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恭賀新年

遅ればせながら、今年もよろしくお願いします。

コロナ禍で先行きが不透明ななか、去年観た映画で知った五代友厚のことを追悼三浦春馬氏に絡ませて、少し書こうと思いました。

「天外者」というのは、鹿児島弁で「すごい才能の持ち主」という意味だそうです。主演の三浦春馬さんの自死が話題になり、映画ではどうしても彼と五代友厚がかぶってしまいました。↑の田中監督のインタビュー記事を読んでも、彼の人柄がわかるというか、三浦春馬氏は繊細な気遣いの人だったようで、本当に日本映画界の喪失は大きい俳優でした。長身で立ち回りも上手く、何より、くしゃっとした笑顔が素敵でした。

 映画の最初の方のシーンででてくるのですが、父親が藩主から世界地図の作成を求められ、それを手伝って、友厚が地球儀を作るシーンがありました。まだ鎖国状態のなか、ポルトガルから手に入れた地図。薩摩藩主島津斉彬の先見で、薩摩藩は早くからヨーロッパに関心を抱いていました。以前、「わたしの本棚73夜」でも取り上げた藩の軍医・髙木兼寛も明治初期、イギリスへ医学留学させてもらっていますし、五代友厚も留学します。

   彼の1836年から1885年という49年の人生は、怒涛のごとくです。映画では、若き坂本竜馬(三浦翔平)、伊藤博文(森永悠希)、岩崎弥太郎 (西川貴教)との交流を中心とした青春群衆劇の形をとっています。本当にあったかどうか疑問ですが、坂本竜馬と海の上でこの国の未来を語るシーンは圧巻で、若者の熱い息吹が感じられ、大きな夢を描いて、素晴らしかったです。

 維新後は、大阪の経済の発達に尽くすのですが、何より頼もしいと思ったのは、外国の不平等条約、商売上の約束を受けつけなかったことだと思います。英語が堪能で、通訳なしで商談をしていたほどだったそうですが、外国の圧力に屈せず、鉄道の利権や通信の規制の不平等な条約を受けつけなかった強い姿勢は、後の日本の発達にもつながります。銀山事件、北海道開拓払い下げ問題など困難や悪評にあいながらも、「誰もが夢みる国へ」と大阪商工会議所を設立するラストへのシーンは、三浦春馬氏の熱演もあって、情熱が伝わります。

「明るみになる事が清いのか、明るみにならない事が清いのか…どの業界、職種でも、叩くだけ叩き、本人達の気力を奪っていく。(中略)国力を高めるために、少しだけ戒める為に憤りだけじゃなく、立ち直る言葉を国民全員で紡ぎ出せないのか…」三浦春馬氏のツイッターの文章で、当初、東出氏の不倫問題に関するものではないかと憶測されましたが、映画を観ると、友厚の演説シーンと重なります。映画のなかで、経済界の方々に「俺についてこい」と泣きながら訴えるシーンがあるのですが、コロナ禍の今こそ、彼のような指導者が、真の情熱ある言葉を発してくれる人が、日本に必要なのではないでしょうか、と思ってしまいました。

 商才に長ける一方で、熱い志を持ちつづけた五代友厚氏。決して裕福でない中で育ち、友人に恵まれまなら、「誰もが夢を見れる国へ」というこの国のためへの情熱。コロナ禍で先行き不透明の2011年。皆様にとって、素敵な一年になりますように。読んでいただき、ありがとうございました。

#note書き初め

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