今年読んだ本で強く印象に残ったもの

僕は割と読書が好きです。歳を重ねるにつれて読む量は減っているものの、それでも年間に40〜50冊くらいは読む。今はTwitterが全盛でいかに短い言葉で相手に真意を伝えるかが大事か‥という感じになってきている気もしますが、たまには長い文章を書いたり、読んだりするのも良いものです。というわけで、今年読んで楽しめた本を紹介させて頂きます。


1.ドミノ/恩田陸

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2020年 最初の1冊。なので読んだのが1年近く前になるので、少し記憶が曖昧なところがあるのですが‥。舞台は東京駅、27人と1匹の主人公たちが織りなす群像劇!至るところで起きる物語は互いを引きつけ合い‥。

とにかくいろんな人達が出てきて、いろんなことが起こるのですが、それがどんどん「ドミノ」になっていくのがこの作品の魅力。キャラ多くて覚えられない!なんてことはないと思うのでご安心を。ジャンルとしてはスラップスティックコメディです。

2.ハサミ男/殊能将之

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今は亡き殊能将之さんの傑作ミステリー。少女の首元にハサミを突き立て殺害する残忍なハサミ男。しかしハサミ男が狙っていた少女がハサミ男の手口で殺害され‥ハサミ男は自分の模倣犯の謎に迫る。またハサミ男の犯行と信じて疑わない警察は今度こそハサミ男を捕まえようと躍起になり‥。

とにかくネタバレ厳禁!これ以上の情報は仕入れてはダメです。ネットで検索とかもしたらダメです。何も知らない状態で読んで欲しいのです。僕の書いた軽いあらすじが事前情報の限界だと思います。読み終わった人と感想を話したくなる作品。

3.ハローサマー、グッドバイ/マイクル・コーニイ

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舞台は地球とよく似た惑星。政府の高官の息子と平民の娘の恋愛を描いた作品。出てくるのは地球人とよく似ているけど宇宙人。

しかしただの恋愛小説ではなく、タイトルと表紙からは想像しづらいけど実はSF小説である。ボーイ・ミーツ・ガール+SF。とっつきやすい青春劇とハードSFの組み合わせが見事な作品。タイトルも素晴らしくて大好き。続編もあるらしいので、そちらもいつか読んでみたい。繰り返しになりますが、表紙に騙されないように!どちらかといえばハードな作品です。

4.フィフティ・ピープル/チョン・セラン

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タイトルの通り、50人の登場人物が出てきます。ある大学病院を中心に、50人それぞれの小さなエピソードが語られていき、それぞれの小さなエピソードが少しずつ少しずつ絡み合っていく。

いろいろな人がいて、いろいろな考え方があっていいんだと思える小説。街ですれ違ったりする人にもその人の人生があるんだよな‥。今回紹介した小説の中ではいちばん新しいやつです。

5.残穢/小野不由美

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何の変哲もないマンションで畳を擦るような音が聞こえるという怪奇現象が起こり、その怪奇現象を主人公が調査していくドキュメンタリータッチのホラー小説。

ビックリさせるようなホラーではなく、新たな事実がわかるにつれどんどん怖さが増していく。調査をするうちに物語は思わぬ方向へ転がっていく、とにかく怖い。夜に寝れなくなること請け合いなので注意。

6.ピクニック・アット・ハンギングロック/ジョーン・リンジー

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1967年のオーストラリアの小説で、おそらく原作を映像化した映画の方が有名。女子寄宿学校のアップルヤード学院の教師と生徒たちがハンギングロックの麓にピクニックに行く。ハンギングロックを近くで見ようとした1人の教師と4人の生徒が忽然と姿を消したことで、全ての歯車が狂い出す‥

何とも幻想的で不思議な小説。ちょっとサイケな雰囲気もあるのは1967年という時代ゆえでしょうか。ミステリーというよりは幻想文学の方がジャンルとしては近いので、ガチガチのミステリーを想像して読むと肩透かしをくらいます。

7.残像に口紅を/筒井康隆

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使える文字が1文字ずつ、どんどん減っていく小説。それだけではなく、その文字が使えなくなるとその文字が入っているものが概念ごと消えてしまう。例えば「い」の文字が使えなくなると、作中では「いぬ」も「いしゃ」も消えてしまう‥。

なんとも筒井康隆らしい実験小説。使える文字がどんどん減っていき、使える文字が少なくなってきてドタバタし始めてからがなんとも楽しい。主人公のモデルは作者自身みたいなので、メタ小説としての側面もかなり強い。読む人は確実に選びます。筒井ファンなら必読です。

8.人質の朗読会/小川洋子

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異国でゲリラ組織の人質になってしまった8人の日本人。彼らはそれぞれ自分達の過去の些細だが思い出深い出来事を朗読することにした‥。

衝撃的な背景を持ちながら、語られる1つ1つのエピソードは非常にささやかで静謐なもの。明日の命も知れない人質たちが絶望的な状況で語ったことが「そういえばこんなことがあったなあ‥」というようなものであることにグッと来た。

9.蝿の王/ウィリアム・ゴールディング

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舞台は未来、世界では戦争が起こっていた。イギリスの少年たちが疎開するために乗っていた飛行機が撃ち落とされてしまい、ある孤島に不時着してしまう。初めは力を合わせていた少年たちだが‥‥。

「十五少年漂流記」とよく似た設定でありながら(実際に影響を受けたようである)、辿る道が全く違う作品。とくにグロテスクな描写などはないものの、あまりにも剥き出しにされたエゴと凄惨な闘争が描かれているため(しかもそれが少年たちによるもの)、読んでいて胸の奥からグッと不快なものが込み上げてくる。スティーブン・キングがこの作品を読んで思わず嘔吐したのは有名。人間の本質に迫った名作。僕が読んだのは新潮文庫のだけど、早川から新訳が出ているのでそちらも近いうちに読みます。


以上9冊です。気になったものがあったら是非とも読んで頂きたいです。それでは良いお年を‥アディオス、アミーゴ‥‥。

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