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33日目 酸っぱいコーヒーに出会った話

コーヒーと言われて想像するのは黒い液体で苦い飲み物だ。
だがある店でコーヒーを注文したら、何かフルーツっぽい味がした。
コーヒーには違いないのだが、何か味付けがされている。
そんな風に思っていた。

時間が経つとどんどん酸味が増していった。
これは腐ってる。
そう僕は確信した。

コーヒーには種類があるらしい。
そんなことは知っている。
ブルーマウンテンとかキリマンジャロとか自動販売機でもいろいろ書いて売っている。
でもどれも同じ味だ。
違いなんてなかった。
どれを飲んでも苦い味がするだけだ。

なのに世の中には腐ったコーヒーを売っている店があった。
これを飲んだせいで、どれも同じだったコーヒーにグラデーションがうまれてしまった。

はじめは苦いコーヒーと腐ったコーヒーの2分割だ。

一時期モーニングにはまっていたので、いろんな店でブラックコーヒーを飲んでいた。
どこもほぼ苦いだけの味だったが、その中の1つに苦いのに腐ったコーヒーが混じっていた。

苦いだけと腐っただけの間に苦いのに腐っているコーヒーが生まれた。

近所に新しいコーヒースタンドができたので行ってみた。
そこでは苦くないけど腐っていない腐りかけのコーヒーがだされた。
そしてそこのコーヒーも時間が経つと腐った。

いろいろな味のコーヒーを飲んだせいで、苦いだけのコーヒーを美味しく感じなくなった。
かといって腐ったコーヒーは好きではない。

その中間のものが好みだと気づいたのだ。
しかも豆の種類、産地、焙煎の仕方、バリスタの腕で味がぜんぜん違うように感じてしまうようになった。

違いのわかる男(ネスカフェ ゴールドブレンドのCM)になったのだ。

とたんに生きづらくなった。
どこで飲んでも同じだったコーヒーが、店ごとに違うものをだす化け物に変わったのだ。
なにが出てくるか口をつけてみるまでわからない怖い飲み物だ。

あきらかに昔の方が幸せだった。
腐ったコーヒーを飲んだせいで僕の人生は狂いはじめたのだ。
今日も僕は理想のコーヒーを求めてモーニングを食べに行く。

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