物理的な距離が別れの理由にならなくなった時代の、共感できる別れとは

3月、年度末、そして卒業や旅立ちの季節。
卒業は晴れやかでもありながら別れもともなう、そんな複雑な儀式でもある。
しかし、最近ネットも発達しているし、テレビ電話、オンライン会議・・・そんな形でもいつでも話をすることはできる。SNS上にも遠方の友達はたくさんいるが、実際に会いに行っても、「なんか久しぶりな気がしない!」と言われる。

この数か月も連ドラはたくさん見ていたが、昔だったら最後ニューヨークに行ってお別れ、みたいになっていたのに、最近は海外に行ってもその間に関係は壊れない。世界中を旅して暮らすような人にもたくさん会うけど、みんな遠距離に恋人がいて、それなりにうまく行っている人が多い。あまり物理的な距離を気にしていない気がする。

確かに、自分も本当に悲しい別離は、「死ぬ」、物理的にこの世からいなくなるという以外には感じなくなってきた。「来年からアメリカで就職するんだ」「そうなんだー」くらいの感覚で。

流行歌には別れがつきものだと思っていた。確かに今の歌はポジティブ・シンキング系が強いとは思う。明日があるさ、夢はかなう、そんな曲の印象が強くて、そもそも恋愛要素が強い歌の割合が減ってきている気がする。

でも、本当にそうなんだろうか。今の時代に共感される「別れ」って何なのだろうか。

ためしに、2021年3月29日付のビルボード週刊シングルチャート(日本)のTop10を拾ってみた。

One Last Kiss (宇多田ヒカル)
ドライフラワー (優里)
うっせぇわ (Ado)
Dynamite (BTS)
夜に駆ける (YOASOBI)
勿忘 (Awesome City Club)
怪物 (YOASOBI)
炎 (LiSA)
群青 (YOASOBI)
Roar (KAT-TUN)

反骨精神の「うっせぇわ」、ハッピーなパーティソング「Dynamite」は別れの曲ではないし、原作があるYOASOBIについては、「怪物」「群青」については別れの曲ではない。

が、思った以上にただただポジティブな曲ばかりではない。残りの6曲は何らかの「別れ」を扱っている曲だ。必ずしも男女の別れでもなく、「死」をイメージするものも多い。そして「別れて悲しくてたまらない」というよりも、もう少し俯瞰して、別れた時点からは離れた再生を歌ったものが多いようだ。

「One Last Kiss」、「炎」、「Roar」は映像作品に関係した曲が多いこともあって、その物語の世界観を受け継いでいるのだと思うのだけど、いずれも「死」という形での別れが背景にある。単純な解釈はできないのだけど、死を経験したうえでの再生を感じる内容だ。

「夜に駆ける」も原作の小説やMVからすれば自殺がテーマだ。歌詞に再生感はないのだけど、音楽としては清涼感がある。

「ドライフラワー」はこの中ではいちばんシンプルな男女の別れの歌だけど、いつか忘れるのだろうな、といった俯瞰した視点がある。「勿忘」も男女の別れなのだけど、結構未練たっぷりと思わせながら、最後の方では次の愛に向かおうとしている再生感で締めくくった曲だ。

思ったより「死」がテーマだったな。予想以上に暗くなってしまった(笑)

See you soon.とGood byeは結構違う。共感される別れは、別れの後にどんな再生があるか。再生を予測していることもあるし、実際に再生してから振り返っていることもある。別れが男女の別れであっても、もう少し決定的なこの世との別れであっても、その後の再生感がある別れの描き方が、現代に共感されるものなのかもしれない。

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まちづくり系作詞・作曲家(Co-Writing Farm)。東京下町のコミュニティビルダー(はじまり商店街)。まちづくり・場づくりプロジェクト支援をしています。ラテンシンガー、河内音頭取り(五月家一蘭)にもなります。世界の踊れる音楽/都会/銭湯/水辺/鉄道/大リーグ/カレー好き。