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三題噺「桜、スクワット、夕暮れ」


 
 夕暮れの教室、私はポツンと一人座っていた。窓の外ではサッカー部が練習に励み、汗を流している。どうやら今日はスクワットがメニューらしい。
 
 特別、私はサッカー部のメニューが気になるとか赤点の居残りだとかで教室に残っている訳では無い。
 
 告白。そう私は今日、告白をするのだ。
 
 お相手は一つ上の先輩で、今ちょうど窓の外でスクワットをしている青いユニホームを着た男だ。一目惚れである。ただ、惚れてからというもの特に状況も変わらず、たまに盗み見てはニヤケているといった具合で、特に進展もないような状態だったのだが。

 つい先日のこと、友達に煽られた私は勢いのままに、ラブレターを一通書いてしまった。その場のテンションで書かれたソレは、もうお粗末な仕上がりで、思い出しただけでも赤面するほどに酷い出来だったのだが。あろうことか私はソレを先輩のロッカーに入れてしまったのだ。勇気と言うより蛮勇だ。それからのことはもうお察しの通りである。
 
 そうして「部活動終わり二ノ一の教室でお待ちしてます。」なんて書いたものだから家にも帰れず、こうして部活が終わるのをただ待っているのだ。と、こんなサラッと言ってはいるのだけど、さっきから鼓動は激しく鼓膜を叩いているし、汗で手はしっとりと濡れている。内心、逃げ出してしまおうかと何度も考えた。しかし、そうしなかったのはこの「恋」という強大なエネルギーが、私をつき動かしているからだと思うのだ。
 
 そうこう考えていると、時刻は午後七時をまわっていた。そとはほとんど薄暗くなってきて、外灯が咲き始めた桜の花を明るく照らし始めていた。窓の外ではサッカー部が終わりの挨拶をしていた。
 
 そろそろか。より一層心臓の音は激しく鳴り出した。いや、これは怖くてではない。土壇場で私は喜んでいる。この状況に歓喜している。もうなにも怖くない。
 
 ふと、後ろから声をかけられた。
 
 少し笑い、私は振り返る。


 
 戦闘開始

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