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元 女の園の星の住人より

やっぱり男子がいないとダメだ、、、
と言っていたのは最初の1ヶ月だけだった。

完全な女子校ではなく一応共学だった。一応というのは女子が9割を占める商業科と男子100%の工業科で成り立っていて、建屋が分かれているから滅多に関わらないからだ。一応隣のクラスに数名男子がいたが、所在なさげに毎日生活しているようだった。最初は気の毒に思っていたがそのうちどうでも良くなった。

『女の園の星』を読んだ時、自分の高校生活を覗かれていたのかと思う程、あの頃の教室の風景が映し出されていた。

さすがにスルメは食べなかったが、大きめの手鏡を机の端にぶら下げて、暇があれば鏡の中の自分を飾る子もいたし、教科書で漫画を隠して読む子、一体何をしたらそんなに毎日眠いのか、授業中いつも寝ている子もいた。


進学校でもないし、先生たちも生徒に期待していない。テストの問題に対して模範解答が間違っていたときはちょっと酷すぎやしないかと思ったが、私たちも先生たちに期待していなかったからお互い様だ。


何があんなにおかしかったのか、通学路にある美容室の看板を見ては笑い、道端の雑草から出てきたカエルを見ては爆笑。箸が転がっても楽しいお年頃とはこのことだ。


先生たちには勝手にあだ名をつけ、もはや本名は覚えていない。オリジナルをオジリナルと言い間違えた校長先生のあだ名はしばらくオジリナルだったし、体育大会でロゴが入ったシャツを着てきた先生のあだ名は卒業するまでシャツに書かれていたロゴ名だった。自宅でもあだ名で呼ぶから友人の母はついあだ名で呼んでしまいそうで困ると嘆いていたようだ。

10年以上経ってアラサーになった今でも何があんなに楽しかったのだろうね、とまた笑い合う。

あの頃、なんとなくだけどこんなこと出来る時間は最後だと感じていた。


寒くても暑くても、雪が降っても雨が降っても学校は楽しかった。

星先生と同じように私もあの頃にちょっとだけ戻りたい。

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