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ビルがぐるり

 仕事で羽田空港に行ったんです。羽田からどこかへ向かうのではなく、空港内での仕事なんですけど。西銀座入口から高速に乗って、タクシーの窓から風景をポケーっと見てたんですね。やっぱデケ〜な〜東京、と。そしたら気づいたんですよ。

 前後左右360度高層ビルに囲まれてることに。

 「あー、レインボブリッジだー」「今日はショボいライトアップですよ」「マジすか、アレでですか」って会話を同世代の運転手さんとしたりしてましたが、内心は見ちゃいけないものを見てほぼ動揺。

 大阪市は高速に乗れば東っ側に山見えるんです。生駒山系が。で、西に大阪湾。神戸で乗れば、北が山で南が海。京都の市街地は高速ないけど、東か北か西に山が見える。

 けどそこはそうではなかった。目印の山や海がなくてどこにいるか分からなくなる戸惑い、もしくは自然の風景が見えないことによるフワフワしたよるべなさ、的な。

 そして同時に底知れない恐怖を感じたんです。「ああ、これもう終わるわ」みたいな。東京一極に集中した開発は止めようがない。止める術もない。まるで、レミングの大暴走。そして、そこにいる自分は、高くは積み上がったけどいつ崩れるかわからないジェンガの上に立ってる気分で、まあめっちゃめちゃ怖かった。

 バブルで懲りたんと違うか、あの震災から学んでへんのか。どうやったら止められんねん。とか考えてたら運転手さんが言ったんですよ。「スゴイでしょ、東京。どこも。けど、この間外国のお客さん乗せて走ってたら『あそこの暗い場所は何だ』って聞かれたんですよ。言ったら驚いてましたよ。しかも東京駅の真ん前ですからね」

 結局、「空虚な中心」におわすあの権威をもってしか止められないのか、強欲は。それも駄目だろ…

 現場に着いてからも暗〜い気持ちでいたら、しっかり仕事ミスりました。コンチクショウ。

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