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一級建築士製図試験_9 《YouTubeで3D過去問分析をする意味》

こんにちは。一級建築士のYAPです。

YouTubeで3Dモデルを使用した一級建築士製図試験課題の過去問分析動画の配信を開始しました。

以前からYouTubeで製図試験勉強の役に立つ新しい情報の提供はできないかと模索していました。

多くの製図試験の役に立つ動画を配信しているYouTuberがいらっしゃいます。

私も受験生の時、多くの動画を参考にさせていただきました。

しかし、近年の学習動画は過去の焼き増しが多く、オリジナリティや新しい切り口が無いなと感じて、どのようなコンテンツを配信するか考えていました。

今回は私のYoutubeチャンネルで3Dを使った過去問分析を始めた経緯と3Dでの過去問分析の有用性についてお話します。

1.プロローグ

ここで少し話は変わりますが私の製図試験との関りを簡単にご紹介します。

令和元年7月 学科試験合格 製図試験発受験に向けて勉強開始
令和元年10月 製図試験台風により延期
令和元年12月 製図試験受験 不合格
令和2年10月 製図試験2回目の受験 合格
令和3年 某資格学校にて製図試験チューター
令和4年 某資格学校にて臨時講師担当

YAPの一級建築士試験経歴

令和元年から4年間、受験生の立場から講師の立場まで経験してきました。

実際に4年間関わってきた中で、本試験の傾向の変化を感じています。

各年代の分析を簡単にご紹介します。

2.各年代の本試験課題内容の傾向変遷

令和元年「美術館の分館」はいわゆるゾーニング型

私の通学していたS資格でも毎週の課題はとにかくパズルゲームのような条件設定の多い課題をたくさんこなしました。

結果的に本試験課題も建蔽率が厳しかったり、室の階振りで悩まされたりと、パズルゲームをなんとか解きながら、法規を満たせていれば合格が掴める様な試験内容でした。

これは令和元年の試験以前の傾向を踏まえたうえで、資格学校が対策をしていた課題で、とにかくパズルを時間内に解く訓練が一番合格率を上げるとの判断のもとでのカリキュラムだと今では思っています。

令和2年「高齢者介護施設」では課題発表から変わっていました。階数の指定は当日発表。基準階かゾーニング型か試験当日までわからない。S資格ではゾーニング型と基準階型を両方勉強しました。

実際の本試験課題は3階建ての建物で出題されましたが、例年のパズルゲームの要素が薄く、要求室の面積は適宜だらけ。また、諸室も自分で適宜提案して計画するものでした。

法規はもちろんクリア前提ですが、より受験生の自分で考える力を求める試験になっていました。

この流れは令和3年「集合住宅」、令和4年「事務所ビル」でも継続されており、毎年試験元からの課題指定はどんどんゆるくなっており、受験生自信で考える力が求められる試験の傾向が強くなっています

この時に資格学校で教えていることに少し疑問を感じました。

3.資格学校で教える内容について抱いた疑問

  • 資格学校の課題は未だにパズルゲームの要素が残っている。

  • こんなに条件設定が多い課題をこなして意味があるのか。

  • 情報処理だけ厳しくて、自分で考える余地のない課題。

もちろん、資格学校では試験元ではなく、講師が採点するのである程度マニュアル化して、課題の条件設定をキッチリする事でチェックシートで採点することが必要です。

しかし、本試験側は年々より自由度が増している。

この解き方も有れば、この解き方もあるよねと言った形で解法はより増えている。

本試験のように自由度が高すぎる課題を資格学校で出題すると講師側の負担は大きく増えます。
採点が講師の判断に委ねられてしまうと、それこそ教室間での指導レベルの差ができてしまう原因になります。

今年の資格学校の課題がどうかはわかりませんが、条件が山ほどあってひたすら情報処理をさせる課題のほうが教える側、採点する側からするとやりやすいのは事実です。

ただ、そのやり方を継続することは、全く的外れの課題演習だと感じずにはいられません

設計製図の指導方法が年々難しくなっているのは事実です。

ただでさえ、学科のようにある程度努力すれば受かる試験とは異なり、ものすごく努力して勉強している人も、試験の本質を理解していなかったり、試験当日の1つの判断を間違えただけで簡単に不合格にされてしまう試験です。

多くの受験生が製図試験で有利になる情報は何だろう。

4.多くの受験生に有利になる情報とは

私は近年の製図試験では、「よりリアルに建物をイメージして描くことが求められている」と考えています。

令和元年までは法規や室の欠落、プランニングがまとまらに等の明らかな不合格者が多くいました。

すなわち、法規や条件を満たして描き切ればある程度高い確率で合格。

令和2年以降は違います。条件が緩くなった分、図面を完成られる受験生の数は増えました。

すると今度はどこで差が出るか。それはプランニングの部分です。

プランニングといっても快適性や使い勝手等では判断はされていないと考えています。良い設計をする試験ではないので。

ここでいうプランニングとは、各試験課題で提示される課題文には明文化されていない部分でのプランニングです。

令和2年「高齢者介護施設」では居住部門と居宅サービス部門が要求されました。

それぞれの要求室には「玄関」があり、これに反応して建物の入口から分けてしまう受験生が何人かいました。

実際には建物内でコアからの動線でゾーニングをしっかりと分けることが求められているだけでした。

もちろん、建物の入口から分けるのが悪いことではないですが、多くの受験生はゾーニングでクリアしていたため、建物入口を複数設けて1階から動線を分けていた受験生は不合格が多かったです。(全員は確認できていないので不明確の為)

