コミュニケーションで大事なこと(2)
私がサポートしているPマンション管理組合。
先日、管理組合(委員会)による大規模修繕工事の竣工検査が行われました。
そこに・・・大規模修繕工事に不満をお持ちのSさん(居住組合員)登場!
竣工検査終了後・・・施工会社や工事監理者の対応に納得がいかないSさんと、大規模修繕工事委員会のI委員長が面談されることになりました。
面談の場では、Sさんのマシンガントークが炸裂~!
真面目なSさんは、承認欲求が大きなモチベーションになり・・・マシンガントークがマシンガントークを助長して・・・工事の不信感や危機感が高まっていくSさん!
当然・・・聞く耳なんか持たれていません。
Sさんの指摘事項は・・・
正直なところ・・・多くの指摘事項の殆どは、大規模修繕工事の工事品質に影響が及ばない(=致命的でもない)細かな内容でした。しかも、それらの指摘事項は、そのほとんどが既に施工会社により手直し修正済み事項です。
私は、「工事の手直しも一旦終了して、竣工検査も終わった時点で・・・Sさんの落し処(=今回の面談で合意したいポイント)は、どこなんだろう?」とマシンガントークを浴びていました。
建築工事は一品もの
大規模修繕工事を含む建築工事は、工場で生産される工業製品とは違って・・・ワンオフ(=たった1つの)手作り工事です。(土木や建築工事は、原則的にこのパターンです)
当たり前の話ですが・・・工事は、現場代理人(現場責任者)が一人で完成させるのではなく、(Pマンション規模でも)何十人かの専門職人(例:足場を組み立てる鳶職人~塗装職人まで職種も色々)が手作業で完成させていきます。
つまり、ヒューマンエラーは(ある程度)お約束なのです。
もちろん・・・そういうエラーが起きないような体制や仕組みが組まれていますが、100%完璧!は無理です。
また・・・Sさんのご指摘の中には、「もしかしたら施工会社の社員教育や工事管理体制に起因しているかも?」と思われる事項もありました。
「一事が万事」ということわざもあります。しかしながら、社員教育や工事管理体制に問題があるといっても些細な部分でしょう。
Sさんご指摘の内容は・・・致命的な欠陥ではなく、それが原因で工事不良が生じているとは思えませんでした。
Sさん不満の根源を紐解いてみる
Sさんの不満の根源は、施工会社や工事監理者(建築設計事務所)から、Sさんから投げかけた指摘や疑問に対し、納得できる回答(説明)がもらえなかったことではないか?と思えました。
正直・・・Sさんは建築の知識や経験がない(素人の)方だと思います。そんなSさんからの指摘は、建築工事のプロ(=施工会社、工事監理者)からすると・・・「訳も分からんくせに、執拗に同じことを言ってくるなあ」と、クレーマー(困ったちゃん)に思えたと思います。そういう気持ちって態度に出ますよね。
例えば・・・Sさんは「バルコニーの手すりの樹脂カバーの固定ビスが違う」と指摘されたそうです。この時に施工側の対応が「分かりました~、直しました~」的な対応だったそうです。
ビスの間違いは修正されましたが、Sさんは「他でも同じミスが気がつかず起きているのでは?」と不安になられたそうです。
この時に施工側からSさんに、例えば・・・「直しました。原因はビスの保管管理方法に問題があったようです。念のため他住戸もチェックしました。ご指摘ありがとうございました」と伝えれば、Sさんの不安や不満は募らなかったのですが、どうやら「直しました」報告しかなかったようです。
そんな対応にSさんは「適当にあしらわれている」「クレーマー扱いを受けている」と不本意な疎外感をお持ちになり・・・吐き出し先のないフラストレーションが溜まっていかれたのでしょう。
私がSさんにしたこと
私(というか・・・私たち)は、1時間続いたSさんのマシンガントークを(真摯に)じっくりと聴くことに努めました。
私は、Sさんが訴え(メッセージ)をできるだけ理解しようと努めました。
Sさんが話される内容には・・・賛同できる内容も、「そこをこだわるのか・・・」と思う内容も、「いやそれは違うでしょ」と思った内容も含まれていました。
そして・・・賛同できることには「なるほど!そうですね」と賛同の意をお伝えし、こだわり過ぎでは?と思うことには「そうお感じになったのですね」と理解・賛同の意を表しました。
また(素人の)Sさんが誤った解釈をお話になったことには「普通・・・そう捉えてしまいますよね。そうお考えになったことはよく理解できます。でも実は、それは○○ということだと思います」と(やんわりと)誤りを指摘しました。
それと・・・施工側の社員教育や工事管理体制のご指摘については「Sさんのご指摘は施工会社も真摯に受け取っているはず」とコメントしました。
そして・・・どうなった?
Sさんが自己顕示欲や自我の強い方だったら(高齢者に多い・・・なんて言ったら怒られるかな?(笑))、私の話に聞く耳を持たれなかったと思います。
でも幸いSさんは、そうではありませんでした。
Sさんは、一通りの話(マシンガントーク!(笑))をされた後「お疲れなのに・・・私の話を聞いてくださり、ありがとうございました。皆さんに聞いてもらって良かったです」と話されたからです。
そして最後に・・・I委員長から「Sさんからのいただいた書類は、委員会で共有します」と締められ、面談は終了しました。
結果的にSさんがどうお感じになっておられるのかは不明ですが・・・
私は一定の理解や不満解消にはつながったのでは?と思います。
同じような説明は・・・
私と同じような説明は、(言葉足らずだったかもしれませんが・・・)施工側からも為されていたと思います。
でもその時は、Sさんの耳には入ってこなかった。(今回の面談が始まった時のSさんの状態に同じ)
ところが今回は(最初に施工側に行ったのと同じ内容の)マシンガントークを行いながら・・・Sさんの「聞く耳」持っていない状態が解消していき、徐々に「聞く耳」を持たれるようになりました。
何故そうなったのか?
次回は、それを考えたいと思います。 (つづく)