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からだという器

朝、窓を開け、カーテンを開くと
今日という新しい一日が始まる。

今ここにある体と心を確かめるために
すこしの時間、瞑想をする。
自分の存在、この地球での立ち位置を確かめる習慣だ。

お気に入りの白檀のお香を焚いて
柔らかな香りに包まれながら、瞳を閉じる。
ゆっくりと呼吸を感じる。

腕や肩の疲れ、聞こえてくる声、ざわめき。
電車の音、風のささやきが時折、額をなでてゆく。

ときに、涙があふれることもある。
感情の器からこぼれ落ちるもの。

それは、あふれくる喜びや感謝
光に満ちたものであることもあれば
悲しみや怒り、やるせなさ。
闇に彩られ、痛みを伴う瞬間もある。

日々の波に出会った物事やひととの関わり
そこで芽生えた、私の心の揺らぎが
チカチカと線香花火がきらめくように
静寂の時間によみがえるのだ。

ひとつひとつに意味を見出すことも、
何の意味も付さないのも私。
選択の自由を自らに与え
再び、静かな呼吸に戻る。

この星の一点に
私は、いる。
それだけが、今、確かなこと。
そして、それはささやかに見えて
かけがえのない一度きりの奇跡であること。

カーテンが風に揺らいで
火を宿し終えた灰が
小皿で穏やかに安らいでいる。

たくさんの人々が
奇跡を今日も生きている。
たったひとつの
からだという器を抱いて。





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