見出し画像

【OAK】アスレチックスは良くなってきている

もはや弱いことでお馴染みのオークランド・アスレチックスだが、最近好調である。

3,4月と5月はともに6勝23敗というびっくりスタッツで終え、ファンとしても泡を吹くほかなかったが、6月は7連勝にも助けられて7勝9敗。

内容を見ていても、死ぬほど弱いチームから普通の弱いチームぐらいにはなっており、未来に対して希望を抱かせる良い野球をしていると言わざるを得ない。

4月は途方もない投壊とルーカーの爆発の月。
5月は多少打線は湿ってきたものの、ルイズとノダの1,2番コンビの健闘と、そしてシアーズの台頭もあって投手陣が改善されてきた。

では6月はと言うと、ブラックバーンの復帰、ツギハギだらけのブルペンの改善など、投手陣が完全に底を脱したのに対し、打線が停滞を始めた月となりそうである。

今回はそこにフォーカスを当ててみる。


*ヘッダーはBVMスポーツより

ポール・ブラックバーン・エフェクト

好調への転換には分かりやすいタイミングがあった。エース格ポール・ブラックバーンの復帰である。

昨年はオールスターに選出され、今季は開幕投手も期待されたブラックバーンだったが、中指の故障で出遅れ。

5/29のATL戦から復帰すると、4先発20.2イニングでERA3.48という抜群の安定感を発揮している。

チームもブラックバーンの復帰からエンジンがかかってきた。
パイレーツ、ブルワーズ、レイズ相手に7連勝を記録し、その後の連敗で数字こそ落としたものの、ブラックバーン復帰後は9勝10敗と見違える戦いを見せているのだ。

この好調の要因は、ブラックバーンの復帰にも支えられた投手陣の復調だろう。

こうして見ると、差は歴然だ。
ダントツの差を付けられて30位だった頃を考えれば、リーグ上位に食い込めていることは到底信じられない。


ブラックバーンが加わったローテーションも、19登板で53.1イニングを消化し、ERA3.96と試合を作り続けている。

奪三振・与四球の数値は芳しくないが、HR/9が0.79・HR/FB%はわずか7.2%(ともにその期間でリーグ5位と2位)と被本塁打を許さない。それ以前はHR/9が2.05のペースで被弾していたことを思うと、試合を壊さないようになったのは大きい。

奪三振こそ少ないが、HRを打たれずに試合を作るというのは、まさしく典型的なアスレチックスの投手の真骨頂であり、ブラックバーンのスタイルに他ならない。


個々のパフォーマンスに目を向けると、やはりJP シアーズのパフォーマンスが光る。5月からはERA3.22と、完全に一皮むけた投手に進化した。
今季から低めのリリースポイントから4シームを高めに集め、縦スラから改造したスイーパーとチェンジアップでピッチトンネルを形成するスタイルに変更し、それが見事にハマっている。

そして、恵まれた球質を活かして豪快に攻めるホーガン・ハリスとルイス・メディーナもなんとかハマってきた。2人とも評価の高かったプロスペクトではなく、コマンドには問題を抱えるが、レパートリーは大いに通用している。


そして、ローテーションが試合を作ることができれば、まともになったブルペンが試合を終わらせられるようになった。

故障と不振の多発によって、今や開幕ブルペンに名を連ねた投手はサム・モールのみとなった。
今やブルペンを支えているのは、開幕時にロスターにいなかったどころか、球団組織にもいなかった投手たちである。

オースティン・プルイット、リチャード・ラブレディ、サム・ロングといった投手たちの貢献も素晴らしいが、中でもルーカス・アーセグのパフォーマンスは際立つ。

ブルワーズのAAAから金銭トレードで加入したアーセグは、平均97mph超の速球を武器に支配的な投球を展開し、いちやく勝ちパターンに定着した。

アーセグはもともと野手のプロスペクトだったが、アルコール依存症に苦しんで投手転向する紆余曲折のキャリアを送っていた苦労人。
今年はAAAでのパフォーマンスも奮わず、トレードを通達される際にはAAへの降格かリリースの通達かと思っていたそう。
しかし、結果的には地元ベイエリアのチームでデビューする機会を得、見事にその機会をモノにしてみせている。


