見出し画像

カレーでバトンパス

高校の同級生でキミちゃんという子がいた。
バリバリの体育会系で毎日部活に勤しむ女子高生だ。そんなキミちゃんには唯一食べれないものがある。

それはカレーだ。

給食で出るとおかわり争奪戦、子どもの好きな食べ物にも常にランクインするカレーが嫌いとなるとなかなか大変らしい。
部活の野外合宿では夜ご飯はカレーが出たときは、一人だけ漬物と白ごはんが食事になるところでなんとか先生たちに交渉してふりかけご飯にしてもらったと青い顔をしていた。
自分の子どもの好物がカレーでも、おばあちゃんの家で食べなさい。。。と返すつもりだと宣言していた。彼女の決心は堅いようだ。

我が家のカレーは3日に渡る。
なんとか3日もたせると言ったほうが良い。

初日は普通のカレー。
2日目は残ったカレーを牛乳などで薄く味汚く伸ばしてカサ増し。
3日目は鍋にこびりついたカレーとそこに少しだけ残ったカレーをご飯の上に乗せ、中央に卵、周りにチーズをかけてカレードリアもどきにする。
こうして夜ご飯を作る手間削減をするわけだ。


ゆるい高校生活は全てがのんびりした空気に包まれていた。
運動会もおふざけ放題で、先生たちも一応やるけど、迷惑かけず勝手にやってねというノータッチ感を出していた。クラス対抗のリレーもウケを狙ったりダラダラ走ったりする中、そんな空気をものともせず、トップバッターで一人全力疾走し、全校中の拍手を掻っ攫ったキミちゃんを思い出す。
颯爽と走る彼女の横顔は凛々しく綺麗だった。

あの頃から20年以上経ち、カレーを作る側に回ったわけだが、作るたび日焼けした凛々しい顔で走るキミちゃんのカレーのようにピリッとした姿を思い出すのである。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?