私も令和2年は受験生として試験会場で受けていませんでしたが、全くそんな発想は生まれませんでした。

なぜ課題文に正確に対応できたのか。それは「過去問をしっかり勉強していたこと」が大きかったと考えています。

5.製図試験で過去問を勉強することの意味

学科試験の勉強では、皆さん過去問をひたすら勉強しますが、製図試験では全く過去問を見ずに本試験当日を迎える人もいるくらい軽視されている傾向があります。

特に製図初受験の受験生は作図、エスキス、記述と短期間にやることが山ほどあり、それどころでは無いのが実情でしょう。

課題の用途も違うし、あまり参考にはならない。そう考えている方も多くいるかと思います。実際私も初受験時はそうでした。

ただ、過去問には本当に多くのヒントが隠れていることを、学習2年目で学びました。

6.一級建築士製図試験過去問で学んでほしいこと

過去問で学んでほしい点は大きく2つです。

6-a.課題文に対してのリアクションを知る
6-b.敷地図に対しての建物の建ち方を知る

6-a.課題文に対してのリアクションを知る

私は過去問を解いたりはしていませんでした。

とにかく、課題文を読みすぐに解答例を見ます。

課題文での要求に解答例がどのように回答しているかを知ることがとても大切です。

例えば「眺望に配慮した」「隣接させ、直接出入りができる」などの要望に対して、解答例がどのような計画をしているか確認することが大切です。

意外と曖昧な言葉が多く、”これでもいいんだ”を知ることが出来、プランニングの幅が広がるだけでなく、解釈の誤解を防ぐことが出来ます。

これは先ほどの令和2年「高齢者介護施設」での玄関問題についてもよい事例があります。

平成28年「子ども・子育て支援センター」の課題では、保育所部門の”保育所玄関”と児童館・子育て支援部門の”受付"が要求されています。

解答例を見ると1つの玄関から、ゾーニングを分けて計画しています。(この時は親切にエントランスホールを経由してとの文言がありました)

過去問の課題文と解答例のリアクションが頭に入っていると自分も最適なリアクションが取れるようになります。

初出題は多くの受験生が間違えます。過去に出た表現だけは確実なリアクションをすることが合格に繋がります。

6-b.敷地図に対しての建物の建ち方を知る

これも課題文に対してのリアクションの1つですが、敷地に対してのアプローチ計画は大変重要です。

メイン道路と裏動線を読み間違えれば、即座に少数派図面になり、合格確立は大きく低下します。

法規はさておき、周辺環境に対しての建物の立ち方は正解は無いですが、多くの受験生が考える多数派な図面を書けることが大きく合格に近づきます。

これも過去問に数多くのパターンがあり、それに対するリアクションまで公開されているので、大きなアドバンテージを得ることが出来ます。

最初の数十分で決まるアプローチ計画ですが、ここで間違えることは、大きなハンデを背負うことにつながるので、確実に抑えましょう。

この他にも過去問から学べることは多くありますが、私が今回主張したいのは上記の2つです。

それ以外にも、面積表の記載の仕方、不足面積を確保するための工夫(柱審ではなく、柱外面に壁を配置)、環境配慮の工夫、構造計画、吹抜とコアの位置関係、設備計画etc あります。

今回主張した2つの内容を効率的にかつ分かりやすく学べる素材をコンセプトに動画制作を進めています。

3Dで解答例を見せることで、図面よりもスケール感とリアリティを持っていただけると思います。

家具配置や、人、内装も加わることで空間がより分かりやすく、解答例の明確なゾーニング計画も分かりやすい動画が出来ています。

ただし、実際直近で出した動画は、課題文とそのリアクションについての説明が薄いので、今後改良予定です。

課題文の文章の表示や、ゾーニングの考え方なども分かりやすく説明を加えるように改良予定です。

まずは、次回配信予定の【令和4年解答例1 シェアオフィスの計画編】の動画で反映予定です。古い動画も修正予定ですので、現状の動画も確認いただき、「良くなった」や「もっとこうしてほしい」などのコメントをいただけますと幸いです。

今後も「一級建築士製図試験」についての情報発信、解説を行っていきます。今回の記事が為になったという方はスキとフォローをよろしくお願いいたします。

Twitterでも情報発信を行っています。そちらもフォローしていただけると嬉しいです。 @y_architect_p

ココナラでは図面の添削等も行っています。こちらもフォローしていただけますと嬉しいです。

Youtubeチャンネルを開設しています。
今回紹介した過去問分析だけでなく、私が実際に行っていて、指導者として受講生にも教えているエスキス法の動画も随時更新予定ですので、是非チャンネル登録をよろしくお願いいたします。

SEE YOU NEXT TIME !!

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