限られた予算の都合上、ブルペンにはそこまでの補強を施せず、開幕2ヶ月は崩壊どころの騒ぎではなかった。しかし、メンバーの積極的な入れ替えを図り、なんとかここまでブルペンを再建できたのは僥倖だったと言える。

今後のブルペンの伸びしろは、トレバー・メイと藤浪晋太郎にありそうだ。

オフ唯一の補強だったメイはメンタルヘルスの問題でIL入りを果たすなど、ここまでは想定には程遠いパフォーマンス。しかし、ILから復帰後は徐々に本来のパフォーマンスを取り戻しつつある。

先発としては失格となり、ブルペンに転向した藤浪晋太郎もそろそろ正念場だろう。
ブルペン降格後は連投も辞さないタフさ、ハマった時の支配力は首脳陣からの信頼も厚い部分だが、流石に不安定な部分が目についていた。

しかし、最近は速球の質が向上。
安定して100mphを叩き出せる上、問題視されていたホップ量も伴うようになってきており、ハマったときの支配力はさらに上がっている。
パフォーマンスが安定してくればトップリリーバーにもなれるのは明白なため、今後の藤浪には期待がかかる。


余談
ブラックバーンは登板日以外も影響力を発揮。若手へのアドバイスを惜しまない投手陣のリーダーとの証言もある。長らくAAAAレベルの選手だったブラックバーンがこうなるのだから、アスレチックスはおもしろい。

見せかけのタイムリー欠乏症。実際にはホームラン欠乏症

実はこの記事を書き始めた当初は、連勝連勝だったので、盲目的に褒めることもできた。
しかし、7連勝を喫したあとは6連敗と、すかさずリバウンドしてしまった。

とはいえど、4,5月のような絶望的な内容での負けではなく、チームとして1段階上に上がったことを示すような産みの苦しみ的な、実りも感じられる負けが続けている。

その中で課題となっているのが得点圏で打てないということだ。

確かに連敗中は得点圏打率.115とタイムリー欠乏症に苦しんでおり、なかなかホームが多い。
この課題はコッツェイ監督もたびたびコメントしている。

いや、だがしかし、冷静になろう。

ここで我々のバイブルを引き直してみる。神は言った。「得点圏で打てるかなんてただの運」だと。

けだし至言である。


実際のところ本当に問題なのは、連勝していた期間を含む5/29以降でも、リーグワーストの12HRしか打てていないホームラン欠乏症だろう。

ホームランを打てる打者が打席に立ったその瞬間から、シチュエーションは得点圏となる。


ホームラン欠乏症の原因は、長距離打者たちの不振にある。

特にベテランのセス・ブラウンとラモン・ローレアーノはなかなか温まってこない。

外野手はJJ ブレデイがあまる状況で、年俸の高騰が迫る2人のどちらかでもトレードの弾にしておきたいため、どちらも不振というのは今後の方針にとってもマイナスに響く。

また、ブレント・ルーカー、ライアン・ノダ、シェイ・ランガリアーズら、長打力のある若手のパフォーマンスもここのところ停滞気味だ。


ただ、正直なところホームラン欠乏症は解決しづらい。これらの打者の復調を待つばかりだ。

AAAで15HRを放っているタイラー・ソダーストロムの昇格は時期尚早に過ぎるし、なんとか今いる選手が盛り返してくれるのを願う他ない。


ショートどうする問題

目下、アスレチックスの将来で最も不透明で、現状最大の穴はショートである。

開幕はアレドミス・ディアスとニック・アレンのプラトーンから始まり、その後ケビン・スミスのメイン起用、ニック・アレンのメイン起用、そして再びケビン・スミスを挟み、結局のところはアレドミス・ディアスとタイラー・ウェイドのプラトーンという訳のわからない状態に落ち着いてしまっている。

