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皇室の宝石 | 皇后陛下の第一ティアラ

概要

日本に初めてもたらされたティアラ。
プラチナの土台にダイヤがあしらわれており、てっぺんには9個のダイヤで作られた星形の飾り(トッパー)が付いている。

このトッパーは、取り外してブローチにしたり、丸いダイヤのものに付けかえることもできる。

名称

皇后陛下の第1ティアラ
MEIJI TIARA

起源

1886年、伊藤博文が 駐独公使に購入を依頼した

宝飾メーカー

レオンハルト&フィーゲル
Leonhardt  & Fiegel

※ダイヤはショーメ

歴史

① 昭憲皇太后

パブリックドメイン/ Wikimedia Commons

1871年8月、明治天皇により「服制更改の勅諭」が下され、それまでの和装を洋装に改めることが表明されます。

1886年 伊藤博文がドイツに皇后のためのティアラその他装飾品を発注。
1889年6月、これを身につけた皇后の「 御真影ごしんえい」が撮影されました。
(この時は、てっぺんに星形の飾りをつけた状態で撮影)

欧米化を進める明治政府のもと、向こうの王冠にならい、ティアラ=最高位の女性の権威の象徴とされたのです。

②貞明皇后

宮内庁・パブリックドメイン
Wikimedia Commons

1900年、皇太子 嘉仁よしひと親王(後の大正天皇)と結婚。

大阪市立大都市文化研究センター研究員の 柗居まつい宏枝さんによると、この時に皇后の装飾品は代々引き継がれるものと決定したとされています。

写真は丸いトッパーバージョン。

③香淳皇后

宮内庁・パブリックドメイン
Wikimedia Commons


香淳皇后はティアラを3WAYで着回し(着け回し?)されていて興味深いです。
上の写真は星形バージョン。

↓丸いトッパーバージョンの写真↓


↓トッパーを外したバージョン↓

フォード大統領夫妻との晩餐会前
Use: unrestricted / catalog.archives.gov

④上皇后陛下

在チェコ日本国大使館 • CC BY 4.0(トリミング)
Wikimedia Commons

丸いダイヤのトッパーをつけたスタイルを好みました。
しかし徐々にこちらのティアラの代わりに第二・第三ティアラを着用されるようになります。
第一ティアラの重さによる健康被害がその理由と言われています。


↓こちらは第二ティアラ↓

外務省・CC BY 4.0(トリミング)
Wikimedia Conmons


↓第三ティアラ↓


⑤皇后陛下

外務省 • CC BY 4.0(トリミング)
Wikimedia Commons


朝見の儀や饗宴の儀に際して ティアラを着用。
この時も丸いダイヤのトッパーをつけるスタイルを採用されています。

内閣官房内閣広報室 • CC BY 4.0
Wikimedia Commons


おわりに


さてこの第一ティアラ、てっぺんの飾り(トッパー)を付け替えたり ブローチに転用できるとお話ししました。

これは別に第一ティアラに限られた事ではなく、ヨーロッパ各国に伝わるティアラにも共通して見られるディテールです。

・ティアラのトッパーをネックレスのパーツに転用できる、ハプスブルク家のペリドットパリュール

・同じくトッパーを外してネックレスに付けられるサヴォイア=アオスタ家のエメラルド

ハプスブルク家に伝わる
ペリドットの装飾品を身につけた女性。
見えづらいが、ネックレスにさがっているパーツは
取り外してティアラに装着することも可能
(public domain / Wikimedia Commons)



また、オランダ王室に伝わるこちらのティアラは 星形バージョンの第一ティアラによく似ています。

そもそもトッパーに見られる10芒星(✹)モチーフが、オーストリア皇后エリザベートが髪飾りに用いて以来 欧州でブームとなっていたそうです。

第一ティアラ・星形バージョン

オランダ王室のティアラの方はメーカーが不明なのですが、起源は第一ティアラと同時期の19世紀後半。
(1879年、時の国王ウィレム3世が再婚相手に贈ったもの)

第一ティアラを作ったレオンハルト&フィーゲル社の顧客リストには オランダ王族も含まれていたそうで、このティアラが同一メーカーのものである可能性も考えられます。

ちなみにこちらのティアラ、マキシマ王妃が自身の結婚式で着用したのち、2022年に長女のアマリア王女が初ティアラとして着用しました。
デビューティアラが、両親の結婚式で使われたものとは素敵ですよね。



これまで取り上げたティアラの要素が、日本で最も格式高いティアラに共通しているという事実に興奮しました。
その結果「おわりに」がボリューム過多になってしまいましたが、あれこれ調べる過程は楽しかったです!

ここまでお読みくださり、ありがとうございました。


参考

・見出し画像
unsplash

・東京新聞
皇后のティアラ 歴史脈々
2022年1月20日


・お茶の水女子大学教育・研究成果コレクション
柗居宏枝
昭憲皇太后の大礼服めぐる対独外交
人間文化創生科学論叢 2015年 第18巻p. 39-48


・明治聖德記念學會
昭憲皇太后と洋装

・VOGUE JAPAN
美しき時代、令和のはじまりに。プリンセスたちのティアラに注目!

・The Royal Watcher
The Dutch Diamond Stars

・THE COURT JEWELLER
MEIJI TIARA

・Harper’s BAZAAR
皇后雅子さまは「第一ティアラ」! 即位の礼で披露された、各国ロイヤルの華麗なティアラ

・NHK NEWS WEB
愛子さま成年の行事で注目 皇室とティアラ
2021年12月7日

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