金峰山（奥秩父） △登山の魅力△（0023）
山頂に鎮座する、岩塊を積み重ねたような巨岩”五丈石“の威容が圧巻！ 奥秩父の盟主ともされる代表的な山岳です。
（本記事/ 文字数：約5900字、読了：約12分）
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Mt.Kinpu_Goj%C5%8Diwa_2.jpg
Attribution: Captain76, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
＜金峰山の魅力＞
（１）ご神体である磐座・五丈石（五丈岩とも表記）
金峰山の象徴である奇岩巨石のその威容はほかではなかなか見られないのではないでしょうか。関東周辺ですと鳳凰三山・地蔵岳のオベリスクと双璧をなすといえるかもしれません。
（２）山頂からの眺望
ほぼ360度、東西南北が見渡せますので、富士山はもとより、南・北・中央アルプスや上信越の山々も天候次第で望めます。山頂域は広場のように大きなスペースがあるので、登山者が多くても余裕が十分にあり過ごしやすいです。コーヒーでも淹れながらゆっくりと絶景を楽しむことができるのではないでしょうか。もちろん帰りの交通の時間は気にしなければなりませんが。
＜概要＞
金峰山
（山梨県側では「きんぷさん」、長野県側では「きんぽうさん」）
所在地： 山梨県甲府市、長野県南佐久郡川上村
奥秩父連峰の盟主や主峰ともされる（ただし最高峰ではない）。標高は約2599ｍ。
西側の瑞牆山と東側の甲武信ヶ岳の間に位置する。
日本百名山、花の百名山（シャクナゲ）
＜登山コース＞
※標準的タイムによる目安（休憩含まず）。
（１）廻目平コース
北麓の廻目平を起点・終点にしたピストンコース。金峰山小屋で宿泊する、ゆったり1泊2日の行程。
「川端下」バス停→ 廻目平キャンプ場への分岐（45分）→ キャンプ場（30分）→ 砂防提（90分）→ 金峰山小屋（120分）※宿泊→ 金峰山・山頂（20分）→ 金峰山小屋（15分）→ 砂防提（80分）→ 廻目平キャンプ場（60分）→ キャンプ場分岐（30分）→ 「川端下」バス停（40分）
コースタイム/ 1日目：約5時間、2日目：約4時間
標高差/ 約1200ｍ
（２）大弛峠コース
東側の大弛峠を起点・終点にしたピストンコース。東京からも日帰り可能なお手軽コース。
大弛峠→ 朝日峠（30分）→ 朝日岳（30分）→ 金峰山・山頂（90分）→ 朝日岳（60分）→ 朝日峠（30分）→ 大弛峠（30分）
コースタイム/ 約4時間
標高差/ 約200ｍ強
［登山道の特徴］
川端下バス停から廻目平キャンプ場までは高原野菜の畑と牧場の間を抜けていきます。
廻目平キャンプ場から金峰山小屋までの道はほぼ樹林帯です。シャクナゲが多くあります。
大弛峠と金峰山の間にはガレ場や大きな岩が積み重なったような足場の悪いところもあります。
五丈石は山頂ではありません。
山頂域は強風が吹くこともままあります。吹き曝しですので山小屋に荷物をデポして空身で登る場合は風除けにレインウェアなどのアウターがあった方が安心です。
夏場は思いのほか暑いです。2500ｍ超の高山ですが、奥秩父の地理的特性のためでしょうか。山小屋以外での水の入手は難しいため水を多めに持って行った方がいいかもしれません。
●水場やトイレなど
トイレは山小屋以外にありません。
大弛小屋（大弛峠）に水場はあります。廻目平コース上にも水場がありますが、濁ったり細くなったりすることもあるようですので期待しない方がいいと思われます。
《補足》
五丈石はご神体であるため登攀することはNGとされています。
［難易度・危険個所など］
とくに大きな難所や危険個所はあまりありません。
●山のグレーディング
［廻目平コース］ 体力度「３」、難易度「Ｂ」
［大弛峠コース］ 体力度「２」、難易度「Ａ」
体力度：１→１０（低→高）、難易度：A→E（低→高）
［アクセス］
●登山口：廻目平
JR小海線「信濃川上」駅から路線バス（川上村営バス）で終点「川端下」バス停まで約40分。
●登山口：大弛峠
JR中央本線「塩山」駅からバス（栄和交通）で「柳平」にて乗合タクシーに乗り換えて「大弛峠」にて下車。所要時間は約90分。
※大弛峠へのバスと乗合タクシー利用には事前予約が必要です。
※塩山駅から通常のタクシーのみの場合の所要時間は一般的に90分程度。
《補足》
塩山駅から大弛峠までの予約等については栄和交通に予めご確認ください。
リンク先： 栄和交通 ※公式サイト
《参考》
