SF創作講座 第8回 梗概感想(30/30)

敬称略!

22.安斉樹/夢じゃない世界
 最初ハルを女性と勘違いした。ライブの魅力に取り憑かれて悪魔と契約してしまうなんて、一体どんなに熱いライブだったのだろうか。私見だが、現状に満足している人はライブを楽しむことはあっても嵌まり込んだりしないと思うので、ハルの家庭環境や悩みを描写すると思い切った行動の説明になる気がする。また、ただのライブ好きとしての意見になるが、ローディという単語は一般の人は知らないのではないか。注釈を加えるかスタッフと表記を変えた方がわかりやすいと思う。

23.一徳元就/必ずしもベムというわけではない
 諦観を抱いた青年が異星生命体との出会いにより希望を見出す話かと思ったが違った。人間が異星生命体との交配により人間でなくなるのは見方によっては種の喪失であり、オリンピックという祭りが終わった後の物悲しさと相まって印象的なラストになると感じた。

24.遠野よあけ/十二所じあみ全集別巻
 アイコンがキリリと変化している。作品は、構造が多角的で面白い。作者がのびのび書いている感じがした。想像力が追いつかず、理解できないことが沢山あったが、情報量が梗概に収まりきっていないからだと思いたい。ファーストコンタクト要素は薄いけれど、お話としての魅力を感じる。

25.榛見あきる/無何有の位
 モチーフの選び方がハマっている。「0」を軸に、仏教の解脱(?)・旅に出て戻ってくること・天体の動き、と連なるイメージが心地よい。仏でなくて天使を登場させることで、画面が華やかで新鮮に写る。出てくる単語のバランスが良く読みやすい。「0」の天使との邂逅により主人公は無敵の存在になるのだろうか。心境の変化に注目したい。

26.式さん/ゾンビパニックの論理哲学論考
 仮にSF的要素を削ぎ落としてみると、恋は盲目、というテーマかなと思った。周囲の声ばかり気にしていた少年が、それ以上に夢中になる事柄と出会う。「心の声」を聞くことが実生活に必要な能力でないのなら、ハッピーエンドなのかなと受け取った。

27.九きゅあ/カオダシたちの神隠し
 難しかった。千と千尋をイメージしながら読むのは良いヒントになったけれど、それでも難しい。ストーリーに比べると背景の説明が多いことがわかりにくさの要因だと思うので、ストーリーを軸に設定を小出しにしていく方が良いような気がする。箇条書きされている世界観が実作になったとき、どう表現されるのか気になる。

28.西宮四光/RingRingRing
 勢いのある文脈ですいすい読めた。燐凛倫がどんな存在なのかわからないが、どんな思考の持ち主なのかもっと知りたいと思う。「書いたことは巡り巡ってわたしを動かすんだ」という言葉にどきんとした。

29.宇部詠一/君の声は聞こえるけれど、君には僕の声が聞こえない
 邦画のタイトルのよう。深刻な展開と平行して人間関係がゆっくりと動いていく。学生時代の片思いの描写があると奥行きが出て良い。ただ、好きな人に受け入れられないことを理由に告白の返事をするなんて、しかもYESと言うなんて、それじゃあしあわせになんかなれないし、相手をしあわせにすることもできんぞ愛華、とつっこみを入れてしまった。

30.松山徳子/螺旋の伝言
 梗概として前後のバランスがおかしい。後半の説明が全然足りない。なぜ停止したのか、原因とそこに至る動機を、わかりやすくして書く。自分と異なる存在と出会ったとき、当たり前が当たり前でなくなり、困惑し、それまではしなかったような選択をする。まずは書き上げることだ。喝。