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悪魔の瞳を持つ女

 ロシアンフックを放つ相手の右肘が伸び、拳の裏側が眼前に迫る。タックルを警戒していた私のガードは間に合わない。グローブが私の左半視界を覆い、瞬間、鈍痛。いつもこの筋書きは変わらない。
 今の私は試合にも出られず、人生の不戦敗真っ最中。あの試合をフラッシュバックしたのは、突然持ち込まれた少女からの相談のせいだ。

「アンヘラ選手に試合に出てほしいんです」
「ありがたいけどさ。私」
「失明ですよね」

 あの鈍痛は私の左の視力と人生を殺した。今やどのイベンターも、失明した私にサスペンドをかける。戦えるのに。

「私には倒してほしい相手が。貴方は戦いたい。そこで、私の目を貰ってください」
「馬鹿な」
「角膜以外の眼球移植は非合法です。知ってます」

 悪魔のような誘いだった。

「アンヘラさん。私と2人で。同じ瞳で。未来と希望を探しませんか」
「……アンタ、名前は」

 少女は無邪気に微笑み、名乗った。

「カトブレパス、って呼ばれてます」

【続く】

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