握するのが難しい。
そしてほとんど全員が女性なのもまたしんどいポイント。
これ、私と同世代の女の子なら分かってくれると思うんですが、相当コミュ力が高くない限り、若い女の子である時点でおばさんからはなんか嫌われるんですよ。
私のコミュ力が低いのは確かとしても、マジで周りの友達はみんなバイト先のおばさんとは折り合いが悪いって言います。笑
いわゆる『女の職場』って感じ。
常にネチネチとした空気が流れてる。
でも意外と、おばさんたちの間ではその空気は悪いものではないらしく、当たり前なようなんですよね。
私にはひどく不快でした。具体的に何が?と言われると形容し難いけど。
で、私は普通の核家族家庭に住む女学生なので、お中元という文化には全く無縁なわけです。
もちろん私の不勉強のせいだろと言われればそこまでだけど、ほとんどの同世代がお中元に対する知識といったら、『お世話になった人に夏にお菓子とか贈り物をするやつ』としか理解してない気がする。
でもお中元って色々と難しいルールがあるんですよね。
しかも間違えたら縁起に関わるので結構まずいやつ。
例えば、のしの水引の結び方。
普通の蝶結びみたいなやつか、固結びみたいなやつか。
あとは包装紙の上にのしをかけるか、下にのしをかけるか。
のしに名入れをする場合はどこに名前を入れて役職はどのように書くか。
用途によっては生物は送ってはいけないとか。
〇〇日以降に送る場合は残暑見舞いになるとか。
あと、お中元を承るシステム上難しいことも色々ある。
同一住所に複数個送る時の承り方、
金券を送る場合の決済方法、
自宅に送る際の包装の規定、
送料込みの商品ではない場合それをどうお客さんに伝えるかとか。
みたいな覚えることが多すぎて、数時間の研修では覚えきれなくて、いざお客さんを目の前にして分からない!となった時に、周りの社員とかバイトのおばさんに質問しに行くんですよね。
すると、
『今忙しいから後にして!』
『〇〇さんに聞いてみて!』
とたらい回しにされる。
そのあともなかなか改めてちゃんと教えに来てくれるわけでもないし、〇〇さんはいなかったり忙しくて同様にたらい回しにされ、結局問題解決ができない。
しかも運良くおばさんが答えてくれたとしても、大抵のおばさんは態度が悪い。
文字で書いても伝わらないんだけど、明らかに教えてあげようという親切心がなく、めんどくさいな、邪魔するな、みたいな空気が出てる。
そういう環境に数日いると、
あ、ちょっとの分からないことで他の人に聞いたりしないほうがいいんだな。邪魔しちゃ悪いし。みんな忙しいし。
という考えになってくる。
そしてそこから私は周りのおばさんたちに分からないことがあっても聞くのをやめて、自己判断で全て進めることにした。
(そういえば私は周りの社員やバイトのことをずっとおばさんと書いていますが、ここからも私がいかに個人を識別していないのかわかることでしょう)
すると当たり前ながらミスが増え、『供養』ののしにするべきところを『御霊前』にしてみたり、のしの上に包装紙をかけるべきところを逆にしてしまったり、雑用としてやらされている品出しも商品の位置を間違えてしまったり。
いやそれはお前が普通に悪いやん。というのはそうなんだけど、質問しようものならたらい回しにされるか機嫌の悪い様子で回答をくれるだけなので、もうわざわざ質問しようという気が少しも残っていない。
で、実際にミスを起こしてしまうと、質問に答えてくれないしんどさよりも数倍しんどいことに、店長らしきおばさんに叱責される。
『貴方がやったんだよね!?』
『なんでそうしようと思ったの!?』
『どうやって責任取るの!?』
そこで心が折れた。
ミスしないように質問をしやすい環境が整っていないというのに、ミスをしたらバカほど怒られる。
しかもまだ、他のバイトの人も最初はそうだったよ〜という慰めが出来るのならまだしも、そうではないのである。
なぜか、私と同じくお中元のバイトを始めたてのおばさんは、私と同じミスをしたとしても店長らしきおばさんに『こういう時はこうすればいいんですよ〜』と言われるだけ。
そもそも、分からないことがあって質問したら、おばさん対おばさんの場合普通に返してくれるし。
バイトをしていた当時は、私に何か至らない部分があるからそうなってるんだろうなと精神をすり減らしたけど、今思うと若いバイトのことをいびってるだけである。
若者だからといって最初から私に対してはほとんどのおばさんが態度悪いし、ナメている感じ。
1000円の時給のためにこれ以上精神的体力を使うのはもったいないと思い、それ以降バイトに行くのはやめた。
なんかこれって、いじめられっ子が不登校になってしまうのと似ている。
私はなぜいじめられた側が不登校にならなければいけないのかと思うタイプなので、基本的に理不尽な仕打ちを受けても、耐えるというか、逆にいじめっ子側を追い込んでしまうタイプだ。
だが今回はあまりにもいじめっ子サイドが多すぎたのと、この百貨店の女社会においては私の地位は低いかもしれないが、一般社会的に見たらこれまで専業主婦をやってきて子供がある程度大きくなったからバイトを始めた性格の悪い中年女性たちなんかより、私の方が、能力も、地位も、若さも、ルックスも、学歴も、全て優っていると思い、こんなの相手にしててもしょうがないと思ったわけだ。
とまあ強気な発言をしたけど、実際はバイトを辞めたあともしんどかった。
まず、働いている中年女性というのが苦手になってしまった。
いや、働いている中年女性全てではないんだけど、なんか高飛車な感じの、女の職場にいる感じの中年女性。
元々別に好きではないが、そういう人を見ると嫌な思い出がフラッシュバックしてしまう。
あとはチョコレート売り場とパン屋さんの匂い。
私は同じ場所でバレンタイン時期にはチョコを売るバイトをしていたので、それも重なってチョコレート売り場の匂いでも思い出してしまう。
チョコレート本体はなぜか大丈夫。
パン屋さんの匂いについては、店の隣がメゾンカイザーだったので、それも思い出すきっかけになってしまうため。(とばっちり)
今でもそれら苦手なものに対面すると、当時の嫌な記憶が蘇り、外に出れなくなってしまう時があるけど、バイトを辞めた直後は1週間ほど外に出られなかった。
まあ、もしこれを読んだ人でバイト先や職場のおばさんにいびられている若い女性がいたら、そんな奴らより私の方が能力も、地位も、若さも、ルックスも、学歴も、全て優ってるしから全然響かない✌️✌️というマインドで、おばさんを猫ミームのヤギだと思ってください。
おわり。