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日向夏の出木杉くん

朝日新聞の文化欄に、俵万智さんの文章が載っていた。
「日向夏のポストから」という、題名からしてすでに心が和む。

そこには、医療行為と介護が必要となり、施設での暮らしをされているお父さんのことが書かれていた。

お父さんに、「お父さんと結婚して本当に良かった。」と、素直に感謝の気持ちを伝えるお母さん。お父さんが家にいないことを、とても寂しがっておられる。

そんなお母さんがある日、お父さんの囲碁の本を捨ててしまったそうだ。
お父さんは、ネットで10時間くらい囲碁の対戦をするくらいの囲碁好きで、できなくなった今でも、囲碁の話をすると喜ばれる。
それなのに・・と、怒りを覚えた俵万智さんは、息子さんにそのことを愚痴る。

その息子さんの返事が素敵なのだ。

ばあばは何かしら、じいじに関わることをしたり、考えたりしたいんじゃないの。手を動かすことで、気持ちも落ち着いたりするし。

俵万智「日向夏のポストから」より


他にも、じいじの気持ちや、母である俵万智さんの気持ちを、魔法のようにやわらげてくれる言葉を返してくる。

そんな息子さんに、俵万智さんは、
「息子よ。お前は、出木杉くんではないか?」と問う。

それに対しての、息子さんの返事も、これまたかなわん。
出木杉くんは、ほんまに~。


出木杉くんと比べて、我が孫は、あかんすぎちゃんである。

大好きなミカンが登場すると、それはそれは思い詰めた表情で、
「ちょーだい!」を連発する。
皮をむく時間もまてない。
「ちょーだい!」の100連発である。
「ちょー」のところにアクセントをつけて、目を見開いて連発する。
ミカンを食べ終わった後も、これまた100連発である。
カラになったお皿をかざすも、「ちょーだい」は続く。
じと~っとした目線を私に送りながら。

孫にはお気に入りの歌の絵本がある。
それを一緒に読んでほしくて、「どうじょ~」と、私に絵本を差しだす。
洗い物をしていた私が、
「ごめんな。最後このお鍋を洗ったら行くから、もうちょっとだけ待ってな。」
と返事をする間も、
「どうじょ~」は連発される。
こちらも、100連発である。
焦って洗い物をしていると、突然爆音がする。
振り返ると、絵本を床にたたきつけている孫。
じと~っとした目線を私に送りながら。


あかんすぎである。
あかんすぎちゃんである。
いっしょうけんめいすぎである。
可愛すぎである。
みかんを必要以上に買い足してしまうやんか。
洗い物を後回しにするのは嫌やのに、後回しにしてしまうやんか。


思いを全身で伝えようとするあかんすぎちゃん。
心の中を、まっすぐに向けてくるあかんすぎちゃん。
相手をしっかりと見つめるあかんすぎちゃん。(じと~っやけど。)

そのあかんすぎちゃんを育てたのは、娘夫婦なんやなあ。
いろいろと子育てに口をはさみたくなることはあるものの
(はさまへんで。我慢してるで。めっちゃ。   たぶん。)、
上手に育ててるなあと思う。


そして、その娘を育てたのは誰や。

まあ、言わんとこ。

こんなしょうもないことよりも、是非とも、俵万智さんの「日向夏のポストより」をおすすめします。
残念なことに、今回で、この連載は終了とのこと。
寂しいけど、こんな素敵な最終回。
俵万智さん、ちょっと決めすぎ~~。
(ただのやっかみです。はい。わかってます。)

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