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「サラリーマン暗号技術開発者が、20年後、地方零細会社の経営をする」ほどに影響を及ぼしたクリステンセン博士〜その死を偲んで〜

大規模火災、異常気象、新型コロナウィルスの拡散、、、、今年も1月からバッドニュースばかり。そして、多くの訃報も耳にする。

多くの訃報の中で、気にせざるをえなかったのが、経営戦略研究の大家 クレイトン・クリステンセン博士の訃報だ。67歳という若さで、また巨星が天に召されてしまった。

クリステンセン博士を一躍有名にしたのが1997年に出版された著書「イノベーションのジレンマ」ではないだろうか。

どうでも良いが、邦題が確実に間違っている。原題通り「イノベーターのジレンマ」でないと、大きく方向を履き違えてしまうと思うのだが。。。

私も、社会人キャリアをスタートして数年後、(出版から時間が経過していたが)この名著に出会った。経営学なんてものを一切勉強もせず、実践でもビジネスに関わることがない青年にすら、この本が、その後のキャリアに大きな影響を及ぼすとは思ってもいなかった。というくらい、なかなか素敵な内容だった。

今、私は地方で小さなIT会社を経営している(というほど格好良いものではないが)のだが、社会人キャリアのスタートは、ご縁をいただき大企業の技術研究所の、しがないサラリーマン暗号技術開発者であった。

クリステンセン博士の訃報を知り、改めて、なぜ、サラリーマン暗号技術開発者が、20年後には、地方のIT会社を経営するに至ったのか、少しだけ振り返ってみたいと思った。

社会人キャリアスタート前後

学生時代は、ザ・理系の頭しかなかった。その中でも、人より少しだけ数学ができた程度で、特に何かに秀でているいるわけでもなかった。数学がちょっと好きで、パソコン、プログラミングあたりをちょっとかじる程度の学生だった。

当時は、Windows95はまだ世にでておらず、MacもMotorolaのMPUを使っていた時代。マシンをぶん回すには、研究室のSolarisを使う必要があった。もちろん、STEM教育なんてのはさらさらない時代。大企業に努めて、年功序列で終身雇用が当たり前の時代だった。

関西で数学とコンピュータに少し戯れていたので、就職活動についてのアンテナも低く、内定なんてほぼ取れず。結果的に、ご縁をいただいた大企業の技術研究所に入社することとなった。田舎者で何かにずば抜けて優れているわけでもない自分を採用いただいたなんて、今考えても、なんとも贅沢な話である。

入社後に配属先が決まるわけだが、暗号技術を適用する技術分野に配属され、研究者として社会人をスタートした。

現代暗号は、大学レベル以上の高等数学を必要とする。また、それを応用し、社会実装までたどり着くには、ITが必要だ。まぁ、プロフェッショナルには不足したスキルだらけであるものの、拒絶反応は一切なく、自然に社会人キャリアをスタートすることができた。

その数年後(若気の至り、あるある時代)

(少なくとも当時)技術研究所とは、ビジネスの最前線からは少し離れた場所であった。そのため、技術実証のために開発したプロダクトは、すぐに世の中に出るものではない。ま。それは、世の常なのかもしれない。

(少なくとも、当時は)

30代を迎える前の(若き)青年は、どうやったら技術が世の中の現場に役に立つのか?どういうプロセスを辿るべきなのだろうか?と疑問に思ってしまった。プロになり切れたとは言い難いとはいえ、その時々で時間と努力を費やし生み出された技術・プロダクトを、世の中で試してみたいと思うのは当たり前だと思っていた。

そのモチベーションから、誰から教えてもらうでもなく、色々調べて色々読んで学んだ。そこで出会った思い出深い、そしてのちの人生観・考え方に大きな影響を及ぼした書籍がいくつかある。今も大切にしている。

そもそも、この本で、デザイン・ファームなるものが世の中に存在し、ある一定の方法論で、素晴らしいものが生み出されてくことを知った。デザイン・ファームIDEOに行けるものなら行きたいと思った。英語も(当時は全く)できず、海外経験もない、超ドメドメ青年は、確実に日和った。人生最大の後悔と言っても過言ではない。

伝統的には、IT業界の雄、International Business Machine のIBM復活の軌跡。ルイス・ガースナー氏の名著。当時大企業に属していた青年にとっては、これまたインパクトのある内容であった。

”枯れた技術の水平思考”、これを聞いたとき、まさにそういうことだよなぁと思った。最先端技術が、必ずしも、リアルタイムで世の中の役に立つわけでもない。そんなことに納得した。

クリステンセン博士の名著も含め、それぞれの名著は、分野や角度が異なれど、示唆に富む内容ばかりであった。これらの名著のおかげで、フワッと、そしてぼやっと、その先の景色でもない景色が見えたような気がした(少なくとも、その当時は)。

もちろん、その後も多くの名著に影響をうけていくのだが、それは、その書籍を読み、考えながら日々を暮らし、様々なことにチャレンジし、失敗をする。そんなスパイラル的時間の経過を経て、今があるのだと思う。

たかが書籍、されど書籍。

これからも、そんな名著たちが待ち受けていると思うと、まだまだ人生ワクワクするおじさんなのである。

追記:(大事なことを忘れた)クリステンセン博士のご冥福をお祈りいたします。


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