ミート・ザ・ニート

 彼女と会うのは4度目だが、緊張して目を伏せる彼女とは一度も目が合ったことがない。

 僕の仕事は、彼女のようなニートの就職支援。コーセーロードーショーと言う名前の立派なお役所様から引き受けている。
 政治の話かお役所のルールか、この世界にも数字と成果指標の波がやってきた。「最低○○人を就職させること。○○人が就職して○○円」と言うノルマと圧力は、僕を含めた全国の相談員に降り注ぐ。

 その結果、どうなったか。

 「就職しやすい人を就職させる」と言う、当たり前の方法をとらざるを得なくなった。
 ニートと一言で言っても、少しのきっかけで変われる人間から、引きこもり一歩手前の人間まで様々だ。仕事の本質としては、後者を救うべき仕事であるはずだ。しかし得点の概念が導入されたことで、効率の良さ、即ち就職しやすさをお役所が求めるようになったのだ。

 その点で、彼女は安心だ。職場見学した先から、すぐに来てほしいと言われているからだ。

【続く】

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