ベテランUTであるアレドミス・ディアスの体たらくはさておき、若手2人、特にニック・アレンが奮わないのは首脳陣にとっても誤算だろう。


専守防衛型のショートとして打てずとも守備のバリューを計算されていたアレンだったが、今年は守備も低調だ。
昨年、+9稼いだOAAは-3の低水準と、守備でここまでマイナスを叩いてしまうのは大誤算だ。
さらに打撃も昨年の水準からさらに落ちており、wRC+は37に過ぎない。

困ったことにAAAでは絶好調であり、今年通して四球>三振かつwRC+134を記録する超優秀なリードオフマンとして活躍している。
再降格後も好調を維持している。

現実的な解決策としては、ニック・アレンのAAAでの成績がフロックではないと確かめられてから、再びアレンを使うほかないだろう。
守備力の低下は原因が分からないが、長い目で見てサンプルが増えてくれば指標も改善するかもしれない。

ケビン・スミスもパワーに毛が生えたニック・アレン程度で、ごく稀にホームランこそ打つものの、守備指標はマイナスの惨状。
AAAでの成績も下降してきており、アレンよりも信頼できない状態になっている。

2年契約のアレドミス・ディアスがショートで結果を残したとして、長期的には何ら影響がないため、やはり若手が結果を出すことが好ましい。
もっとも現状のディアスの、ショート守備を任せるにはあまりにしんどいアジリティと打撃不振を考えれば、ディアスというハードルはあまりに低いはずだ。(本来は)

アレンの再昇格が最も現実味のあるオプションだが、念のために他のオプションも見ておきたい。

AAAで候補に上がるのはUTのマックス・シューマンだ。
シーズン52盗塁を決めたこともある脚力と、バッテリー以外の7ポジションを守れる汎用性を兼ね備えるシューマンは、徐々に打力に磨きをかけてきた。
今年はwRC+120の成績を残し、出塁率も4割超えと十分。課題の三振も減らしており、リードオフとしての適性は確かなものだ。

UTのシューマンがショートでプラスを出せるかは疑問だが、ディアスの守備力を考えれば、ショートで出場するのは問題ないだろう。

ショートの穴埋めとして昇格するかは分からないものの、シューマンは今季中に必ずデビューさせてほしい人材だ。



もう1人、先日AAAに上がったばかりのローガン・デビッドソンも候補になってくる。

2019年ドラフト1巡目入団ながら、2年続けてAAの壁を突破できず、ついに念願のAAA昇格となった。

もともとショートとしてプラスディフェンダーのデビッドソンだが、今年はダレル・ヘルナイズの加入もあってUTとしてプレー。3B、2B、1Bもレパートリーに加えた。

AAAでも1Bでの出場が多いが、過去のマイナーでの守備指標を見てもショートが十二分に務まる可能性は高い。
ショートとして昇格する可能性も残されているだろう。

打撃は三振の数こそ依然気になるものの、選球眼でカバーし、wRC+135の好成績。ローパワーや選球眼には疑いの余地がなく、AAAでの好スタートを維持できれば、計算できるバットになれるかもしれない。

GM補佐のビリー・オーウェンスは、汎用性やパワー、そしてメイクアップの良さから、チャド・ピンダーをデビッドソンに重ね合わせている。
ピンダーのようなUTが台頭してくれば、野手層は一気に厚くなるはずだ。


AAには将来の正ショート候補の本命がいる。コール・アービンのトレードで獲得したダレル・ヘルナイズだ。

トレード当初はアスレチックスの負けトレードという声がほとんどだったが、ヘルナイズの活躍(とアービンの不振)によってその評価も変わってきている。

21歳とAAの中でも若い部類に入るヘルナイズだが、経験の浅さを感じさせることなく、AAで打棒を奮っている。
wRC+128と打撃の傑出度は相応に高く、トントン拍子にデビューを飾る可能性は否定できない。

ただ、投手ならともかく、ハイレベルな投手との対戦経験が必要な打者がAAAをスキップするのはリスキー。シーズン終盤に顔見せするくらいが関の山になるだろう。

ショート守備はアジリティこそ問題ないが、アームは平均程度で、セカンドへのコンバートがあり得るかもしれない。
ここら辺は内野守備指導の名人であるボビー・クロスビー(AA監督)の指導に期待したい。


この記事が参加している募集

野球が好き

よろしければサポートをお願いします