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シェアリングエコノミーの今後を考える

 あけましておめでとうございます。昨年中にもう一本は書きたいと思っていたのですが、筆不精が過ぎてクリスマスも鏡開きもスルーしてしまいました。大変遺憾です。今年もよろしくお願いします。本題と一切関係ないのですが、写真は今年の我が家のおせちに入っていたサツマイモです。カワイイのでサムネイルに採用しました。

 さて、2019年1発目の今回は一切野球の話をしません。たぶん。先日野球と関係のないテーマについて書きたいなと思い、Twitterにてぼくが書けそうなことを募集したところ、ARA(@arai_san_28)さんから「日本におけるシェアリングエコノミーの未来像について」というお題を頂きました。ありがとうございます。貴重なリクエストにお応えして、今回はこのテーマについて思ったことを適当に(ちょうどよく)書きたいと思います。

シェアリングエコノミーとは?

 まずは定義です。なにぶんぼく自身もちゃんと理解しているわけではないので…。「シェアリングエコノミー 定義」で雑にgoogleしたところ、総務省のサイトが引っ掛かりました。すげえ。

「シェアリング・エコノミー」とは、典型的には個人が保有する遊休資産(スキルのような無形のものも含む)の貸出しを仲介するサービスであり、貸主は遊休資産の活用による収入、借主は所有することなく利用ができるというメリットがある。貸し借りが成立するためには信頼関係の担保が必要であるが、そのためにソーシャルメディアの特性である情報交換に基づく緩やかなコミュニティの機能を活用することができる。(上記サイトより抜粋)

 なるほど。個人の資産(土地やらなんやら)を貸し借り(シェア)することそのものではなく、資産の貸し手(売り手)と利用者(買い手)を仲介するサービスを指しているみたいですね。売り手自身が自らの持っている資産を利用して直接サービスを提供する場合も含まれるようなので「遊休資産を用いたサービスの提供者と利用者をマッチングし、その管理を行うサービス」と表現するのが正確かもしれません。

 具体例として同サイトで挙げられているのは、日本にも進出したAirbnb(民泊など、共有スペースの貸借を仲介)、そしてアメリカのUber(いわゆる「白タク」と乗客のマッチング)。さらにこうしたサービスの信頼性を担保するためのツールとして、"Prove Trust"という利用者を相互評価するサイトも存在、シェアリングエコノミーを自ら維持していくためのシステムが構築されつつあるようです。

仲介者による効率性の改善

 シェアリングエコノミーに登場するプレーヤーは3種類。何らかの資産(=貸し借り・繰り返し利用することが可能なモノ)を持っていて、それを人に貸し出したり、それを使ったサービスを提供して対価を獲得したい売り手、提供されるサービス、あるいは資産を利用したい買い手、そしてそれらを結びつける仲介者です。

 仲介者は、自らが規定するルールの下で、売り手と買い手のそれぞれと契約を結びます。仲介者が存在せず、売り手と買い手とが直接賃貸契約を行う状況では、両者がその都度利用に関する交渉を行い、互いの合意を取り付ける必要がありました。

 そこで、売り手が提示する条件に合致する買い手を見つけて、この交渉のステップを代行する仲介者が登場します。たとえば集合住宅の賃貸のように1対多数で契約を結ぶ場合、家主が入居者といちいち交渉して契約を結んでいるようではキリがないので、これを仲介業者に委託し、自らの取引コストを大幅に削減します。これにより、本来はその高い取引コストのために市場に出るはずのなかったモノが市場に出回り、利用を希望する買い手がそれを手にすることができるようになるわけです(効率性の改善)。

シェアリングエコノミーと仲介者

 シェアリングエコノミーの扱うサービスは、一般的な資産の売買あるいは貸借と比較した時に、以下の2点をもって特徴づけることが出来ます。たぶん。

①貸し借りのスパンの短縮

②売り手の裾野の拡大

以下、それぞれについて詳しく説明していきます。

①シェアリングエコノミーが扱うのは、土地あるいは住宅といった資産。従来の利用システムにおいては長期的な借用を前提としていたモノです。先に述べた通り、こうした資産の貸し借りには前述の通り複雑な利用条件の検討が必要で、利用者が資産の持ち主、仲介者と直接対面して契約を結んでいては埒があきません。インターネットを仲介者とした契約の代行サービスはこの手続きを劇的に簡便化しました。結果としてこうした短いスパンでの貸借サービスの供給を可能にしたと言えます。

