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断片から聞こえる音色

ずっと聴いていなかった音楽を聴きたくなる瞬間。

音楽はそのときの気分を代弁する。
そのときの出来事を物語ってくれる。

ふと、聴きたくなった音楽。

それは、自分にとって贈り物のようなもの。昨日から、なぜか聴きたくなった音楽は、曲名も、アーティスト名も思い出せない。だから、その日はあきらめたけれど、次の日になっても、やはり、思い出すのだ。あ、聴きたいな、と。

手がかりは、長い英語のアーティスト名。英単語がいくつか合わさってできていたというおぼろげな記憶。検索機能は便利だが、自分が持ち合わせているワードだけでは、ネットで検索もできない。

もう少し、糸口となるものを探ってみると、日本語訳に「わたし」というものが使われていたことを思い出す。わたしを作り出す…そんな風な名前だったような。そして、そういう名前の一つも、好きだったような。

記憶は急速につながっていく。断片を一つ、見つけさえすれば、他のピースは次々に見つかり、アーティスト名だけでなく、聴いていた時の記憶や感情までも思い出せるのだから、すごいものだ。

そして、聴きたかった音楽を耳にした時、過去の自分が蒔いた種が、今、ここで花開いたんだと確かに思えたんだ。


君は君でいい ぼくはぼくでいる
足りないものより 輝くものを
埋めるものなど 何もいらない
ありのままでいよう


当時は、この音楽のあまりのきらめきに、心がハイになり、追いつけていなかったんだ。まばゆすぎて、その光を直視できなかった。ただそのきらめきだけは、自分の心に焼き付いていた。いつか、この音楽が似合うようになるのだろうか。そんな期待を、夢見て聴いた夜もあった。

何年越しかに聴いた曲。

あの時の自分に言いたい。
ようやく、この音楽のすべて受け入れられるようになったよ、と。

あの時、わけもわからず、「素敵だ!」と思った感情が、未来を描くエネルギーになっていることに間違いない。

今、どんな音楽を聴こう?

どんな未来を見たいだろう?

#エッセイ #音楽 #ショートストーリー

引用♪ the chef cooks me「ゴールデン・ターゲット」


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