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薬局の本棚🔸腰痛症

ありふれた病気、腰痛。
町の薬剤師は毎日必ず遭遇すると思います。うちの薬局は、整形外科メインの病院やクリニックが近くにあるし、普通の内科クリニックからも年配の方にはいわゆる〈シップ〉が毎回処方されていたりします。

で、このたびわたしは今まで腰痛の患者さんに対して、辛いですよね〜とか安易に傾聴共感していたのを反省したわ。

体のどこかに痛みがあると、まじでQOLが下がりまくる。なんか話しかけられても、笑っていいとも!の観覧の人みたく(これ通じるんかいな…)「そうですねー(棒)」としか言えない状態になる。

そんな腰痛当事者のド新人であるわたしが今回おすすめする本はこちらです。

探検家の高野秀行さん(ムベンベで有名!)が腰痛を患い、いろんな治療を経験していくおはなし。なんと動物病院で鍼を打ってもらったりもします(驚愕)。
そしてラスト、高野さんが到った境地とは…。

さて、わたしが腰痛を経験しての学びは以下の通り。
・痛いとかなりQOLが低下する(先述の通り。)
・痛みの原因がわからないと不安が増す
・痛みと付き合う覚悟ができないと辛い

普段受講しているeラーニングで「腰痛症」の講座を見たところ、これとおんなじこと(も)言ってた。
いちいち自分で体験しなくてもわかるようにちゃんと勉強しよう…。

ちゃんと勉強した内容の一部。
◆腰痛症は、痛みの持続期間により急性痛(発症〜4週間未満)、亜急性痛(4週間〜3ヶ月未満)、慢性痛(3ヶ月以上)に分類される。
◆痛みの原因が重篤な疾患でないかきちんと判別することも重要。
◆痛みの原因は必ずしも検査で分かるようなものばかりでなく、心理・社会的な要因も大きい。
◆慢性的な痛みの治療目標は、痛みの消失ではなく、痛みがある状態でも日常生活を送ることができること。

チップスとして
〈難治性慢性腰痛〉には、「転換メカニズム」が働いていることがあるそうです。
転換メカニズムとは、
夫婦・親子関係などの家族問題、経済問題、仕事の内容や管理者への不満(過度の業務量、評価してもらえないなど)がある場合、〈腰痛などの〉症状を有することによって、家族の注意を自分に引きつけられる・仕事への不適応を隠すことができる・苦手な仕事を回避できる、といった「疾病利得」が得られる、と…
…なんかひどい言われよう。
疾病利得ぅ?
まあそういうこともあるのかなぁ…。(ちょっと思い当たる患者さんがいるようないないような。)

閑話休題。
現場では、もちろん薬剤師なので薬の効果・副作用の説明をします。病状もうかがいます。そのなかでけっこう聞かれるけど答えに気を遣う質問のうちの一つに、

「これは強い薬ですか?」

というのがあります。
文面通りに受け取れば、回答は「はい、強い薬です」「いいえ、強い薬ではありません」の二択だが、そういうことを聞きたいわけじゃないですよね?
そもそも、強い薬ってナニ??効果?副作用?作用時間が長い?象にも効く??
痛み止めに限らず、降圧剤や睡眠薬などについてもこのような質問を受けます。
わたしなりに、「これは強い薬ですか?」と聞く人の気持ちを3パターン考えてみました。

①どんな効能なのかもう少し詳しく聞きたい(類薬との比較、この薬の位置づけを知りたい)
②確実に効果があると確信したい(すぐに効くのか知りたい、はやく治りたい)
③副作用が出るのではないか等の不安がある(効果の良い薬は副作用も強いと思っている、過去に副作用が出たことがある、薬で依存症になるのではと思っている)

実際には、患者さん自身もあいまいなまま質問していることが多いため、それまでの会話や態度から推測しつつ対応するわけですが、もちろん処方医の意図と異なる説明はご法度。なので、薬剤師から「医師(せんせい)はどのようにおっしゃっていましたか?」と聞かれたら、逃げてんのかこいつ?!とか思わないで教えてくださいませ。
「いちばん弱い薬を出すと言っていた」ということなら、「最初は少量から開始しないと副作用が強く出ることがあるので、効果が感じられなくても自分で量を増やしたりしないでください。体が慣れてきて効果が弱いようなら医師の指示で少しずつ増量する薬です。最初は効き目が出るまでに5〜6日かかる方が多いです」などと説明していきます。

ほかに、質問ではないけど、こんなことを言われたこともあります。

「これは痛み止めですよね。痛み止めは、治す薬ではない。飲んでも治るわけではないので意味ないと思います」

うーん、理路整然。
でも痛いのならとりあえず痛みをなんとかしたらいいんじゃないかなあ。
急性期の方であれば、今は炎症が起きており炎症を治すため服薬が必要です、痛みを放置すると繰り返す痛み刺激により感作が成立して慢性痛に移行し治りにくくなりますよーーーとかなんとか語りますが。
この方の治療目標は、〈日常生活に支障がないようにする〉ではないということですかね。なんにせよ、医師との意思疎通がうまくいってなさそう。不満がこういう言葉になってるんだろうなーと思う。言葉通りに考えたら、究極的にはそもそも病気が治るとはどういうことか?という哲学的な話になってしまう。

器質的なトラブルがすべてなら、機械のようにダメな部品を交換すればよいが、こと腰痛に関しては、レントゲンやMRIなどの画像上は大きな異常がないことも多いそうです。逆に、異常があっても必ずしも症状があるわけではないとのこと。

つまり、画像診断で問題を指摘されても、痛みを気にしない生活はできるはず!わたしは薬を飲みつつ、朝晩、NHK「きょうの健康」で見た体操を頑張るわ。いまにみておれ腰痛め。背筋と腹筋で腰を支えるのだ。
脊柱管狭窄症におすすめの体操、貼っておきますね。
寝たままできてカンタンですよ。
では、また。


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