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DAOと株式会社って何が違うの???

この記事に書いてあること

「DAOという言葉を最近よく聞くけど、株式会社と具体的に何が違うの???」

という疑問を解消できます!

最初に

最近、

「ここ二、三年で分散型自律組織(DAO)の市場が急速に拡大しており、将来的には全ての組織は株式会社→DAOに置き換わる」

という主張を目にして次の三つの疑問が浮かびました。

  1. そもそもDAOという概念は昔からあったのになぜ近年急速に伸びているのか 

  2. DAOと株式会社、どう言った違いがあるの? 

  3. 違いを踏まえた上で、DAOが適している業界は何か?

前回の記事では、一つ目の疑問に対する私なりの見解を説明しました。

今回の記事では、二つ目の件に対しての見解を述べていきたいと思います。

次回の記事で、三つ目の問いに答えを出していきます。

DAOと株式会社の比較

DAOと株式会社の特徴を、組織の目的 / 形成 / 運営 のフェーズに分解して整理しました。

各特徴は、DAO / 株式会社それぞれのコアメンバー目線で書いております。
黄色でマーキングした、重要な相違点を以下で具体的に説明していきます。


目的の違い

株式会社では、"株主至上主義"のもと、株主の経済的価値の最大化を目的としています。(昨今では、ESG経営 / ステークホルダー資本主義が増えてきておりこのばかりではないが)

一方でDAOは、トークンを保有しているトークンホルダーの経済的価値を最大化するという目的に加えて、トークンを保有している人々の間での共通の価値観 / 目標を達成するという ”社会的価値の達成" も目的としています。
例えば、トークン所有者で出資して好きなアートを買う、寄付を行う、クローズドなコミュニティで交流する…など。

なぜこのような違いが生まれるのでしょうか?

それは、株式会社では組織の所有者と遂行者が異なるのに対して、DAOでは組織の所有者と遂行者が一致しているからです。

この違いに起因して、株式会社は経済的価値という"客観性の強い物差し"ばかりを追求するが、一方でDAOは経済的価値だけではなく社会的価値という"主観性の強い物差し”も追求する傾向にあると考えられます。

組織形成フェーズ:資金調達の違い

株式会社で資金調達をするとなると、一般的にはVCからのエクイティファイナンスか銀行等からのデッドファイナンスになり、それなりの手続きコストや信頼コストが必要となってきます。

一方でDAOは、トークン発行をすることでグローバルから調達することが可能です。

ただ注意したいこととして、この手軽さゆえにICOバブル時に新規発行されたトークンの95%が詐欺となってしまう問題が発生しました。

これをきっかけに各国の規制が強まり、日本では2022/8月時点で事実上トークンによる資金調達が不可能になっています。(莫大な課税がかかる & 免許を取得する必要がある)

また実際のDAOの資金調達を見ていても、最初期からガバナンストークンを発行するDAOはあまり存在しません。主流の資金調達方法は、一番最初にVCから資金調達をして、その後にガバナンストークンを発行する、という流れです。

「VCを入れることによって、DAOの特徴である分散性が損なわれるんじゃないか」という意見もあります。

しかし従来のスタートアップに比べて、全トークンに対するVCの保有トークン(株式)の割合は小さいですし、VCが初期投資することである種の"お墨付き(=詐欺ではない)"になって、一般の個人投資家も投資しやすい状況になっているのかもしれません。

運営フェーズ:経営意思決定の違い

株式会社での経営の意思決定は、一般的にトップダウン形式で行われます。

一方でDAOでの意思決定は、ガバナンストークンを用いた投票形式で行われます。

この意思決定の形式の違いによって、組織のパフォーマンスにどういった影響が現れるのでしょうか?

「Task management in decentralized autonomous organization(Xi Zhao et al. 2022)」に、MakerDAOという具体的なDAOを用いた分析がなされていました。

そもそも一口に経営意思決定と言っても、大きく二つに分けられます。一つ目が、組織の長期的なパフォーマンスに関わる"戦略的な意思決定"、二つ目が、組織の短期的なパフォーマンスに関わる”業務的な意思決定"です。例えば、プロトコルの変更などは戦略的な意思決定にあたり、パラメータ調整などは業務的な意思決定にあたります。

Xi Zhao( 2022)によると、株式会社のトップダウン方式と比較してDAOの投票方式は、戦略的な意思決定だとパフォーマンスに対してpositiveな影響を及ぼし、一方で業務的な意思決定だとパフォーマンスに対してnegativeな影響を及ぼす、という結果を出しています。

ゆえに、長期の戦略的な意思決定は全員参加の投票で行い、短期のオペレーショナルな意思決定は有識者による投票で行うべきなのかもしれません。

ただ超長期的な意思決定に関しては、有識者による投票にすべきだと考えます。

理由は、民主的な全員参加の意思決定だと破壊的なイノベーションに対応できないからです。破壊的イノベーションに対応するには、強いリーダーが流血を伴いながらも半ば強引に組織を改変していく必要があるのです。

経営意思決定のベストプラクティスに関する議論は、DAOの歴史がまだ2〜3年で浅くまだまだ発展途上なので、今後も試行錯誤を重ねていく必要がありそうです。

運営フェーズ:新規メンバーとの契約締結 の違い

株式会社において、新規メンバーが加入する手順は、1)募集要項によって求めている人物を宣伝し 2)面接によって能力のスクリーニングをし、3)雇用契約を結ぶことで法的拘束を行います。

一方で、DAOにおいて、新規メンバーが加入する手順は、入りたい人が認可要らずにすぐに参加できて、逆にすぐに辞められます。

これは、組織に新たに参加する側からすれば自由度が高くて良いように聞こえますが、受け入れる側からすれば大きな問題が発生します。

それは、組織全体の仕事量の推定が困難だという問題です。組織に新たに入ってくる人の能力が不明瞭だったり、簡単に組織を抜けられてしまうので人数も変わりやすいからです。

この問題の対処法としては、

1)組織への貢献度に応じて参加メンバーをランク付して、仕事量をざっくりと把握する(banklessDAOではこれをやっています) 
2)そもそも仕事量を正確に把握する必要がないDAOの設計にする(MakerDAOは仕事量を随時把握しなくても全てアルゴリズムで動きます)

 といった対策が考えれます。

運営フェーズ:報酬支払い の違い

株式会社では、報酬の支払いは一般的に法定通貨 + ストックオプションで行われます。

一方でDAOでは、ガバナンストークンやLPトークンなどで行われます。

ゆえにDAOでの人件費の支払いは、新たにトークンを発行してそれを配布するので資金調達で集めた法定通貨を削る必要性がありません。

ただしただ配布するだけではダメで、トークンエコノミクスをうまく設計して、ガバナンストークンを保有するメリットがないのですぐに売却される / 発行しすぎて価値が下がる  などの問題が起きないように注意する必要があります。

最後に

以上で見てきたように、株式会社とDAOの間には、各フェーズにおいて様々な違いがありました。

もう一度表のまとめを掲載します。

次回の記事では、これらの違いを比較することで、「じゃあどの業界でDAOが向いているの??」という問いに私なりの答えを出していきたいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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