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悪役

映画は好きなんだけど、愛してはいない。悪い映画に関心はないからね。良い映画だけを見る、名所だけを好んで回る、映画シーンの観光客だ。 映画には詳しくもない。だから、映画評論なんてとてもできない。映画界の地方言語は話せない。でも、自分の目に映ったものの批評はできるよな。ユネスコに勤務していなくても、札幌時計台を罵る事はできる。 ただ、悪い映画に興味はないけど、悪い役にはとても惹かれる。 僕が良いと思った映画には、必ずと言っていいほど魅力的な悪役が現れる。好きな様に振る舞い、

    • エスター『エスター』より

      この映画を見ている前提の記事なのでネタバレします。この映画を語る事はエスターを語る事になるし、それならネタバレする事になる。エスターの正体は主題にしない。気になるのは彼女の苦悩だ。 さて、まずはケイトの子供達にとって素敵で無敵な母親と、旦那にとっての脆さと不安定さを持った単なる女の両面が強調され、これから戦場になる"家庭"の不安定さが示される。 そして訪れた孤児院。里親を火事で失った少女エスター。手首と首にリボン、他の子とは決して打ち解けない。可愛らしい絵にストーリー。エ

      • アレックス・デラージ『時計じかけのオレンジ』より

        さあ来た。暴力を扱う映画において、定番中の定番、古典の中の古典だ。そして、これを作ったのはキューブリックだ。悪役というか、アレックスの置かれた状況は、悪役を考える上で一つの柱になる。見るべきものが、そこにはある。 アレックスのする事は、すべてありふれている行為。いわば俗悪だ。特別な計画も思想もない。欲望の起こるままに、発散し続ける。そして青年期。人格が完成される前の悪役2人目。 この作品は、あらすじと考察を同時にやっていこう。 暗い街へ繰り出し、ホームレスを暴行し始める

        • ジョン・ドウ『セブン』より

          「私は特別ではない。でも、しようとしている事は特別だ。」 映画のおかげで彼は有名だな。計画者。悪の特徴、衝動性とは無縁の男。計画を練るのも、出来事を大きく育て、後の世に残す為。人の記憶に残りたい。自分にしか達成し得ない使命を全うしたい。高尚だとも、むしろひどく低俗だとも思える。上のセリフの通り、彼に個性的な部分が見えない。だから、あまり書きようがないんだけど、少し強引にでもしがみついて書いてみよう。 モラルの腐敗したニューヨークで、不可解な殺人事件が起こる。屠畜前の豚の様

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          ハンニバル・レクター『羊たちの沈黙』より あと『ハンニバル・ライジング』 『レッドドラゴン』もちょっとだけ

          1991年に公開された、言わずと知れたクライム映画の金字塔。公開から30年が過ぎた今も、映画界に聳える不滅の塔だ。そして、『羊たちの沈黙』をその地位にまで押し上げたのは、なんといってもハンニバル・レクター。選民的、儀礼的、紳士的で知的。なのに食人鬼。後の悪役に多大な影響を与えたキャラクターだ。 正直、こいつはあんまり好きじゃない。というか好きじゃなかった。無敵な癖に、ただの賢く若い女を気に入ったりする。なんかつまんね。でも、映画史に早くから登場した神格化を伴う悪役。考察して

          ハンニバル・レクター『羊たちの沈黙』より あと『ハンニバル・ライジング』 『レッドドラゴン』もちょっとだけ

          泰良『ディストラクションベイビーズ 』より

          「楽しければそれでいいけん」 いやこいつも別に悪役ではないんだけど、最終的に、悪の孵る卵という意味で悪役。青年期ならではの変容を起こすキャラクター。 あらすじは要らないか。見ない人は永遠に見ない。見てる人は一生覚えてる。そんな映画だ。 日夜喧嘩に明け暮れる、港町に住む向こう見ずな不良少年。社会も将来も、何一つ気にしない。腕がもう一本生えていたら、自分と取っ組み合いでも始めそうだ。 外聞を気にしない。世の決まり事を何一つ気にしない。行きずりの人間に喧嘩をふっかける。肩を

          泰良『ディストラクションベイビーズ 』より

          アントン・シガー『ノーカントリー』より

          「お前の従うルールのせいでこうなったなら、そのルールは必要か?」 はい。アントン・シガー。アメリカの小説家、コーマック・マッカーシー著「No Country for Old Men」を原作にとり制作された映画の登場人物だ。カルテルに使役される雇われ暗殺者で、界隈では有名人。超然とした立ち振る舞いで、邪魔なものを慈悲を持たず処分していく。暴力を生々しく描く本作で、その象徴とも、体現とも取れる人物。 映画自体は、暴力への回答を持たない。コーマック・マッカーシーが、そもそも暴力

          アントン・シガー『ノーカントリー』より

          トニー・モンタナ『スカーフェイス』より

          「反逆者」 「汚いやつ以外には、汚い手は使わない」 「The Pride」 さあ、この男だ。 1983年に、『暗黒街の顔役』のリメイク版として公開されて以降、未だ若者を奮い立たせてやまない傑作マフィア映画の主人公。 その荒々しい生き様が、アフリカ系アメリカ人に主体を持つヒップホップコミュニティにおいて、神格化された存在にもなったらしい。 正直悪役では無いよな、主人公だし。しかも、今回の記事のテーマのアンチみたいな男。恐れを知らない。ただ、満たされることのない動機だけ

          トニー・モンタナ『スカーフェイス』より

          ジョーカー『ジョーカー』より

          ネタバレしてます。昔書いたやつ。確か題名は「ジョーカーはなぜ笑うのか?」 あらすじ コメディアンを夢見る貧乏な青年アーサーは、ゴッサムシティに母親と二人で暮らしていた。大道芸人として生計を立てていたが、彼には自分の意志とは関係なく笑いだしてしまうという障害があった。長い期間抑圧的な生活に耐えてきた彼だったが、不幸な出来事が重なりうなだれていた時に、自分を罵り嘲ってきた男たちを衝動的に射殺してしまう。その後、敬愛していたスタンダップコメィアンから番組への出演オファーを受け、

          ジョーカー『ジョーカー』より