松山 徳子

松山 徳子

最近の記事

渡邉清文「鏡の盾」感想

■ギリシャ神話の再構築、楽しい!  ギリシャ神話を知るのには、様々なルートがある。文字媒体、美術媒体、映像媒体、等様々だ。神話という壮大な話であって、今日に伝わるまで長い長い伝言ゲームを経ているために、媒体によって解釈や細かい点の描写が異なる。因みに、私自身は中央公論新社から出ている田中満智子著「マンガギリシア神話全8巻」が家の本棚に鎮座していて、そこから入った。その後は、個々のエピソードを小説で読んだり、美術鑑賞をした際にモチーフになっていて解説を聞いた等のふれあい方をし

    • 今野あきひろ「受戒」感想

      ■書き手に導かれる記憶の冒険譚  まずは今野さんには、ご無事で何よりですということをお伝えしたい。3月末に、実作は提出できそうにない、また何処かで的なツイートを残し、それ以後Twitterに登場しなくなった。コロナで世界情勢が大きく変わる絶望の時期でもあって、勝手に何かの調査(もしくは任務)でコロナが蔓延した中国本土に赴き、帰国の予定が立たない状況を想像していたので、無事に実作を執筆できる環境に戻れたのだと安心した。今野さんの実作が読めないのか、とこれまた勝手にがっかりして

      • 宇部詠一「愛と友情を失い、異国の物語から慰めを得ようとした語り部の話」感想

        ◼︎神様の視点と三重の構造、そして作者の意思を反映するということ とても面白く読ませて頂いた。  「書き手が小説を書く動機を語りつつ小説を書き進める話」を初めて読んだ。つまるところ、物語の登場人物にとっての「(例えるなら)神様の視点」から語られていることになる。そして、この物語の神様である「僕」は(もちろん人間だが)、ある悩みを抱えていて、そこからくる葛藤に折り合いをつけたい気持ちでいる。読み手からすると、珍しいタイプの構成だと思う。私は、自分が読んだ物語のレビューや書評

        • SF創作講座 第10回 梗概感想(11/25)

          自分の頭を整理することができないまま今に至る。GWというものがあっという間に終わろうとしているが、これだけはやり切るという強い意思…! ④天王丸景虎/皿の外 新しい文明を主人公がどんな風に受け入れていくのか。気になったことが2点。天国の位置づけと干渉拒否について。肉体がある状態でも天国へ行けるのか。それなら暮らす先の人気が偏りそうなものだけれど。そして十分満たされていそうな都市での生活をなぜ捨てる必要があるのか。天国はどれだけ魅力的な場所なのだろう。それぞれの居場所でなに

        渡邉清文「鏡の盾」感想

          SF創作講座 第10回 梗概感想 (3/25)

          SF創作講座2019受講生 松山です。 最終課題についての梗概について、語らせて頂きます。 いつもはあるお題がないので、今回書かれている内容が、受講生の皆さまの今一番気になっていることやテーマの本質だったりするのかなと妄想すると尚楽しいです。敬称略。気になった順です。 ①今野あきひろ/受戒  おそらくですが、コロナの影響等で大変な環境のなかにいらっしゃるのにも関わらず提出されたこと、素晴らしいと思います。事情は存じ上げませんが、書かれている内容は、おそらく半分以上は現

          SF創作講座 第10回 梗概感想 (3/25)

          「あなたの人生の物語」(テッド・チャン)について愛と敬意をもって語る

           SF創作講座2019に参加しています。サイエンスフィクションという枠組みの元、月に一度お題を頂き、物語を書き、プロの作家・編集者さんにコメントを頂く、という内容です。2019年6月から始まり、2020月5月にて終了予定。 小説を書きたいと思って書き始めはするものの完結させられずにいた私ですが、自分なりに奮起して参加を決意しました。次が最後の提出機会となります。この一年の集大成としての物語をまとめる前に、サイエンスフィクションに鼻先を突っ込むことになったきっかけの作品「あなた

          「あなたの人生の物語」(テッド・チャン)について愛と敬意をもって語る

          SF創作講座 第8回 梗概感想(30/30)

          敬称略! 22.安斉樹/夢じゃない世界  最初ハルを女性と勘違いした。ライブの魅力に取り憑かれて悪魔と契約してしまうなんて、一体どんなに熱いライブだったのだろうか。私見だが、現状に満足している人はライブを楽しむことはあっても嵌まり込んだりしないと思うので、ハルの家庭環境や悩みを描写すると思い切った行動の説明になる気がする。また、ただのライブ好きとしての意見になるが、ローディという単語は一般の人は知らないのではないか。注釈を加えるかスタッフと表記を変えた方がわかりやすいと思う

          SF創作講座 第8回 梗概感想(30/30)

          SF創作講座 第8回 梗概感想(21/30)

          行きます!敬称略。 15.藍銅ツバメ/神殺し  「どこまでいっても解り合えない」関係は、自分に置き換えても相当数あるもので、それが人間同士だろうが化け物同士だろうが神だろうが何だろうが変わらないという絶望と安心感を感じた。様々な行動が自分の意思なのか、はたまた操られたものなのか、後半に過ぎるラスト。そもそも、百足との邂逅も仕組まれたものだったのでは…。 16.東京ニトロ/ら・ら・ら・インターネット  ニトロさんの強い90年代愛。令和の今現在からすると、90年代は危うさや予

          SF創作講座 第8回 梗概感想(21/30)

          SF創作講座 第8回 梗概感想(14/30)

          敬称略。ひとつの作品に対し15分程時間を要している。頑張ります。 ⑥渡邉清文/デス・ライダー  死の概念を持たない存在に対して死を与える、という個人的に興味を惹かれるテーマ。主人公2人のアプローチによって、初めて死を得るわけだけれど、それによって〈石〉が絶望の淵に追いやられるのか、救いになるのか、元々どんな存在意義があったのか等、知りたいと思うことが沢山あった。そして主人公サイドにとって生気を得ることがどんな部類の行為なのだろうと考えた。私たちがご飯を食べる感覚の当たり前の

          SF創作講座 第8回 梗概感想(14/30)

          SF創作講座 第8回 梗概感想(5/30)

          SF創作講座。鏡明氏出題の「ファースト・コンタクト(最初の接触)」梗概について、感じたことを書かせて頂きます。敬称略。 ①天王丸景虎/未開のプロンプト  地球は処女、という認識の仕方にすごいインパクトがある。じゃあ、何をしたら地球は非処女になるんだろう。影響の受け方はどうあれ、干渉波を受けたのなら、非処女でなくなるということだろうか。  登場人物について。様々な知生体が登場する中で、「(オリジナルの)アイン」と「父」だけが地球人だけれど、少しわかりにくく感じた。それが狙

          SF創作講座 第8回 梗概感想(5/30)