「在宅医療を考える」デスカフェ開催

 葬儀社、ライフネット東京(東京・品川)代表の小平知賀子さんが主宰するデスカフェが4月15日、ライフネット東京事務所で行われた。今回は「最期はどこで終わりたい?」という大テーマの下、住み慣れた地域で最期を迎えたいという人のために、大田区の在宅医療相談窓口で12年間勤務した看護師の井岡幸子さんが、「在宅医療を依頼したい時にどうすればいいのか」について解説してくれた。

在宅医療をテーマにデスカフェ


 井岡さんは医療相談窓口の仕事として、①相談業務を行いながら、②訪問医療に関わるさまざまな職種(社会資源)の把握、③地域の専門職とともに医療・介護の連携ネットワークをどう作るか、そして④在宅医療の啓発活動ーーの4つを挙げた。
 「自治体に地域包括センターとは別に在宅医療医療窓口があることは知らない人も多いかもしれないが、病院に行かなくても自宅などで、さまざまな医療サービスが受けられる。高齢になって通院できなくなったときなどにはぜひ選択肢として考えてほしい」と語った。
 大田区の「在宅医療ガイドブック」によると、在宅医療とは「できる限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けたいという本人や家族の思いを大切にしながら、医療と介護に専門職が連携し、住み慣れた自宅や施設での療養生活を支える仕組み」だ。
 医師をはじめ、歯科医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士、理学療法士、ケアマネジャー、ホームヘルパーなどの専門職が定期的に患者の自宅などを訪問し、チームとして治療やケアを行う。
 在宅医療の仕組みが整備されたのは、実は近年になってから。東京都は2010(平成22)年、東京都在宅医療連携推進事業の一環で、モデル事業として調布市、小平市とともに大田区に「在宅医療連携調整窓口」を設置した。これは今の在宅医療相談窓口の前身。
 国も2015(平成27)年に「在宅医療・介護連携推進事業」に着手。2018(平成30)年までに全国の市町村が連携体制を進めることになった。
 井岡さんは14年間、大学病院で看護師として勤務したが、介護保険スタートの2000(平成12)年にケアマネジャーの資格も取得。杉並区の地域包括センターで働いた後、大田区の医療相談窓口で仕事を始めた。
 これまでの病院医療に、新しい在宅医療の仕組みを加えていく。それにより、団塊の世代が75歳になる2025年から団塊の世代が90歳になる2040年までの医療・介護需要の急増をカバーするのが狙いだ。
 井岡さんは、「大田区の地域包括センターと在宅医療窓口は職員が連携しており、地域包括センターに在宅医療の相談をしても構わない」という。実際、医療相談窓口へはケアマネジャーからの相談が多いという。大学病院なども大田区在住の患者が退院後、どんな在宅医療を受けられるのかを知るために問い合わせてくる。
 しかし、最近は在宅医療への関心が区民の間でも高まっており、2割程度は区民から直接相談や問い合わせがあるという。
 在宅医療は、医療、介護の専門職が効果的なチームを作ってこそ力を発揮する。井岡さんは「私が着任した頃は、まだまだ医療と介護の垣根が高く、いかに医療と介護の垣根を低くするか、医療と介護の連携を推進していくか、ということが課題だった」と振り返る。

 そこで、千葉県柏市のモデルを参考に、地域包括支援センターに働きかけと協働して、医療と介護の顔の見える関係作りに努め、医療と介護の連携会である「地域包括ケアの会」を立ち上げて定期的に開催。この会は通算50回を超えた。

 医療相談窓口に持ち込まれる相談内容は以下のようなものだ。
・病院から退院するので訪問診療や訪問介護を頼みたい。
・自宅で患者を看取りたい。
・家族が介護に疲れている。ちょっと休みたいときに「レスパイト入院」に対応してくれる病院はあるか。
・緩和ケアを積極的に行なっている医師はいるか。
・医療措置(胃ろう、点滴、吸引、酸素吸入など)を受けながら自宅で療養することはできるか。

 ただ、在宅医療相談窓口は高齢者に対応するばかりでなく、0歳児からの在宅医療の相談も受けている。

 この後、デスカフェ参加者は改めて「どこで最期を迎えたいか」を話し合った。できるだけ自宅で過ごしたいという人が多かった。しかしーー。

・どんな状況になるまで自宅で過ごせるか。
・どんなACP(アドバンス・ケア・プランニング)を作るか。
・その前提としてどんなALP(アドバンス・ライフ・プランニング)を作るか。
・家族とはどのような話をしておくべきか。
・家族とどう向き合えばいいのか。
……
 在宅で暮らすと決めても、問題はいくつでも出てくることがわかった。

 さまざまな可能性を検討し、自分らしい最期を迎えるプランを立てるためには、さらに情報収集と勉強が必要なようだ。

 井岡さんは今月末退職し、地元である東京・中野にあるホームホスピスを運営するNPOに就職する。そこで、訪問看護師の秋山正子さんが開設した「暮らしの保健室」の中野版を作り、地元で無料の医療相談を行いたいという。

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