見出し画像

レモンケーキと図書館

今更だが、『図書館』は素晴らしい。
タダで本が読み放題、しかも貸してくれるなんてデザートと飲み物付きの1,000円ランチぐらい素晴らしい。

もし日本に図書館が無ければ、図書館で借りた本ばかり読んできた私の人生はイチゴののっていないショートケーキぐらい残念なものになっていたに違いない。

最寄りの図書館はオシャレな外観をしている。当初通りかかったときは高級マンションかと勘違いしていたぐらいだ。図書館内には小さなカフェも併設されていた。あまり期待せずチラッと覗く。メニューは黒カレーやドライカレーだが、可愛く盛り付けしてある。

これはなかなか好みのカフェ。ショーケースにはパンやケーキも置かれている。

ケーキ1ピースの大きさも大きめで良心的な価格だ。
中でも1番惹かれたのはレモンケーキ。
ケーキの上にかかっているアイシングは、ダリの絵画に出てくる溶けた時計のように芸術的にとろーりかかっていて、たまに自分で作る適当ケーキとは違うプロの作るケーキだ。
今回はカロリーと予算の都合でなんとか我慢したが、いつか誘惑に負けてしまうに違いない。

図書館からたんまり本を借りて自宅に戻り読んでいると、『この本は昔読んだことがある。。。』と途中で気がつくことがある。
自分と相性のいい、好みの本であるという何よりもの証拠だが、一度読んだ本なのに内容を忘れているのはちょっとショックだ。

そんなことを思い出しながら、Twitterをぼーっと見ていたら『赤ちゃんは全て忘れてしまうから遠出は無駄』の一文が目に止まった。

そういえば私自身も『あんたが小さな頃は色んなところに連れて行ったもんだけど、何も覚えていないみたいだから無駄だったわ。』とよく母親に言われていた。おっしゃる通り、写真に事実が残っているが、当の本人の記憶には全く残っておらず反論の余地もない。

春になって暖かくなり、桜が綺麗に咲いている。
水路に落ちた桜の花びらが静かに流れている様子、風に吹かれた桜の花びらが散っていく様子を眺める時間は何ものにも変え難い。

コロナ禍で大して外出も出来ないのが残念だが、子供と買い物に行く途中、綺麗な桜を見かけたり、道端に野草が咲いていると、『見て!綺麗だよ』と伝えずにはいられない。たんぽぽに近寄って綿毛をフーッと吹いて見せたり、つくしを見つけてツンツン小さな指で突かせたり。野草を少し摘んで家に持ち帰って、花瓶に飾ったり。

きっと子供は全部忘れてしまう。
でも忘れてしまうから本当に無駄なのだろうか。

プロの作るレモンケーキはスポンジの中にもレモンの中を入れ込み、ケーキの表面にもジャムを塗って味を足しているらしい。見えないものが工夫されているのだ。

きっと人間もレモンケーキと同じで、外から見えない内面を磨いて、本を読んで知識や感性を膨らませるのがいい。

借りてきた本を読み終えたらまた新しい本を借りに図書館へ行こう。
あのアイシングがとろーりかかったレモンケーキを読書のお供に。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?