見出し画像

6 目的が多様化する化粧(2011年から2015年)

 2011年も、これまでと同じく広告が非常に少ない。掲載されている美容特集や広告は2011年9月号118ページに掲載されている「節電の夏 ニオわない男に」というタイトルの夏のニオイ対策、そして毎月掲載されているスタイリストMASAHによる新作コスメの紹介コーナー「MASAH IN BEAUTY 男だって、キレイな方がいいにきまってる!」、時折掲載されるコスメの広告である。この時期の広告には2011年4月号252ページ「男子の好印象デビューは潤い肌ケアが左右する! 『メンズノンノ』モデルmeetsアディダススキンプロダクション」というタイトルの広告に使われている「好感度」、2011年7月号84ページ「女子ウケも、リラックスも叶える夏の香りが登場!」という、ロクシタンの広告タイトルに見られる「女子モテ」と「リラックス」、2011年12月号157ページ「コスメをいっちょ”ライン買い”のススメ。」というコスメ特集のサブタイトル「人気のメンズラインから、あのアニキも愛用する高級ブランドまで。毎日のスキンケアが楽しくなる、自分の肌への”投資”はいかが?」に見られる「楽しみ」といった、男性がこれまで化粧の目的としてきた項目が満遍なく掲載されている印象を受ける。
 2011年12月号から「コスメを持っている男性」という意味の言葉が掲載されるようになったのも印象的である。2011年12月号224ページでは「コスメを持っている男性」を「コスメン」という名称で呼び、「おしゃれもモテも、これで勝ちに行く!めざせ、コスメン!リップ&香りが僕たちのマストハブ」というタイトルでアパレルスタッフや『メンズノンノ』モデルの使っているコスメを紹介している。この特集のサブタイトルには次のように書かれている。

にわかに急増中の、コスメを愛用しているコスメン男子。いつでも勝負できる男でいるため、癒されたい自分のため、目的は色々、手段もいろいろ。でもリップと香りが先輩コスメンのマストハブ。

 以上より、男性が化粧を行う目的はこれまでのように「モテ」や「好感度」など1つに括って語ることは難しく、多様化していると分かる。
 また、この時期から上記の従来化粧の目的としてあったものに加え、「カッコよく歳をとりたい」という目的が登場した。2012年6月号212ページには「日焼けしていない健康的な肌で、清潔感と高感度アップを狙え!本日開講!男のUV塾」というタイトルで日焼け止め特集が掲載され、以下のように書かれている。

 黒い肌が男らしい時代はもう終わった!服映え&女子ウケのいい、健康的でイキイキとした肌をキープするには紫外線は大敵。そこでUVケア初心者の男子に向けて、健康肌になるためのUV講座を開講。UVダメージのないヘルシー肌の時代が来るぞ!
 なぜ、男にも日焼け止めが必要なのか? 若い頃の紫外線ダメージは、将来シミやシワとなり、見た目が老けて見えることに!紫外線の恐怖や正しい日焼け止めの知識を身につけ、かっこいい大人の男を目指していこう。

 以上のように、「女子モテ」「好印象」という目的に加えて「かっこいい大人の男になる」ことを目的とした文章が掲載されているのだ。2015年ごろからはその目的が大きくなり、2015年11月号72ページ「男子美容相談室」ではサブタイトルに「カッコいいオヤジになる準備は、早いに越したことなし!」という文章、2015年12月号134ページ「メンズノンノ美容大賞」ではインタビューで『メンズノンノ』モデルが「かっこいいオヤジになるための対策だって美容」と発言している。
こうして男性の化粧の目的に「カッコよく老ける」ことが登場した理由として、そのロールモデルとなる芸能人が登場したことが大きいと考えられるだろう。2014年ごろには、『メンズノンノ』創刊時に最も多く表紙を飾っていた阿部寛をはじめ、西島秀俊や堺雅人など40〜50歳のいわゆる「おじさん」芸能人が「かっこいい」という前向きなイメージ(注30)とともにブレイクを果たした(注31)。
 男性が化粧を積極的に行うようになったバブル期に20代だった芸能人たちが「かっこいい」というイメージで(注32)ブレイクを果たしたことで、20代の男性の化粧の目的には新たに「カッコよく老ける」ことが登場したと考えられる。
 また、2014年ごろから、美容特集が急激に増加したこともこの時期の大きな特徴として挙げられる。美容特集では、2015年5月号72ページ「パナソニックでつくる、クリーン男子の身だしなみ」や、2015年6月号「クリーン男子の”顔メンテナンス”」に見られるように、2014年ごろから美容特集で「クリーン」というワードが多用されるようになった。これは2014年ごろから流行した「ノームコア」の影響だと考えられるだろう。
 「ノームコア」とは、「「ノーマル」+「ハードコア」を組み合わせた言葉で「究極の普通」という意味」(注33)であり、クルーネックの白Tシャツやリブパンツといった、ファストファッションブランドで手に入るような「普通」のアイテムで作る、リラックスした清潔感のあるスタイルのことだ。また、「クリーン男子」とは「ノームコアで清潔感があり、かつトレンドを取り入れているファッションを楽しんでいる男性」(注34)のこととされている。
 ノームコアの流行で、これまで以上にファッションに清潔感が求められるようになり、その結果ファッションに合わせ化粧に関するページが増加したと考えられる。
 2010年代前半、男性の化粧は「清潔感」を求められるファッションに伴って大きくなり、加えて「カッコよく歳をとる」という目的も含むようになったのだ。

(次の記事:『7 自由の象徴としてのメイクアップ(2016年から現在)
』)

(注30)「阿部寛は3位!「スーツが似合う俳優」1位に選ばれたイケメンは?」『日刊大衆』、株式会社双葉社、2019年。<https://taishu.jp/articles/-/67760?page=2>最終閲覧日:2019年12月3日。
(注31)「2014年 ブレイク俳優ランキング」『ORICON NEWS』、オリコン株式会社、2014年。<https://www.oricon.co.jp/special/47525/>最終閲覧日:2019年12月3日。
(注32)Ciatr編集部「「日本の50代俳優はイケメンおじさん揃い!ベテランランキングTOP29【2019年最新版】」『ciatr』、株式会社ciatr、2019年。<https://ciatr.jp/topics/307595>最終閲覧日:2019年12月3日。
(注33)高村是州「ファッションスタイルクロニクル イラストで見る“おしゃれ”と流行の歴史」グラフィック社、2018年、P.76。
(注34)ivy「クリーン男子とは??〜メンズの王道スタイルを手に入れよう〜」『C O O R D I N O T E』2019年。<https://coordinote-yourself.com/mens-clean-fashion/>最終閲覧日:2019年12月3日。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?