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覚悟の心理学〜今とは違うあなたになる勇気の持ち方〜

今回は,かんねこがnoteでおこなう初のインタビュー企画です。

皆さん,不安や恐怖があって,本当は行動したいのに行動できないと悩むことがありませんか。

思春期に対人恐怖症になり,引きこもり,無職,ニート,フリーターを体験。そこから立ち上がり,自ら人生を楽しむためのコミュニケーション講座を開設している一人の男性がいます。
こちらにご紹介する川島達史さんです。

川島達史(精神保健福祉士)
【経歴】1981年2月26日生まれ。目白大学大学院心理学研究家・現代心理学専攻。日本大学経済学部産業経営学科卒業。社会心理学会会員。
株式会社ダイレクトコミュニケーション講師・代表取締役。専門は,成人のソーシャルスキルが孤独感や対人不安に与える影響,ソーシャルスキルトレーニングの開発など。思春期に対人恐怖症になり,引きこもり,無職,ニート,フリーターを体験。さまざまな心理療法を自ら試し,対人恐怖症を克服。貿易商社勤務を経て,2006年に株式会社ダイレクトコミュニケーションを設立。関東圏を中心に、複数の地域でコミュニケーション講座を開催している。代表的な著作として「嫌われる覚悟」がある。

今回は,川島さんのご経験を踏まえ,不安や恐怖にとらわれずに行動して人生を切り開いていくためのヒントをたっぷりとお話しいただきました。
インタビューをしていた私も,話を聞きながら心にストンと落ちて気持ちが楽になる瞬間が何度もありました。
このインタビュー記事,皆さんがこれからの人生をより前向きにすごすヒントとなることは間違いないでしょう。

ぜひ,かんねこ初のインタビュー記事をお楽しみください。

◇◇◇

川島さんの仕事ときっかけについて

川島さんの今の仕事について教えてください

土日はほとんど講義をしています。コミュニケーション講座の講義で,数えると年間100回はやっています。
12年やってるんで,これまで1200回はやっていると思います。
これまで1万人くらいの生徒さんには会っているので,街を歩いていると生徒さんに会うことが多いです。

それだけやると慣れる部分が多いですかね?

慣れってあんまりよくなくって,上手い講義と心に響く講義って違うんですよね。
1回目の講義は,講義としてはめちゃくちゃ下手くそだったんですけど,意外と生徒さんには響いた実感があります。
今でも初心にかえって講義をしていかなければなと思っています。いつでも,新しい気持ちで講義をやっていく。慣れてはいけないなという気持ちで講義をしています。

講義以外のお仕事もしているんですか。

コミュニケーションに関する企業研修を月に2〜3回,例えばリーダーシップ研修や婚活系,メンタルヘルス系など,他の講師と連携をとりながら幅広く展開しています。
それから,最近はいじめ専門の情熱的な先生が参加してくださったので,いじめ対策にも乗り出しています。
また,言語聴覚士の先生による吃音対策の個別指導もしています。ご高齢の方も利用されています。一方で,未成年向けのコミュニケーション講座も展開しています。

未成年から高齢者まで,また,企業から個人まで,幅広くコミュニケーションについてのコンテンツを提供している川島さん。そのルーツはどこにあるのでしょうか。

僕はもともとコミュニケーションが苦手で,人が嫌いでした。
電車で楽しそうにしている大学生をみて,「リア充うるさい!」と思っているような時期があったんです。でも,人が嫌いだと思う一方で,本音としては人と話したいなという思いもあったんです。

でも,人とどうコミュニケーションをとっていいのかわからなかった。話したいけれども話す方法がわからないし,話せない自分を責め続けていました。
そういう過去があるから,同じように苦しい経験をある人を助けたいという気持ちが強くなったんだと思います。
また,自分なりに苦しみつつも,人生でコミュニケーションは大切だなと実感したので,私のなかで力を入れて仕事にしていきたいなと思うようになりました。

川島さんご自身,苦しんでいた頃の自分と今とで,変化を感じている部分はありますか。

そうですね。根っこの「人が怖い」という感覚は実はそんなに変わっていないように思います。
「人が怖い」という感覚は,いわば糖尿病のようなものだとおもっています。
糖尿病は完治はしないですけど,食生活を変えて日常生活に支障ない程度にはコントロールできますよね。
「人が怖い」という感覚も根っこは変わらないですけど,トレーニングしていくなかで,日常生活に支障がない程度には改善していきました。

「人が怖い」という気持ち。それを改善しようとするなかで,どういう工夫が川島さんにとっては有効でしたか。

心理学の認知療法もやりましたが,僕はわりと哲学がよかったなと思っています。
哲学は21歳のときに勉強しました。僕はソクラテスが人生を変えたと思っていて,ソクラテスに「世の中に完全な根拠があるものはない」という発想を教えてもらったんです。
それまで,僕は「自分がだめだ」「ひきこもりはだめだ」「太っていてはだめだ」というように自分を責めていたんですけど,「世の中に完全な根拠のあるものはない」という考え方を知ってから,僕がそれまで思っていた「自分がだめだ」という認知についても「完全な根拠はない」んじゃないかと思うようになりました。
そこから,少しずつ自己肯定感の種が育ちはじめました。

