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だいっきらいになったんだよ


まめの幼稚園のお友達の拓くんは「だいっきらい」が得意だ。
「ぼく、そのおやつだいっきらい。」
「そのおもちゃだいっきらい。」
「あの公園、だいっきらい。」
いつもこんな調子だ。

拓くんは我が家に来ても平気で
「この家つまんない。」と言うし、
「もうまめとは遊ばない!」とかも言う。
まめははじめのうちはびっくりして泣いていたけれど、最近は
「そんな事言うなよ!」とかなんとか、上手く流すようになっていた。
まめは「本当に"もう遊ばない"とか"つまんない"とか思っている訳でも無さそうだ。」と、なんとなく理解している様子だった。


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小学校に上がり、拓くんとはすっかり会わなくなった。まめはめいちゃんと仲良くなった。めいちゃんは毎日じいじと一緒に公園に来ていた。
ママはフルタイムで遅くまで働いているから来ないって、じいじは言っていた。

めいちゃんは逆上がりができないまめを毎日励ましてくれた。
「できる!ガンバレ!大丈夫!」
と、毎日。
お陰でまめはすっかり逆上がりが上手くなった。めいちゃんのじいじにも
「逆上がり、上手になったね。」と沢山褒められて、2人とも得意げだ。

めいちゃんとじいじは"だいっきらい"や"つまんない"を言わないから、私はなんだか毎日心が軽かった。



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ある日、上手に空中逆上がりをするめいちゃんに
「めいちゃんは本当に鉄棒が上手だね。小さな頃からこの公園で練習していたの?」と声をかけた。
めいちゃんは「ううん。この公園は去年からなの。」と言った。
続けて、
「めいのママがね、パパのことだいっきらいになったから、めいとママだけここに引越ししたんだよ!」と、満遍の笑みで教えてくれた。



じいじは少し困っていたけど、少しだけ笑顔だった。


「めいちゃんがこっちに引越してきたからまめはめいちゃんに会えて良かったね。」と私が言うと、まめは
「うん!俺、めいちゃんと公園で遊ぶの好き!」と言った。

めいちゃんはずっとニコニコしながらこっちを見ていた。



---私の心に住むアンミカが言う。
「"だいっきらい"って200色あんねん。」


それなら、拓くんのだいっきらいは何色だったんだろう。めいちゃんが言っただいっきらいは。---


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公園の帰り道、まめに
「めいちゃんもパパのこと、だいっきらいなのかな?」と聞かれた。
私は少し困った顔で、でも少しだけ笑顔で、「わからないなぁ。」と言ったと思う。


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