 スペースを気軽に共有するシステムが構築されることで、私たち消費者はより柔軟に居住空間の調整を行うことが出来ます。何を言っているかというと、たとえばアパートを借りるときに、自分が生きるために最低限必要なスペース分の部屋を借りて、友達を家に招くときは代わりに共有スペースを借りて遊ぶ、みたいな選択肢を検討することが出来るわけです。その分、居住地として選ぶアパートは安いところを借りられるようになるので、選択肢の幅が広がるようになります。特に地価が高く、専有スペースの貸借に大きなコストが掛かるような地域では、こうしたサービスによって人々の利便性が大きく向上することが予想されます。

②ネットを使った簡便な契約構造の実現は、資産の貸し手にも好影響を与えます。前項で述べたように、売り手がサービスを貸し出すための費用が大きい場合、資産はそもそも市場に出ることがなくなってしまいます。特に固定資産は運用するための準備費用が大きく、売り買いするにも、そこで何か事業をするにも大きなコストが掛かります。取引のために免許や資格の取得が求められることもあり、こうなると大きな資産を保有している人でも、なかなか市場に出るのが億劫になってしまいます。

 もちろん取引にそれだけのリスクが伴う、という点も慎重に考慮する必要がありますが、シェアリングエコノミーのシステムには、こうした取引の煩雑さを取り払い、サービスの供給の幅を広げる効果も存在します。自分自身の負担をあまり増やすことなく、持っている資産を収益化することが出来るなら、広大な土地や建物を保有している人、そのサービスを生業としている人以外も気軽に市場に参入できるようになります。いわゆる「白タク」行為を一定のルールの下で認め、車両の供給を増やしたUberはその最たる例でしょう。

 また、タクシーのような旅客輸送サービスでは、個人が一人一人独立して営業を行うより、たくさんの車両を抱える1社がまとめて管理を行った方が、配車に掛かる時間やそれに伴うコストを短縮できるので、売り手・買い手の双方にメリットがあります。このように、同質のサービスを提供する売り手を一括で管理することで、手続きの効率性を改善する効果も期待できます。

課題と対策

 以上、ダラダラとシェアリングエコノミーのポジティブな面について考察してきました。当然ですが、これらのメリットにはリスクも伴います。前項でも少し触れましたが、これらのサービスの提供には、資産を貸し出すための手続き上の制約を緩和する必要があります。本来厳正な審査の下に発行していた免許などの取得を義務化しなくなるわけですから、一歩間違えば事故や犯罪のリスクを高めることにつながります。

 また、繰り返し使う資産ならではの問題として、資産の整備・維持管理をどのようにしてなしていくのか、という問題もあります。たとえば共有スペースの貸し出しにおいては、多くの人が次々に、様々な目的で使用しているスペースの衛生環境の維持・整備をどのようにして行うのか、また利用者による自発的なマナー形成をどのように意識づけていくかが課題となります。

 最初にしないと言っていた野球の話をちょっとだけすると、草野球のグラウンドレンタルはこれに近い状況ですよね。時間ギリギリまでプレーして、整備がおざなりになってしまうと後の利用者に迷惑を掛けますが、それによってグラウンドの評判が下がるとその持ち主にも少なくないダメージが(持ち主自身には落ち度がないにも関わらず)及ぶ可能性があります。

 これらの問題に対して重要な役割を果たすのが、相互評価ネットワークの形成による自治制度の構築です。簡単に言えば悪質なユーザーの利用を自発的・制度的にブロックするシステムですね。ここでも、仲介者の存在が重要になってきます。

 仲介者は、資産の貸し手と利用に関する契約を結び、サービスを求める利用者に資産を貸し出す契約を結びます。利用者が資産に傷をつけるなど、貸し手が望まない行動をした場合、貸し手は利用者に対する賠償を求めるのはもちろんですが、同時に「悪質な利用者に貸し出す仲介者に頼むのはやめよう」と考えるようになります。