JR中央本線「新宿」駅から特急かいじで「塩山」駅まで80分程度（特急あずさも一部の便が「塩山」駅に停車します）。
同じく「小淵沢」駅までは約150分。JR小海線「信濃川上」駅へは「小淵沢」駅で乗り換えて約45分。
小海線の運行本数は非常に少ないですので事前によくご確認ください。
JR「東京」駅から北陸新幹線で「佐久平」駅まで約90分。「佐久平」駅からJR小海線に乗り換えて「信濃川上」駅まで約90分。
※いずれも乗り換え時間や待ち合わせ時間は考慮していません。
［国土地理院地図］
［コースマップ］
山梨県がコースマップを提供しています（大弛峠～金峰山）。
山梨百名山ピッチマップ （山梨県）
北杜市がコースマップを提供しています（廻目平～金峰山）。
登山マップ（ピッチマップ） （北杜市）
＜こんな方にオススメ＞
（１）奇岩巨石が好き
（２）山頂から絶景を眺めることができる山に登りたい
（３）日本百名山の踏破を目指している
＜補足情報＞
［売店等］
金峰山荘（廻目平キャンプ場）には売店があります。
大弛小屋（大弛峠）では売店・喫茶があります。
［日帰り温泉など］
はやぶさ温泉 ※公式サイト 塩山駅からバス若しくはタクシー利用
塩山温泉「宏池荘」 ※公式サイト 塩山駅
ヘルシーパークかわかみ （川上村） 「ヘルシーパーク入口」バス停
佐久平プラザ21 ※公式サイト 佐久平駅
［お食事処］
「完熟屋」 ※公式サイト ほうとう等/塩山駅
信濃川上駅周辺にはいくつか飲食店があります。
「ヘルシーパークかわかみ」では軽食・喫茶の提供をしています。
大弛小屋、富士見平小屋では軽食の提供をしています。
［山小屋などの宿泊施設］
金峰山小屋 ※公式サイト
岩根山荘 ※公式サイト 廻目平 風呂あり
金峰山荘（廻目平キャンプ場） 風呂あり
大弛小屋 ※公式サイト 大弛峠
富士見平小屋 ※公式サイト 瑞牆山方面
［付近の山］
甲武信ヶ岳
瑞牆山
小川山・廻目平
昇仙峡
西沢渓谷
乾徳山
雁坂峠
［名産品］
桃
ブドウ
高原野菜（おもにレタス）
［そのほかの補足］
「信濃川上」駅と「川端下」バス停の間に川上村農産物等直売所「森の駅 マルシェかわかみ」があります。川上村役場そば（バス停「役場前」）。
●金櫻神社（かなざくらじんじゃ）
昇仙峡の奥にある由緒ある神社。かつてはこちら（南側）からの金峰山への登拝ルートが正規の信仰の道であったそうで、現在、有志により復興が進められています。
●廻目平
廻目平キャンプ場周辺はロッククライミングの一大拠点としてたいへん有名であり人気があります。日本のヨセミテと呼ばれることもあります。
［お天気情報］
金峰山 （tenki.jp）
＜私なりの楽しみ方＞
金峰山といえば「五丈石」というほど山頂に独特な奇観があり、また日本百名山の一座ということもあり関東近郊の登山者たちには人気の山だと思います。五丈石の圧倒的な存在感には、それを写真で知っていたとしても、想像以上に心躍らされるのではないでしょうか。山頂からの眺望も合わせて、達成感や充実感にかなり満足できるかと思います。
金峰山の山頂は、昇仙峡そばの金櫻神社の本宮にあたり、ここはかつて修験道の拠点として信仰に訪れる人で栄えていたそうです。積み木のように重ねられた巨岩の姿を見て、昔の人々が神秘を感じたのもさもありなんと納得できます。繰り返しになりますが五丈石はご神体のため登攀はNGです。
長野県側（北側）の山頂直下にある山小屋”金峰山小屋”は個人的にはお気に入りの山小屋の一つです。大きな小屋ではありませんが、こざっぱりとしていて居心地の良い雰囲気です。なによりもお食事が美味しいところが私にとっては最大のポイントです。メニューは日によって替わることもあると思いますが、夕食のメインディッシュはチキンソテーが定番です。グラスワインももれなく付いてきます（私は呑めないので別の方に差し上げますが）。そして物足りなければ、追いカレーのサービスもあります。
朝食はお粥です。 やさしい味わいで漬物や佃煮のような総菜が数種類用意されているので、何度もお代わりをしたくなってしまいます。お粥は大鍋で提供されて各自で好きなように盛りますが、お米が底に貯まっており上の方は汁の上澄みのようになっているので、お米をたっぷりと取りたければ丁寧に底から引き上げた方がいいかと思われます。宿泊者にはコーヒーや紅茶などのウェエルカムドリンクが提供されているところも嬉しいかぎりです。
