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【書評】PLG プロダクト・レッド・グロース「セールスがプロダクトを売る時代」から「プロダクトでプロダクトを売る時代」へ


<本の概要>

SaaSビジネスの新しいモデル「PLG」についての著書。PLGとは「まずはフリーミアム(無料プラン)でサービスを使ってもらい、価値を感じてもらった顧客に有料版を促す」というようなモデルである。従来の"営業マンが中心"となるセールスモデルは限界がきていると言及し、今後のSaaS企業が目指すべき方向性が詳細に記載されている。

<PLGとは>

本書ではPLGを以下のように定義している。

PLG(プロダクト・レット・グロース)とは米ベンチャーキャピタルのオープンビューが名付けたGTM戦略の一つで、ユーザー獲得、アクディベーション、リテンションを、プロダクトそのものが担うという手法だ。

つまりはプロダクトを主役にしたモデルで、「セールストークや営業資料等による提案をするのではなく、購入前に実際にプロダクトを試してもらうことにより拡販を推進する」という方針のことだ。Slack・Zoom・Adobeなど急拡大しているSaaS企業の多くでこの手法が取り入れられている。

従来の営業主導モデルは、購入前の体験価値が重視されるようになった等の市場変化により限界がきており、今後SaaSビジネスが拡大していくに際してはPLGが重要になるというのが筆者の考え方だ。

<本書の感想>

SaaSビジネスに携わっている人間としては非常にタメになる本であったと思う。私自身、本を読む中で「自分の会社は完全にセールス中心のモデルで、これが大きなボトルネックになっているのだということを改めて痛感した。

考え方だけではなく、「フリーミアム顧客に有料会員へのアップグレードを促すにはどういうアプローチをすればいいのか」「SaaSビズネスの適切な単価設定について」などの具体的な内容も言及されており、すぐにでも導入できそうなナレッジが豊富である。

<本書の学び>

①BtoBの購買担当者はBtoCの購買者よりもずっと感情的である

本書で何度も言及されているのが「購入者はプロダクトそのものではなく、それによって得られるメリット(価値)にお金を払う」ということだ。プロダクトの価値は以下の3つに分類される。

①機能的価値:プロダクトによって解決できる課題や問題
②感情的価値:上記の機能的価値によって得られる感情変化
③社会的価値:サービス導入によって変化する他者からの「見られ方」

この中でも特に②感情的価値については配慮が足りてないサービスが多いと言及されており、自社もまさにこの通りであることを痛感した。

・登録後すぐに有料アップグレードの案内を送る
・有料アップグレードした際のメリットを記載しない(「そんなことわかるでしょ」というスタンスで、事務的なことしか書かない)

これらは顧客の立場で考えると明らかに不適切な対応だが、無意識のうちに仕事の進め方が自己中心的になり、結果としてこのような案内になっていることも多いので、改めて見つめ直そうと感じた。

②価値を感じてもらために、情報を厳選することも重要

フリーミアムモデルで最も大事な事は、早く顧客に価値を感じてもらう事だと述べられている。そのために、顧客が求めているものを正しく把握した上で、メリットを得られるように最短のロードマップを敷いてあげる事に注力する事が必要になる。

・登録後すぐに長文の案内メールを送る
・色んな機能を搭載しすぎて、UI /UXが複雑化する
・顧客が入力すべき情報が多い

これらのことは顧客が離脱する大きな要因となりうる。メリットを感じる前のユーザーはファンでもなんでもなく、簡単に離脱されてしまう。そのことを忘れず、顧客ファーストの設計を心がけることが必要だと改めて感じた。

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