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2020年11月17日火曜日

合気道教室に通っていたことがある。

中学二年生のとき、近所の友達に誘われて通い始めた。
私立の学校に通っていたので、みな電車通学で、住んでいるところはばらばら。
「地元(の友達)」という概念の無いぼくにとって、
たまたま自転車で行き来できる場所に住んでいたT君は貴重な存在だった。
高校時分ですでに付き合いもなくなり、今ではどこでどうしているかもわからないが、当時はよく家に行って、テレビゲームなんかをして遊んでいた。

そのT君から誘われて、中野体育館まで自転車で通い始めた。
寄り道したり、色んな話をしたりしながらの自転車での行き帰りも楽しかった記憶がある。
中野体育館はもう閉館しているか、少なくとも同じ場所には無いらしい。

両親(離婚前だ)がどういう考えで息子に合気道を習いに行かせたのか、今となってはわからない。
気が小さく運動も苦手なぼくに、何か変化が起こると期待したのだろうか。
それとも、どうせ長続きしないと深い考えは無かったのだろうか。
まだうちにお金があった頃の話だ。

ケンカやバトル系の少年漫画に素直に胸ときめかせていた男子校通いの中学生にとっては、「四方投げ」をはじめ合気道の技を覚えるのが楽しく、いま思うとけっこう意外だけど、喜んで通っていたはずだ。
道着が汗だくになる稽古の後、体育館の地下の通路の自販機で買って一気飲みするスポーツドリンクは、今までの人生で飲んだスポーツドリンクの中でもいちばんおいしかった。

そんな合気道教室通いだが、わずか数ヶ月でぼくに難病が発覚し、終わってしまった。
入院したのがたぶん12月だから、夏から秋頃のことだったんだろう。ちょうど今頃だ。
そうか、あれは病気になる前のことなんだな。
いや、正しくは発覚がそのときというだけで、
しっかり発病している状態で汗だくになって運動教室に通っていたのだから、完全に自殺行為だったわけだ。

とはいえ、これはぼくの人生が大きなトラブルもなく平和だった最後の思い出かも知れない。
まあ、誰にだって色々あるよな。
合気道の極意は受け流すこと。面倒なことはみんな受け流せたらいいね。

昨日、ネットサーフィンをしていてふと思い出したので書いてみた。
何をきっかけに思い出したのかは忘れてしまった。

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