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些細な幸せがかけがえのないものだと気づくとき

文庫本を片手に外へ出た。
さすがに手で持っていくのは、ちょっとな...と思って、ポケットに無理やり押し込む。

散歩についておすすめの時間帯を調べてみたところ、朝より夕方の方が、体の負担が少ないらしい。起床後すぐのウォーキングは血液がドロドロの状態で心臓に負荷がかかる...らしい?
今まで、出勤前に朝ランとかしてたけど、う〜む...。
食事前や食後すぐもよくないみたい。
逆に、夕方は1日の中で最も体温が高くなり筋肉がほぐれているので、体を動かすには適している時間帯なのだそうだ。

ということで、夕方、文庫本とスマホと鍵をポケットに入れ、のんびりと散歩に出かける。

家の近くには公園がいくつかあり、咲き始めた桜を眺めることができた。有名なソメイヨシノの他にも江戸桜、枝垂れ桜。
山桜もあったが、まだ。

散歩をしながら、さまざまな物思いに耽る。
昨年、年が明けてすぐくらいに、コロナウイルスが騒がれ始めた。4月に初めての緊急事態宣言が発令され、かなり切迫感を感じる時期だった。職場でも自宅待機を推奨され、かといって自宅で特段することもなく、毎朝、夫といっしょに散歩に出かけていた。

社会は不安や混沌の最中にあり、今もなお、それは継続中なのかもしれないが、その散歩の時間は平和だったなと思う。

お花屋さんにも行けないので、気に入った道端の花を摘み取りながら、たわいもないことを話して歩いた散歩道。どっちへ行こうか、その時の気分で決めながら。

混乱の最中にあり、その渦の中にのまれながら不安を感じながら生きることもできるし、抗ったり闘ったりしながら、もがくこともできる。
もちろん危機感は捨てたくはないが、今なお続く不安の渦の中にも、些細な幸せや、日常に埋もれているありがたさを感じられる心でありたい。

二人で摘んだ花を愛でる日も愛しい日々だったなぁ。

そうこうしながら歩いていたら、結局、ポケットに入れていた文庫本の出番はなく、夕暮れ時のひとときの散歩の時間は過ぎていった。
とても日和の良い午後だった。次は、ベンチに腰かけながら本も読もう。

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