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【組織人の一番大切な仕事は、できないことをしっかり「できません」と説明すること:布製マスク2枚配布問題に見る日本組織の課題】

日本の組織人としてかくあるべし、という考え方の中で、
明らかに間違っている…というか、とても良くないのが、

「上司が黒と言ったら問答無用で白いものでも黒」という考え方。
(論議もできず問答無用で、というのが一番の特徴)

白いものを黒と言い切るために費やすリソース(労力、時間、お金)は膨大だし、
なによりも正解は「白い」なんだから、世の中にとっても良くない。
加えて、後年の担当者には、

「白いものを黒と断言してしまった事実が、当時は間違いではなかった、という歴史を捏造する」

という過酷なミッションも課せられる、というおまけも付く。
まさに百害あって一利なし。

しかし冗談みたいな話ではあるが、組織の仕事の内、
結構な分量が上記のような仕事に割かれている、と感じている。
(歴史ある大きな会社だが、そんなこと全くしてないよ。
 という会社の方、ぜひともご一報ください。
 娘を御社に就職させるべく今から勉強させます)

「各家庭に布製マスク2枚配ります」問題も、おそらくだけど、
構造は間違いなく同じだと思う。

「そんな事をしても意味がないでしょう」
「そんな事をしている場合ではないでしょう」
という意見は、下からあがってこない、
もしくは、下からあがってきても無視される。

なぜなら、

「○○局長(とにかく偉いオッサン)が、このアイデアを実施せよとおっしゃっているから」

優秀な省庁の職員(お世辞抜きで、本当に優秀な人ばっかり)の、大切なリソースは、
この発言があった時点で、
「コロナ問題から国民の福祉を守るために何が最適か?」ではなく、
「○○局長(とにかく偉いオッサン)の発言を正当化するためには、どのような資料を作るべきか?」
に全振りされることになる。


長らく組織人として働いてきて、
確信していることがある。

組織人として一番やってはいけないことは、
できないことを「できる」と言ってしまうこと。

組織人として一番大切なのは、
できないことを、上司、組織、そして社会に対してきちんと「できない」と説明すること。

この辺、勘違いしている人がめちゃくちゃ多いが、
組織人は上司のために仕事をしている訳ではない。
(マジで「上司に呼ばれたときに席にいるのが仕事」と言い切る人もいる)
じゃぁ何のために仕事をしているか、というと、
限られたリソースの中で(ヒトもカネも時間も無い中で)、
社是や地方自治法で定められている方針や理念を実現するためにこそ、
組織人は仕事をしている。
上司の指示に従うのは、あくまで目的達成のための手段に過ぎない、
ということを忘れてはならない。
※例えば社是「お客様の幸せの実現」のために仕事をするのであって、
 「上司が誰かに怒られないようにするため」が目的で仕事をするのではない、
 ということ。

世の中のためを思うなら、という意識を誰しも持っていた方がいいが、
そんなもん持てないし持つ気もない、という方々にとっても、
今の人口減少社会の中で、ただでさえ少ないリソースを、
組織を間違った方向に舵取りするために全振りする、というリスクは、
取るべきじゃない、ということは分かりますよね?

え。
社会とか会社全体とかどうでもよくて、
「組織の中での自分の立ち位置」だけが重要なので、
そんな事は知ったこっちゃないって?
あ、そう(遠い目)

そ、それやったら、
「自分の子供が今の自分と似たような会社の状況になったら嫌でしょ」
ってのはどう!?これなら分かるかな!?
…あ、そう(遠い目)


ところで、これ、組織が大きければ大きいほど傾向が強い気がしている。
前職での、事が明るみに出ても問題なさそうな小さな事例を挙げると…

【例:マンホールカードのデザイン問題】
「じゃぁ課長、新規マンホールカードのデザインは、以前説明させていただいたとおり、
 当団体のマスコットキャラクターである『は○タン』のデザインで行きますね。
 キャンペーンの企画も、関係課等への根回しもすんでいますので」
「いや、このデザインはマズイな」
「え。事前にお話していましたよね」
「は○タンは、(一番えらい人)のお気に入りやからな。
 もし、(一番えらい人)が
 『このデザイン良いじゃない。じゃぁいっそ、
  全ての管内のマンホールをこのデザインにしなさいよ』
 と言ったら、どないすんねや」
「いやいや。気に入ってくれてるなら全然良いし、
 もし本当にそんな事を言われたとしても
 『全部のマンホールをデザインマンホールに取替えるなんて、
  今の維持管理に割いてる予算の規模を考えても到底できません』
 て説明すればいいじゃないですか」
「何を言ってるんや。(一番えらい人)が言ったら、できないと言える訳ないやないか」
「え。ちょっと待ってくださいよ。それじゃ(後略)」

今は笑い話ですけど、頑張った(いろいろな関係者も協力してくれてた)だけに、
これは悔しかったなぁ。
あぁ、は〇タン…

#神戸市 #マスク #仕事 #子育て #はばタン #コロナ対策

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