見出し画像

MLBデビュー前のエバン・ホワイトとの長期契約がマリナーズにとって意味すること

去年は病床からトレードを成立させるほどのトレード狂ぷりを見せたシアトル・マリナーズのジェリー・ディポトGMでしたが、今年のオフシーズンはここまでやけに静か。ちょっと不気味だなと思っていたら動いてきました。しかもやや予想外の方向に。

MLBデビュー前のエバン・ホワイトと6年2400万ドルの長期契約に打って出ました。オプションが3年分あり、全て行使されれば最大9年5000万ドル超の契約になるとのこと。ホワイトは2017年のドラフト1巡目指名(全体17位)で入団した23歳のファースト。今季はAA級アーカンソーで92試合に出場し、.290/.350/.488、18HRという成績で現在マリナーズ傘下4位、MLB全体58位のトッププロスペクト(いずれもMLB.comのランキング)です。

高い運動能力の持ち主であり、特にファースト守備は既にMLBでもGG賞級との呼び声も。打撃はファーストとしては少々パワーが物足りないとの評価も、AA級アーカンソーの投手有利な本拠地でプレーしながら365打数で18HRなのでそこまで心配する必要はないのかもしれません。メイクアップの評価が高いという点も好材料です。

ただ、そうは言ってもホワイトはまだAAA級以上でのプレー経験がわずかに4試合しかありません。MLBデビュー前の選手にこのような長期契約が与えられた事例は近年3例(ジョン・シングルトン、イロイ・ヒメネス、スコット・キングリー)ありますが、いずれの選手もAAA級で十分な経験を積んだ上で契約を結んでいるため、ホワイトのようなケースは前例がありません。

MLBではデビューから6年に相当するサービスタイムを得るまでは球団に選手の保有権があり、年俸も低く抑えることができます。スーパー2を除いて3年MLBでプレーすれば選手に年俸調停権が与えられるため、以降は多少年俸も上がりますが、それでもデビューから6年間でホワイトがこれから手にする2400万ドルもの金額を稼げる選手はそう多くありません。

ホワイトが全くの期待外れに終わる可能性もないとはいえません。それでもマリナーズはホワイトとの長期契約に打って出ました。この契約はチームにとって何を意味しているのでしょうか。

サービスタイムの懸念がなく、来季開幕からホワイトをレギュラーに据えられる

一つに挙げられるのが、ホワイトのサービスタイムを全く気にする必要がなくなった点です。今回の契約は年俸調停を含め、球団が保有権を持つ6年間を2400万ドルで半ば買い取っているようなものであるため、FA権の取得やスーパー2といったサービスタイムに関連する諸々を特に気にすることなくマリナーズはホワイトを今後起用することができます。

ここから先は

1,199字

¥ 100

この記事が参加している募集

たくさんのサポートを頂き、ありがとうございます。とても励みになっています。 サポートでシアトル・マリナーズを救うことはできませんが、記事を書くモチベーションは救うことができますので、少しでも記事を面白いと思って頂いた際にはぜひお願いします。