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「行動だけが人生を変える」とは必ずしもいえないということ

これまで「勇気」に関する様々な本が出版されてきた。

「嫌われる勇気」
「幸せになる勇気」
「老いる勇気」

だが,最近の私はこのどれでもない「勇気」の大切さを感じている。
それは何かというと「休む勇気」だ。
それは「歩みを止める勇気」とも言いかえることができる。

休むのには勇気が必要だ。
なぜなら,休むのは怖いことだからだ。
少なくとも,私にとって「休む」ことはものすごく怖い

◇◇◇

最近,こんな言葉を耳にすることが多くなったのではないか。

「多動力が大切だ。とにかく動け」
「行動だけが人生を変える」
「考えていたってはじまらない」
「だまっているより動いた人のほうがえらい」

このなかで「行動だけが人生を変える」は私が入っているオンラインサロン「はあちゅうサロン」の3か条の一つだ。

言いたいことはとてもわかるし,大切な原則だと思う。
確かに,行動したほうが人生が変わる確率があがるという側面は否定できない。

だが,私は一方でこうも思っている。

「行動だけが人生を変えるわけではない」
「休むことが人生に潤いを与える」
「人生には休むときが求められる場面がある」

行動を促進する言葉が溢れる世の中だからこそ,私は歩みを積極的に止めるという選択にも価値があるということを伝えたいのだ。

◇◇◇◇

行動を促進する言葉がこれだけ溢れかえると,あたかも周囲が爆速で行動しているような錯覚におちいる。

私が休んでいる間にも他のみんなは急激に変化し成長している。
そして,いつのまにかついていけなくなる。
休むという選択をしたばかりに夢を実現できなくなってしまう。

そのような,ある種の強迫観念めいたものにとらわれて,本当は休みを求めているんだけれども「行動」という選択を繰り返している人もいるのではないかと思っている。

なぜそのように思うかといえば,私がそうだからだ。

私はもともと無理をしがちな性格で,だからこそ「無理をしない」ようにブレーキをかける言葉を自分に意図的にかけるようにしている。

とはいえ,ブレーキをかけることに失敗することはかなり多い。

今頑張っていかないと後悔するのではないか。
成長の機会を逸してしまうのではないか。
うっすらとした不安感が頭のなかにあって,それが「休む」ことを許してくれないことがあるのだ。

◇◇◇

もう数年も前のことになるが,一時期,私はほぼ耳が聴こえなくなる難聴に陥った。


当時,大変仕事が忙しかった時期だ。
職場近くの耳鼻咽喉科でみてもらったところ「突発性難聴」の疑いがあると言われた。

だが,仕事に没頭していた私は仕事の速度を決して緩めなかった。
上司からは専門病院に行くように促された。
専門病院にいったところ「突発性難聴」ではないと言われたため,私は安心し仕事を続けたが,耳の聞こえは一向によくならなかった。


それでも仕事を続けたのは,弁護士としてよりよい仕事をしたかったというのもあるし,さらに能力を高めていきたかったというのもある。私はとにかく高みへと向かいたかった。

そう思ってはいたものの,ひたすら仕事をしていたら上司に叱られた。
仕事はいつでもできる。心身の健康を害すれば取り返しのつかないことになる。

その言葉を機に,私は仕事をセーブした。
休んだ結果,耳の調子はよくなり,今も仕事を継続できている。

◇◇◇

耳の不調の原因は今でもよくわかっていない。ただ,きっと精神的ストレスによるものだろうと思っている。

ストレスは自覚できるものと自覚できないものがある。
自覚できないもののほうが怖い。専門書によると,「意識していないストレス」が実はたまっていて,ある日たまったストレスが爆発するということはかなりの確率であるようだ。

・人間は無理できないようになっている。
・無理するとわりと簡単に壊れる。

私の尊敬する内田樹さんの言葉だ。その言葉を正確に引用したnoteを以前書いたのだが,それでもつい私は前進をもとめて行動してしまうからタチが悪い。

だから,私は私に言い聞かせるためにあえて言う。
休むことは人生を変えるための布石」だ。
行動することも休むこともどちらも必要であって,「行動だけが人生を変える」わけではない。

脳は黙っていても自動的に回転している。休んでいるあいだも実は脳は勝手に動いている。ボーッとしているときにアイディアがひらめくこともあるし,休んだ経験がきっかけになって高く飛べることもある。

休むこと=人生をストップさせることではない。
休んでいる間にも人生の景色は進んでいくものだし「あのとき行動してよかった」と思えることがあるのと同様に「あのとき休んでよかった」と思えることもあるのが実際のところではないか。

これが30年以上私が生きてきて得た実感だ。

多くの情報が同時に流入してきて周囲の環境が激流ともいえる状況。行動を促進する環境が整っている恵まれた状況。

そんな状況で私に必要なのは,もしかしたら「行動する覚悟」よりも「休む勇気」なのかもしれない。
そして,「休む勇気」が必要なのはきっと私だけではないはずだと思っている。


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