金峰山小屋の個人的な思い出としてはやはり看板犬”ゆずひこ”君の存在が挙げられます。黒のラブラドルレトリバーです。彼に会うために金峰山と金峰山小屋を訪れた方も多くいたようです。とてもおとなしい犬で自分から登山者にちょっかいを出したり吠えるようなこともありませんでした。私がお触りしようとすると、何度もスルッと逃げられてしまいました（みんなに触られまくって嫌になったのか…私のことが気に入らなかったのか…）。聞いた話ではお亡くなりになったそうで、とても残念です（未確認情報）。
以前、西沢渓谷から入って、甲武信ヶ岳、金峰山そして瑞牆山へと東西に縦走したことがあります。甲武信ヶ岳から金峰山までの間が「長い…」。「えっ！ やっと、中間地点の国師ヶ岳かよっ」と肩を落としたことがあります。何度も登降を繰り返させられますし、倒木も多くて少々、道が荒れているところもありました（台風の後だった）。大弛小屋に辿り着いて飲んだコーヒーには心から癒やされました。縦走される方は余裕を持って計画されることをお勧めいたします。
塩山駅からの交通アクセスがありますので、東京からであれば日帰りでもアクセスできる2500ｍ超の山であり、しかも往復5時間程度で高低差も比較的小さいので、初心者であっても高山で展望にもいい山へ行ってみたいなら、ベターな選択肢だと思われます。
金峰山はまた、瑞牆山が近いですので、金峰山小屋に一泊して翌日、瑞牆山の方へ縦走する時間的余裕も十分あると思います。瑞牆山へ行けば、瑞牆山荘まで下りて韮崎駅行きの路線バスに乗車できますので、帰路も便利です。
一度に百名山を２つ制覇できるのでお得です。
＜備考＞
山梨県・山岳情報 （山梨県警察）
長野県・山岳情報 （長野県警察）
佐久警察署 ※公式サイト
甲府警察署 ※公式サイト
信州 山のグレーディング （長野県）
山梨 山のグレーディング （山梨県）
シャクナゲ （みんなの趣味の園芸/NHK出版）
●金櫻神社（かなざくらじんじゃ） ※公式サイト
●廻目平
参考サイト： クライミング天国”小川山” （川上村）
●森の駅 マルシェかわかみ ※公式サイト
＜参考リンク＞
観光情報・見どころ （川上村）
登山・ハイキング （川上村） ※パンフレットあり
「金峰山」 （山梨市観光協会） ※パンフレットあり
「金峰山」 （北杜市）
川上村営バス （川上村）
栄和交通 ※公式サイト
山と高原地図「28．金峰山・甲武信」 （昭文社）
秩父多摩甲斐国立公園 （環境省）
＜関連記事＞
金峰山周辺の登山に関する上町嵩広の関連記事です。一部、外部サイトの記事もあります。
＜バックナンバー＞
バックナンバーはnote内マガジン「山の紹介」にまとめております。
［奥多摩］
0004/三頭山 0009/御前山 0010/雲取山 0020/浅間嶺と浅間尾根
0028/御岳山
［丹沢・箱根］
0005/大山 0030/塔ノ岳 0035/金時山
［秩父・奥武蔵］
0023/金峰山 0026/棒ノ折山 0032/大菩薩嶺 0040/乾徳山
［八ヶ岳］
0001/編笠山 0007/飯盛山 0014/天狗岳 0017/北八ヶ岳周遊（冬） 0041/霧ヶ峰
［北アルプス］
0012/燕岳～常念岳 0024/涸沢カール 0033/立山
［南アルプス］
0011/北岳
［関東そのほか］
0006/赤城山 0008/大楠山 0018/一ノ倉沢（冬） 0021/男体山（日光） 0025/那須岳 0031/鳴虫山 0034/戦場ヶ原 0036/奥高尾縦走路
［東海］
0016/城ヶ崎海岸 0019/幕山 0027/沼津アルプス
［山梨県そのほか］
0022/三つ峠
［長野県そのほか］
0029/黒斑山
［その他の地域］
0002/雨飾山 0003/宮之浦岳 0012/大杉谷～大台ヶ原 0015/苗場山 0037/筑波山
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（6） 不定期更新です。 毎月一度を目安に更新を予定しております。
（7） カバー写真と、今回ご紹介した山とは、関係はありません。
（8） 情報は掲載日時点の内容です。
（9） 登山道等の状況については、適宜、現地の観光協会、ビジターセンターや山小屋などの各関係機関にあらかじめご確認くださいますようお願いいたします。
(10) 自治体により登山届や各種装備の義務化などの条件がありますのでご留意ください。詳細は各自治体や警察等にご確認くださいますようお願いいたします。
(11) 今般の新型感染症の影響で各種施設等の利用については制限などが行われている可能性があります。ご利用の際には詳細について事前に各種施設等へご確認などをお願いいたします。
（2022/06/15 上町嵩広 改訂：2024/06/10）