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2018年7月の記事一覧
あのひとの家はもうなかった。
歌集には入れなかった二年前の一聯の歌を少し推敲した。
あのひとの家はもうなかった。
ぼんやりと揺れながら庭は覆われて手足も胸も木陰でなくす
洗濯の白いシーツの隙間から逃げるあなたの背中が見えた
きっとの「っ」ぜったいの「っ」の幅跳びもあなたの距離に届かなかった
地図を持たず手のひらになつかしく降るあのひとの家はもうなかった
缶コーヒーの温みくらいの瞬きが海峡にまでゆらゆら至る
クローバーのみん
「陸離たる空」を読む
水甕同人の木ノ下葉子さんが第一歌集「陸離たる空」を出版した。若い頃から精神的な病を抱えながらも、事象を捉える感性は鋼鉄の刃物のように鋭く、しかしある時は紙のように砂のように脆く崩壊してしまう。
一気に読んだが、理解できない歌もあった。彼女だけの想念があるのだろう。感性を覆う表皮が剥がれて剥き出しのまま外界に晒されていて、詠うことによって自身の感性に薄い膜をつくっている、がしかし、その膜は部分部分が
ネクローシス(necrosis)
静岡県歌人協会年刊歌集(第三十集)の8首をほぼ推敲した。未来800号記念原稿の10首をベースに、多少手直しをして8首とした。
タイトルは、当初「アポトーシス」としたが、「ネクローシス」に変更した。私の詩歌は、アポトーシスのようなプログラムされたものではなく、ネクローシスのような身体の一部の自己融解だと思っている。
ただし、生物体の壊死とは異なり、想念の壊死は完全には修復されず、むしろその傷は生々し