事業創出の原理原則7 自社分析-SWOT分析

2007年のアメリカ・マーケティング協会(AMA)が示した「マーケティング」の定義は、「マーケティングとは、消費者、顧客、パートナー、および社会全体にとって価値のある提供物を創造、伝達、流通、交換するための活動、一連の精度、およびプロセスをいう。」です。マーケティングとは、企業活動全般を支える活動です。マーケティングの本で必ず出てくる名前は、米国の経済学者のマイケル・ポーター1947年~ )とフィリップ・コトラー1931年~)です。二人ともあまりにも名声が高いので、てっきり故人だと思っていましたが、まだバリバリの現役でした。大変失礼いたしました。私は、事業を考える時には、主に、コトラーを参考にしていました。
コトラーのマーケティングの最も基本的のメソッドは以下の流れになります。①内部環境と外部環境の分析し、市場の機会を見つける。(SWOT分析)。②顧客を同質のニーズを持っているグループ(市場)に分ける。(STP分析)。③分けたグループ(市場)の中で、どこの市場を狙うかを決める。(STP分析)。④狙う市場の中での、自社の立ち位置(提供価値)を明確にする(STP分析)。⑤マーケティングミックスで戦略を立案する。(4P4C分析)。⑥マーケティング戦略を実行、評価する。になります。
 
・SWOT分析 : 私の主観ですが、マーケティングのフレームワークで、最も使い勝手の良くて分かりやすのが「SWOT分析」です。1枚のシートに、「強みと弱み」と「機会と脅威」を記入しますので、その企業の市場環境全体が把握でます。自社分析にも競合分析にも顧客分析にも使えます。「SWOT分析」は四マスのマトリックス図で、①左上に「強み(Strength)」を書きます。「強み」とは、組織の競争力や利益の源泉(経営資源)となる要素を指します。長所です。②右上に「弱み(Weakness)」を書きます。「弱み」は明らかに業界や競合と比較して立ち遅れているものを指します。弱点です。③左下の枠に、「機会(Opportunity)」を書きます。「機会」とは、自社のビジネスチャンスを拡大してくれる環境変化や、自社の強みとなる能力が活かせる環境変化を指します。追い風でありチャンスです。④左下に「脅威(Threat)」を書きます。「脅威」とは、自社の市場やビジネスが縮小する環境変化や、自社の強みとなる能力が機能しなくなる可能性のある環境変化を指す。向かい風でありリスクです。「強みと弱み」が内部環境になり、自責になります。「機会と脅威」は外部環境であり、他責になります。①「強み」は、目標達成に貢献する組織(個人)の特質であり、どのように強みを活かすか?を考えます。②「弱み」は、目標達成の障害となる組織(個人)の特質であり、どのように弱みを克服するか?を考えます。③「機会は」は、目標達成に貢献する外部の特質であり、どのように機会を利用するか?を考えます。④「脅威」は、目標達成の障害となる外部の特質であり、どのように脅威を取り除く、または脅威から身を守るか?を考えます。
 研修では、自社の「SWOT分析」を作ってもらいますが、自社のことではありますが、あまりそのような分類で考えた経験がないせいか、意外と苦労して書いています。例えば、私の「プロジェクトマネジメント研修」の今時点での「SWOT分析」の、①「強み」は、「新規事業の計画・管理の経験がある。コンサルタントと講師経験が豊富。PMの資格を持っていてPMIの会員である。実務型の研修プログラム」になります。②「弱み」は、「会社の事業規模が小さくてリソースがない。営業活動に時間をさけない。知名度がない。」になります。③「機会」は、「国内企業の新規事業が活発化している。日本企業の海外市場への進出によりプロジェクトが増えている。計画作成の知識が不足している。」になります。④「脅威」は、「大手研修会社との競争が激化してきている。リモート対応など市場ニーズが変化している。景気の動向による費用削減をしている企業が増えてきている。」になります。「SWOT分析」の内容は、市場環境や技術環境などの変化により、常に変化します。例えば「コロナ」の前後では、旅行業や航空業界や宿泊業などの「SWOT分析」は、全く違うものになるはずです。「SWOT分析」は、一度作成すれば終わりでなく、常に環境変化に応じて、定期的に見直す必要があります。是非、作られた経験のない方は、書き方は簡単ですので、自分の、自部門の、自社の「SWOT分析」を作ってみてください。自分の市場環境が整理できます。
 
「クロスSWOT分析」: 私は「SWOTクロス分析」と教わりましたが、ネットで見ると最近は「クロスSWOT分析」の方が主流のようです。SWOT分析で洗い出した「強みと弱み」「機会と脅威」をそれぞれ掛け合わせることで、マーケティング戦略を明確にするときに使用します。フレームワークは、上段の横枠に左から「強みと弱み」。左外の縦枠に「機会と驚異」を書きます。SWOT分析から、クロスSWOT分析を活用することで有効なマーケティング戦略の立案につなげます。戦略はクロスした領域の4つに戦略に分類されます。①(強み × 機会)の戦略は、「積極的攻勢」になります。事業機会を自社の強みとして取り込むには何が必要かを考えます。②(弱み × 機会)の戦略は、「段階的施策」になります。事業機会を自社の弱みで取りこぼさないためには何が必要かを考えます。③(強み × 脅威)の戦略は、「差別化戦略」になります。業界には脅威でも自社の強みとして、機会に変えるためには何が必要かを考えます。④(弱み × 脅威)の戦略は、「専守防衛」になります。脅威と弱みの鉢合わせによる最悪の事態を招かないために何が必要かを考えます。
 私の、「クロスSWOT分析」での、①「積極的攻勢」は、「DMによる認知度拡大と興味喚起。コンサルティングとの融合。」になります。②「段階的施策」は「問題解決」とも表現されます。「提携研修会社の拡大と紹介の積極的な活用。リモート研修への対応」になります。③「差別化戦略」は、「専門分野に特化する。顧客への個別対応」になります。④「専守防衛」は、「過去の取引先へのメールなどによる継続的なフォロー。差別化ができない研修内容から撤退」になります。④の「専守防衛」は、企業のポートフォリオ別の分類では「撤退」した方が良い領域です。顧客との打ち合わせて、明らかに「将来性も収益性もない事業を続けているケースがあります。理由を聞いてみると「従業員や役員がいるから、施設と設備があるから。創業時からの事業だから」などの理由が上がります。他に「責任を取りたくない気持ち。」もあると思います。限られた企業のリソースの有効活用を考えたときには、その事業から撤退して、成長分野にリソースを振り向けたほうが間違いなくいいはずです。
マイケル・ポーターの競争戦略では、3つの基本戦略がりあります。①コストリーダーシップ戦略。②差別化戦略。③集中戦略です。「クロスSWOT分析」の戦略では、③の集中戦略は(強み × 機会)の時に、その領域にリソースを集中する戦略です。②の差別化戦略は、(強み × 脅威)の時に、強みを生かす方法を考える戦略です。①コストリーダーシップ戦略は、(弱み × 機会)の時に、弱みを価格でカバーしようとする戦略です。④(弱み × 脅威)の時の戦略はありませんが、傷が浅いうちに「撤退」することが、一番の戦略です。
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?