[ポチ子ちゃんと街の友だち]

第一話
「ポチ子ちゃんと街のゴミ屋さん」

それは、ちょっとした噂話でした。空き缶のゴミの日に、必ずそれをお金に換えようと、持って行ってしまう人がいるという、困ったことでした。
人々は、口々に言い合いました。

「みっともない!」
ある人は言いました。
「お金のためにやっているのよ。余程困っているのではないかしら。」
ある人は考えました。

空き缶の集め主は、毎月、帰りに黒い柴犬の散歩を見ていました。
「呑気なもんさ。こっちは、一円だってもうけが欲しいのに。」
いつものように、ジロリとにらみつけました。

(くうーん。)
黒い柴犬は、空き缶の持ち主を見つめました。飼い主と子どもたちは、戸惑い、
「ポチ子ちゃん!」
と、呼びました。
(なんだい、嫌な犬だね。)
(くうーん。)
黒い柴犬は、鼻をならして、空きカンをなめ始めてしまいました。
「駄目だよ!ポチ子ちゃん!」
ですが、空き缶の持ち主は、何故か怒りません。
ニコリと笑って、
「そうかい、そうかい。やっぱりこれは価値があるのさ。」
すうっと、笑って行ってしまいました。

いつの間にか空き缶は、無くならずに、またゴミとして、収集されるようになりました。

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