コミュニケーションの取り方(方法論)を改善するうえで,特にこういう点に工夫をした,あるいは現に工夫をしているというところはありますか。

僕の昔のコミュニケーションの取り方は「質問攻め」でした。自分の話をしたくないので,ひたすら人に質問するんです。それで,自分のことを話さないし,人の答えてくれたことについてもちゃんと反応を示さない。
これじゃだめだと思って,面白い人の会話を分析するという作業をしました。
例えば,タモリさんのコミュニケーションの取り方。
タモリさんの出演している番組を録画して,会話の文字起こしをしました。分析していくと,タモリさんが「おうむ返し」(注:人の言っていることの一部をそのまま,あるいは表現を変えて繰り返す。相手は「ちゃんと話を聞いてくれているな」と実感できる)を効果的に使っていることがわかります。
様々な人を分析して,良いところを取り入れていくように工夫をしていました。

今,経営者としてコミュニケーションで特に工夫している点はありますか。

「人間性肯定」という技術があって,端的にいうと「褒める」ということなんですが,工夫する過程で褒め技術は大切だと実感しています。
褒め言葉ってすごいですよね。コスト0ですよ。お金が全くかからない。
会社経営者として実感していますが,集団の中でいろんな人を褒めることで,集団の「心の健康度」があがってきます。
それで皆さんがやる気になるし,楽しいと思ってくれる。
褒めるという技術にはいいことしかないなぁと感じています。

いいビジネスマンはたいてい褒めることが得意だし,褒めることが得意だと成功すると思います。

引きこもりの苦しい状態から自分で抜け出す方法を考えて実践し,今はコミュニケーションを多くの生徒に教えている川島さん。お話しを聞いているうちに,川島さんが「覚悟」を持って行動する秘訣が気になってきました。そこで,覚悟を持つための秘訣を質問してみたら,今回とっても丁寧に説明していただきました。

覚悟を持つための心理学

川島さんは引きこもりの状態から自分を変えてきた人ですが,自分を変えるための「覚悟」をどうやって持つことができたのでしょうか。

「自分がどういう人生を歩みたいか」という核がしっかりしてくると自動的に「覚悟」ができてくると思います。
覚悟を持つために,「自分を知る」「自分のやりたいことを探る」というのはとても大切です。
僕はコミュニケーションの豊かな社会を作るという明確な目的ができたのですが,そういう目的が決まってくると自分の弱さが後ろに隠れていくんですよね。
やりたいことが明確だと,弱い自分を受け止めつつ,目標に向かう勇気が出てきます。
だから,人生の目的,やりたいことをクリアにしていく作業はとても大切だと思っています。

それから,自分を追い込まない程度に逃げ道を塞ぐというのも大切な「覚悟」の持ち方です。
迷っていたらもうアポをとってしまう。約束してしまう。SNSで「やります」と宣言してしまう。
そうすると,なかなか「やっぱりやめた」と逃げることができませんからね。

僕の感覚では,やりたいという気持ちVS逃げたい気持ちが,4割VS6割ぐらいでしたら,レッツゴールールを採用しています。迷ったときは実行するというイメージですね。
注意点ですが,逃げたいという気持ちが8割ある状態なら,そこから逃げ道を塞ぐと自分を追い込みすぎると感じます。
だから,僕の基準は6割。逃げたいが6割くらいにおさまっているなら,逃げ道をあえて塞いでいます。

不安があって行動できない人が世の中には多いと思いますけど,不安に負けずに行動するためにどういう考え方をとっていけばいいと思っていますか。

自分のなかで不安を生み出している「認知」(物事の捉え方)を変えることは有効だと思います。
心理学的には「失敗回避」はメンタルヘルスに良くないことがわかっています。
失敗しちゃいけない。会話なら「沈黙になってはいけない」「恥をかいちゃいけない」と考える。
その考え方だと怖くて行動できませんよね。
他にも,「バカにされちゃいけない」とか「孤立しちゃいけない」とか,自分で不安を作ってしまう考え方はたくさんあるんです。
そういう「自分のなかに眠っている,不安を生み出す考え方」を紙に書き出してみる。紙に書き出して,その考えをどう修正していけばいいかを考えるということです。

あとは「恐怖突入」ですね。森田療法の考え方です。
そもそも人間である以上,不安や恐怖が消えることはありません。恐怖や不安は「なくそう」と考えると強くなってくるものなんです。
だから,恐怖や不安があったら,それをそのまま受け入れる。ああ,不安なんだな,恐怖があるんだな,こういう感情があるんだなと受け止める。ただそれだけで,そこに「いい」とか「悪い」といった評価をつけることをやめてみましょう。不安や恐怖を生み出すのは人間の脳のしくみで,ご先祖様がこういう脳を作ってきたんです。そういう脳が生み出した感情について自分を責めてもいいことありませんよね。
恐怖は恐怖として認めたうえで,あえて行動していく。行動すれば恐怖は小さくなっていきます。
僕はこの森田療法の考え方に励まされましたね。