 結果、貸し手は他に仲介サービスの同業者がいればそちらへ移動するか、あるいはシェアリングエコノミーそのものに不信感を抱いて貸し出しをやめてしまうかもしれません。同じことは利用者の側にも起こります。仲介サイトを利用して借りたスペースや民泊の貸し手が悪質なものばかりであれば「シェアリングエコノミーのサービスは信用できない」と利用しなくなってしまう可能性があります。こうなると仲介者としては最悪で、場合によってはシェアリングエコノミーという商業形態そのものが潰れてしまうかもしれません。そうなれば当然、先に挙げたようなポジティブな部分の恩恵を享受することはできなくなります。

 そうならないためにも、仲介者は、サービスの「治安」を、自ら利用者に促して整備していく必要があるわけです。実際、多くのサービスでは、SNSや他のサービス、利用者の報告を受けて治安維持のための取り組みを行っているようです。冒頭で挙げたprove trustは、その枠組みを提供することで、シェアリングエコノミーが自立していくためのサービスの形態だと思います、多分。

Facebook、地域情報コミュニティサイト「Craigslist」、Airbnb、ビットコイン、結婚恋愛サイトの利用状況等に基づき、総合的にスコア化するサービスを提供(※ここまで先に挙げた総務省サイトからの引用)

 これに関連して一つ考えたのは、prove trustの発展形として「シェアリングエコノミーの環境を直接整備する」という業務そのものが新たなビジネスとして成立する可能性があるんじゃないか、ということです。仲介業者と包括的に契約を結び、貸し手の許可を得た上で、スペースや車両の清掃を行ったり、あるいはミシュランの審査員のように身分を伏せてサービスを利用することで、仲介者自身が観察しきれない部分のをカバーし、治安維持の一翼を担うというサービスに需要が発生する可能性があると思います(もうあるならごめんなさい)。デジタル化を前提に発展してきたネットワークの穴をアナログな手法で埋めていくことができれば、政府・国家の法規制を最小限に抑えた自由度の高いサービスを実現できる可能性があるんじゃないでしょうか。

日本における今後の展開

 ここまでは付け焼刃の知識でシェアリングエコノミーの性質と、そのメリットを考察してきました。頂いたテーマ案は「日本の」シェアリングエコノミーなので、最後にこの点をチラッと考察して終わります。

 結論から言えば、シェアリングエコノミーのスタイルは日本の国としての特性にマッチしており、サービスの内容によって今後広く浸透していく可能性が十二分にあると思います。

 シェアリングエコノミーが扱うのは、車両や資産など、専有・維持するために大きなコストを必要とするもので、こうした資産はその多くが若い世代よりも比較的高齢の世代によって保有されていると考えられます。高齢化が進む日本社会にあって、彼らが保有する資産が市場に出ることは社会的に大きなプラスを生み出すことが期待できます。

 特に近年は若い世代が自動車などを自分一人のものとして専有することに強いこだわりを持たない(そうするだけの経済的余裕がない)と言われていますから、こうしたサービスが広く普及すれば、利用したいと考える人は多いのではないでしょうか。資産を保有する高齢者にとっても、大きな準備費用なく、これまでよりも小さな単位で自らの資産を収入につなげることが出来るならば、魅力的な資産運用の方法の一つになる可能性はあると考えられます。

 他人と持ち物を共有することに対する抵抗感の解消、広く普及している国と比較すると厳格な法規制(より確実な事故・犯罪の防止)とのバランスなど、解決すべき点も見受けられるのは事実ですが、ぼく個人の意見としては、検討する余地のある新しいビジネスの形態だと思います。

おわり

 今回は以上です。本当は全部に「と思う」と付けたいぐらいに疎い分野で時間も掛かったのですが、何とか5000字ちょっとに収まりました()。長い・冗長・不明瞭の三拍子揃ったダサい文章ですが、お付き合い頂ける方は今年もよろしくお願い致します。

#シェアリングエコノミー #経済学 #Ballgameconomics

貨幣の雨に打たれたい