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【詩】恥じてなお

眼があって


私をじっと、凝視している


瞳孔に映る私は


ピントのボケた虫の羽みたいに


フラりフラりと


どこにも目的が定まらないまま


フラりフラりと


死んでゆく蝶のように


中身のなさを露呈している。


果たして、この、眼は、


それを見つけようとして


あるいは


凝視される。という目的を与えようとして


私に視線を与えているのか。


もはや意味をなさない靴底で地面をひたりと感じながら


その眼を見つめ返している。


短い終わりは、長い始まりよりも、


ずっと潔くて好きだけれど


重たさ



どうしても思い出させるあの影が


私の喪失と


私の会得と


対立するようで、実はしていなかったあの思想たちと


捻れたまま乾いてしまった雑巾と


溢れかえった涙の滝と


許せなかった明日の傷を


盲目的に信じても。


良かったのかもしれない。


恥じてなお、眼が映す私は


やはりピントがボケたまま


見つめ返すのをやめた私をまだじっと


じっと


ぎりぎりと


凝視している。


そろそろ解放してくれないか。


そろそろ終わらせてくれないか。


もう死んでしまいそうだから。


傍らにあった、枯れている何かの植物に、水をやって


もう意味深な言葉は使わないよ。


単刀直入に生きていくよ、


遺言みたいに放棄して


離れた。

                                                                                 /とわさき芽ぐみ 2022.2.16

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