SF創作講座 第10回 梗概感想 (3/25)

SF創作講座2019受講生 松山です。

最終課題についての梗概について、語らせて頂きます。

いつもはあるお題がないので、今回書かれている内容が、受講生の皆さまの今一番気になっていることやテーマの本質だったりするのかなと妄想すると尚楽しいです。敬称略。気になった順です。

①今野あきひろ/受戒

 おそらくですが、コロナの影響等で大変な環境のなかにいらっしゃるのにも関わらず提出されたこと、素晴らしいと思います。事情は存じ上げませんが、書かれている内容は、おそらく半分以上は現実なんですよね?今まさに福健省にいらっしゃるのですよね?受戒の行われる村にいらっしゃるのですよね?事情が変わられてこの紀行文が15/15になったとき、どんなものができるのか、今野さんがどんな状態にあるのか、心配が先に立ちまずが、どうか書き上げてご無事な姿を見せてほしいです。実は私も観たのです、NHKスペシャル。未開拓のような巨大な鍾乳洞。深い闇から始まって、何が起きているのでしょう。小説になるのかドキュメンタリーになるのかは定かではありませんが、現実とリンクした冒頭に謎がちりばめられ、緊迫した展開が見え隠れする。続きを書き上げねばならないですよ、これは。そして、シロクマが出てきませんでしたね。どこかで姿を現すという展開をこっそり期待します。

②木玉文亀/Eyeware

  アイウェアという設定が面白いです。すぐそこにやって来そうな未来。この未来は本当に他者に無関心な社会なのでしょうか。拡張現実を重ね合わせた私界とはどんなものなのだろう。見たくないものを消すことができる?安全はどのように保障される?他者による共有は可能?どんなビジュアルになるのか興味深いです。また、パラシトイドが行っていることは、この世界のなかでは犯罪でしょうか。彼らはどのくらいの切実さで活動しているのでしょう。

 結末、社会に問題提起するたけでなく、アイウェアの使用不使用について真っ向から対立し、戦い抜くような展開を期待します。現代でいうスマートフォンを手離すよう訴えているようなものだろうから、相当なハードルだと思います。そこまでして実現させたい社会像がどんなものなのか興味津々です。

③宇部詠一/異教徒の娘とその似姿に恋をした少年スレイマーンの話

 多重構造の物語。正直言って、物語なんて娯楽の一部でしかなくて、必要不可欠なものではないのかもしれない。でも、たとえば、寝ている間に夢をみて違う世界を思い描くこともあれば、現実から目を背けてこうだったらいいのにと願うこともある。これも物語。意外と生活から切り離せないもの。様々な物語を書いている青年は落ち込んでいる様子ですね。救いを求めて書いた物語に、どんな影響を受けるのでしょうか。砂漠に点在する街で、夜の風を受けながらオレンジ色の蝋燭の元で一人筆を走らせているイメージです。青年の物語も、青年が書く物語も、比較的静かなのに色鮮やかな印象なのが不思議です。

 そして宗教的な内容に挑まれること、尊敬します。相当のリサーチと知識が必要なはず。宗教と言えば、去年飛行機で隣合ったパレスチナ人の男性が、どの宗教も教えはひとつだからいがみ合う必要はないんだと言っていました。彼は聖書やコーランを読み研究し、その答えを自分で導き出したのだそうです。神を尊ぶ姿勢は、それそのものが何だか神聖なものに感じられます。〝神はいつだって見てくれているし、自分はいつだって祈ることができる〟そう語る彼は輝いているようにも見えました。チョコレートをくれた良い人でした。

 そういえば、書き換えられていく物語という点では「バタフライ・エフェクト」を思い出しました。現実と虚構がどのように侵食し合うのが、展開を楽しみにしております。