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健常者と障害者のはざまで… 02



12年前のある日、私は1人で耳鼻科の前に立っていた…
おたふく風邪で発熱してから、2週間ほど、立ち上がるのも気持ちが悪いほどの激しいめまいが続き、熱とめまいが引いた後も、なんとなく耳鳴りがする気がしていた。
なんとなく、軽い気持ちで家から1番近い耳鼻科を1人で訪れた。
中学生になっていたし、両親も共働き、さらには家庭内別居中でそれどころではなく…1人で受診した。

一通り検査を終えると、お医者様から
『なんでもっと早く来なかったんだ!重大なことだから、ご両親とまた来てください。』と叱責され、
あれ??何か大変なことになってるぞ、と思った。
後日、母にお願いをして半休を取ってもらい、再度受診した。そこで言われたのは、
『左耳の聴力がもうありません。おたふく風邪のウイルスによるムンプス難聴という高度難聴でしょう。聴力が回復することはないし、補聴器もほとんど意味がないでしょう…。』と、診断された。
当時、診てもらったお医者様には、とても珍しく、実例を見たことがないが…と、言われた。
母は、その場で泣き崩れた。
私は理解するまでに時間が必要で、よく分かっていなかった。自分の耳が聞こえていないこと、これからも治らないことを理解するのには時間が必要だった。
母が最初に泣き崩れたので、泣けなかった、というのが正しいのかもしれない。

午前中に耳鼻科で結果を聞き、そのまま学校へ登校した。学校で友達に『私の左耳はもう聞こえてないらしい、これからも治らない。』と、打ち明け、その子の前で泣いた。
耳が聞こえなくなったことで泣いたのは、これが最初で最後だった。

おたふく風邪になる前、ワクチンを打とうという話が出ていたが、ちょうど妹が学校からおたふく風邪をもらってきたので、もれなく私にもうつった。
妹は1週間ほどで解熱、めまいもなし、難聴にもならなかった。
私は2週間ほど発熱が続き、激しいめまい、吐き気が続き、その後耳鳴りが聞こえるようになっていた…。
妹の前で耳のことを話すと、彼女に罪悪感を植え付けるのではないか?と思い、私は家でも気丈に振る舞った。

おたふく風邪によるムンプス難聴は特効薬がなく、聴力が残るかもしれないという少ない望みにかけてステロイドを投与することがある。
しかし、ほとんど効き目がない。
当時、二週間も発熱が続く私をおかしいと思った母は、大きな総合病院に私を連れていき、色々検査した。
髄膜炎などが疑われて、検査をしたが、ムンプス難聴は見落とされ、後に1人で受診した耳鼻科で発覚する。

こうして、私の左耳は聾になった。

おたふく風邪になって、ムンプス難聴になるかどうかはほとんど運だと私は思っている。
難聴にならないためにも、保育園、学校などの集団生活をする前にワクチンでおたふく風邪を予防しておくことがとても重要だ。
これを読んでいる、お子さんをお持ちの方はワクチンを接種することも考えてほしい。

次のお話は補聴器のお話を…

Aoi

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