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【創作小説】こいびとあつかい?

放課後、私は制服のままスーパーで買った食材を片手に彼女のマンションに向かった。

『じゃあこれ渡しておくわ』

恋人になってから一月後、さらっと何でもないように部屋の合鍵を手渡してきた。

キーホルダーは色違いのお揃いのもの。
何度見てもにやけてしまう。

目を丸くして驚く私にこほんと彼女は咳払いしながら付け加えた。ほんのり頬を染めて。
『もちろん学校をサボったりはもってのほか。親御さんを心配させない時間にね。あなたはまだ学生なのだから』

一回り年上の彼女は最近仕事が多忙だ。
何でも完璧にこなすが、家事は意外と苦手で、初めて家にお邪魔した時はまず掃除をするところから始まった。

(ちゃんとご飯食べてるかな)

料理もあまりやらない(本人曰く暇がないらしい)ようでキッチンはいつも綺麗だった。

何か美味しいものを食べさせてあげたい。
こう見えて私自身結構料理は得意だった。
というより、彼女の為に必死で覚えた。

「お邪魔します」
私は小声で呟きリビングに入った。
だが、誰もいない。

寝室が少し空いていて、カタカタと叩く音がした。

私は音を立てず部屋に入る。
彼女は着替えてないのかスーツに身を包み、ベッドの上でパソコンと睨めっこをするようにキーボードをひたすら打っていた。
(今日はオフなはずなのに)
辺りには原稿らしきものが散らばっていた。
私はキュッと胸が痛んだ。
いつだって全力で頑張る彼女は好きだ。応援していきたい。
だが、同時に彼女の体が心配だった。
明らかに疲れている。綺麗な肌もぼろぼろ。
目の下にもうっすらくまができている。
頭の上で一つに括っている髪も少しヨレヨレしていた。
寝てないのだろうか。
私はゆっくりと彼女に近づき、そっと後ろから抱きしめた。

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「なっちゃん、お疲れ様。
「え、律?いつの間に」
「気づいてなかったの?もうっ、家に帰った時くらいちゃんと休もうよ」
(ーーーそんなに頑張らなくていいんだよ)
私は頬を膨らませ抗議した。
なっちゃんは顔を向け、困ったように笑った。
「もう、そんなに膨れないの、可愛い顔が台無しよ」
なっちゃんはそのまま伸ばすと私の頬をそっと撫でた。すべすべで大好きな手。嬉しい…嬉しいけど、なんだか私ばっかりドキドキさせられている気がする。ちょっと悔しい。
「こ、子供扱いしないで」
「子供じゃないわ。恋人扱いでしょう?」
「……」
私はなっちゃんをじっと見つめた。何か文句の一つでも言いたいような言いたくないような、それでいて胸がくすぐったい。

そんな私になっちゃんはくすくすと笑いながら瞳を輝かせ、私をぎゅっと胸に抱き寄せた。
甘い花の香りが鼻腔をくすぐる。なっちゃんの匂いだ。
「な、なっちゃん」
「ふふふ、あなたの顔見てるとなんだか元気出たわ。ありがとう。どう?これでもまだ子供扱い?子供相手にこんなことはしないでしょ?」
とか言ってもやっぱり子供扱いされている気がする。大人の余裕だ。
けど、こんな子供扱いはきっと私だけだろう。この特別感がとてつもなく嬉しいから困る。惚れた弱みだろう。早く大人になりたい。
私はぼそっと内緒話でもするように耳元で囁いた。
「…今日…泊まってもいい?晩ご飯の用意してきたから」
「もう、仕方ないわね。親御さんに許可とったらね」
今日の晩御飯はりっちゃんの大好きなものをたくさん作ろう、そんなことを考えながら私は口元が緩むのが止めらなかった。

こちらの挿絵は以前にSTCN(スタチュン)さんに依頼して描いて頂いたものを許可を得て使用してます。

当時はただイラストを描いてもらうだけで幸せだったのですが、最近になりお話を書きたい!

と創作意欲が湧いて生まれた作品です。

初の百合話でした。


イラスト描いてもらった当時、メンタルぼろぼろでお先真っ暗…癒しを求めて描いて頂いた覚えが今でも鮮明に残ってます。

ーーーそんなに頑張らなくてもいいんだよ。

これがメインテーマ。

色づかいも優しく、眺めてるだけでとても励みに、助けられました。時には涙出ました。

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あまりにも好きで、絵を写真立てにいれて飾ってます💕

STCN(スタチュン)さんの美麗な素敵な作品はpixivで見られます☺️


STCN(スタチュン)さん、この度はご縁をありがとうございました。引き続き活動応援してます。

そのサポートが励みに力になります。1杯のコーヒーが飲める幸せを実感出来ます☺️