人間ですから,行動をすれば失敗することもあると思います。失敗した場合にどういう考え方をとれば「覚悟」を持ち続ける人生を送れますか。

私の考え方ですが,人生はパチンコのようなものだと思っているんです。
パチンコはほとんど失敗ですよね。確率300分の1。300回打つと1個あたる。そんなものです。
人生で,成功確率が10%もあれば,かなり高いと思うんですよね。10回やれば1回確実にあたるんですよ。婚活だと10人にアプローチすれば1人と交際できる。確率が1%だったとしても,100人にアプローチすれば1人と交際できるんです。それで十分じゃないですか。
失敗は失敗じゃなくて,成功を生むまでのプロセスに過ぎないんですよ。そういう認識を持つことが大切だと思います。
人間は当たり前のように失敗するようにできているんです。プライドが高すぎる人はかえって行動がしにくくなると思います。プライドは適度に,失敗は当然なんだと考えていきましょう。

それから,大きな失敗を一度でもすると,そのあと失敗しても立ち直りが早くなります。
傷を負ったら強くなるということ。
僕は今でも失敗したり不安になったりすることがありますが,昔さんざんコミュニケーションで苦しんだこととか,起業したてで一人も生徒さんがいなかったとき「あのときよりはマシだろう」と思う。それで少しは気持ちが楽になります。
痛い失敗をしたときは,人生で大切な「経験値」を得たと考えることで,次の行動に進みやすくなるんじゃないでしょうか。

あとは,失敗は自分の成長につながっています。
人間って楽なときはあんまり考えませんよね。ドラクエで言えば主人公のレベルが99だと何も考えないじゃないですか。
レベル15くらいだとめちゃくちゃ考える。で,考えて,コマンドをうまく選択して敵を倒すとレベルがあがっていく。
人生でピンチだなと感じる瞬間があったら,めちゃくちゃ考えているはずです。それが成長につながっている。
そういう失敗の良い面を見つけることも有益だと思います。

他の人をみて「あの人は楽に物事をすすめていそうでいいな」と羨ましがることもあると思うんですけど,そういう羨望や嫉妬についてはどう考えればいいでしょうか。

僕が思うに,楽に物事が進むというのはあんまり面白くないんじゃないかと思うんです。
レベル99で雑魚キャラを倒しても全然楽しくないですよ。
レベル15で適度に苦しみながらどう工夫して目標を達成していくかを考えたほうがめっちゃおもしろい。僕はそう思っています。

それからもう一つ付け加えると,悩みって悪くないですよ。
僕はコミュニケーション講座をやって多くの生徒さんに会ってますが,みなさん大小の悩みを持っています。
でも,その悩みから学ぶことは多いんです。
悩んでいるときは気分が沈みがちですけど,それでも他の人に何かを与えているんだなという感覚を持ってほしいなと思っています。

工夫をこらして覚悟をもっている川島さん。お話ししているところどころで優しい笑顔がみられ,人を包み込むような暖かさがあります。
そんな川島さんは,コミュニケーション講座の生徒さんやこのnoteの読者にどんなことを伝えたかったのでしょうか。

最後に伝えたいこととは

質問も終盤になりますが,川島さんは,コミュニケーション講座で生徒さんに何を得て,どんな人生を送ってほしいと考えていますか。

基本的には人生は生徒さんそれぞれが決めていくものだと思っています。
ただ,あえて言うと,豊かな人間関係を築いてほしいなとは思っています。
それが幸せにつながっていると思っているんです。

では,この記事を読んでいる読者の皆さんに最後に伝えたいことはありますか。

よく言われることですが,人生は短いって思います。一瞬で終わります。
失敗しても死にはしませんし,失敗って数年くらい経つと大抵いい思い出になってたり,財産になっていたりするものです。

それから,伝えたいのは「交互作用」です。人は,人に出会うことで自分の価値がわかります。
生卵だけだと美味しくないですが,ご飯と出会うことであんなに美味しい卵かけご飯になります。卵の新たな価値が見つかってますよね。
人間も同じで,自分の価値は人と会わないとなかなか見つけられないものだと思います。
だから,たくさんの人に会って,コミュニケーションをとって,人生を楽しんでもらいたいなと思っています。

いかがでしたか。
人生や心のあり方について川島さんがいかに深く考えていらっしゃるかがよくわかります。
川島さんが苦しまれた過去は壮絶なものだったと思います。でも,私には,その経験こそが川島さんに今の光を与えているように感じずにはいられませんでした。
ここまでお読みいただきありがとうございました。


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