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料理は科学|塩と油とアミノ酸

自粛期間が長く続き、料理を自宅でする機会が増えた方も多いのではないでしょうか。

京都の飲食店「佰食屋」のメニュー開発ラスボス担当として最終の味チェックを行ってきた経験から、料理の【味を決めるコツ】をお伝えしてまいります♪


■ほとんどの料理の味は塩で決まる。

①塩分濃度

塩味の感じ方は人それぞれの好みではなく、実は「おいしい」と感じる塩加減は決まっています。料理によって若干異なりますが、基本的には人間の血液の塩分(0.9%)とほぼ同じで、さらに個人差もほとんどありません。(砂糖の場合は0.5%~80%まで、おいしいと感じる濃度に個人差があります)

②塩と温度

「冷」は「温」より塩味を強く感じるので、冷たい料理を作るとき、温かい状態で丁度よい塩加減にしてしまうと、冷やして食べるときには塩からく感じてしまいます。作っているときの調味は、「少し塩気が足りないかな」でOKです。

③塩の仕事

対比効果:スイカやおしるこに塩など、甘いものに塩を少し加えることでより甘さを強めます。
抑制効果:酢の物や鮨酢など、酸っぱいものに塩を加えると酸味を抑えます。

和菓子のおはぎも、塩がしっかりきいていると美味しいですよね。京都にある有名和菓子「ふたばの豆餅」は塩のきいた赤えんどう豆がこの役割を果たしています。和菓子でも洋菓子でも、塩スイーツは本当に美味しいです。佰食屋も、昔「塩スイーツ専門店」の出店案が出ていたぐらいです。


④塩はまとめ役

塩は素材のまとめ役であり、素材同士の組み合わせが悪い時や、合わせる素材の種類が多いと、使う塩の量が多くなります。一方、相性のいい素材同士や、食材の数が少なければ、少ない塩で味はまとまり、塩が効果的に活きます。

⑤マイ塩を持ち歩くのも

カレー屋さんで味がイマイチ好みでない、トンカツにソースを沢山かけても何だか・・。そんな時は「塩」の登場です。カレーの味は塩で決まりますので、好きな味になるまで塩を足してみてください。トンカツには衣では無く肉の部分に塩を付けてみましょう。
尚、塩でなくても、カレーに醤油やソース、トンカツには塩でなくマスタードやからしでも美味しくなります。トンカツの隠し味で、お肉にマスタードやからし、ワサビをたっぷり付けて衣をつけて揚げても旨味が増します。熱により辛さは無くなりますので、これもお試しあれ。

補足ですが、トンカツを作るときは、衣をつける前のお肉の両面に塩コショウをすると各段に美味しくなります。少しの手間でレストランクオリティに!塩の力を効果的に使ってください。


■うま味が飛躍する「アミノ酸×核酸」

①三大うま味物質

三大うま味物質として知られているものがグルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸です。グルタミン酸はたんぱく質を構成する20種類のアミノ酸の中の一つ。また、イノシン酸、グアニル酸は核酸に分類されます。

グルタミン酸:昆布や野菜などに含まれる(植物性)
イノシン酸:魚や肉類に含まれる(動物性)
グアニル酸:干しきのこ類に多く含まれる(キノコ類)

②相乗効果

うま味物質は単独で使うよりも、アミノ酸であるグルタミン酸と、核酸系うま味物質であるイノシン酸やグアニル酸を組み合わせることで、うま味が飛躍的に強くなることが知られており、それを「うま味の相乗効果」と呼びます。
例えば日本料理では昆布(グルタミン酸)と、かつお節(イノシン酸)を組合せてだしをとるのが基本なのは、この相乗効果を活かしているのです。

こんなところにもアミノ酸
⋆トマトは熟していく間に、糖分とアミノ酸が増えるので美味しい。
⋆カニの味・ウニの風味もアミノ酸が作っている。
⋆発酵食品はアミノ酸の宝庫である。
⋆味の素は主成分がグルタミン酸。
⋆醤油:醤油のうま味の主役はグルタミン酸。大豆と小麦に含まれるたんぱく質が麹菌の酵素で分解され、約20種類のアミノ酸に変化して生まれる。


■食品会社は知っている。塩×油×アミノ酸が売れる味。

塩が味を決める一方で、人間が大好きな味の組み合わせというものもあります。それが、「塩×油×アミノ酸」の組み合わせ。

例えばポテトチップスは正にこれ。油で揚げたポテトに塩とアミノ酸などの旨味で味付けされています。かりんとうや芋けんぴ、うまい棒などもそうですね。

【佰食屋のステーキ丼は塩と油とアミノ酸】
国産牛に★塩コショウをして焼きます。ベースのご飯にはフライドオニオン(★油で揚げている玉ねぎ)と三つ葉とステーキソース(★醤油がアミノ酸)をかけて、その上にスライスした国産牛を乗せています。

油にも様々な種類があるので、色々試してみてはいかがでしょうか。

サラダ油|オリーブオイル|バター|ラード|ココナッツオイル|ごま油|マーガリン|亜麻仁油|大豆油|コーン油|綿実油|べに花油|しそ油|えごま油|菜種油|グレープシードオイル|米油|他

佰食屋での商品開発の際、あらゆる組み合わせを科学の実験のように試していきます。組み合わせによって飛躍的に美味しくなることも多々。そのため、佰食屋にはメニュー開発する際に使う、世界中の調味料・油・香辛料などを保管する専用冷蔵庫があります。笑


■この知識を活かした激うま簡単レシピ!

1:釜揚げしらすを買ってくるだけ!10秒飯!
①温かいごはんに釜揚げしらすを好きなだけかける。
②ごま油を適量(大さじ1杯ぐらい)かける。
③お好みで塩/醤油/めんつゆなどをかける。

以上!

通常、釜揚げしらすと言えば、大根おろしと醤油で食べたり、酢醤油をかけたりするのが一般的ですが、塩と油とアミノ酸の原則にのっとったこのメニュー、美味しさが破壊的です。笑

2:万能だし醤油の卵かけごはん
①適当な瓶(タッパーでも)に醤油を2週間ぐらいで使い切れる量を入れる。
②醤油の中に、乾燥こんぶ・かつおぶし・鷹の爪(ホールでもカットでも)を好きなだけ入れて浸す。※乾燥した状態で。水を入れないように注意※
③一晩浸すと、美味しい出汁醤油として使えます。卵かけご飯にかけるとこれだけで既に美味しい。ただ、これでは油分が足りないので、食べるラー油や韓国のり、牛脂やフライドオニオン、フライドガーリック、ポテトチップスなど油がまわっているものを追加すると、食べ過ぎて危険です。

※とろみのある醤油になります。冷蔵庫で2週間程度保存可能。
※タッパーが濡れていたり、濡れた手で作って水分が醤油に入ったりすると、長持ちしませんのでご注意ください。


■料理は科学。知識で楽しく美味しい食卓を!

かつおぶしだけのお出汁も美味しい。
昆布だけのお出汁も美味しい。
でも、それを掛け合わせると、もっと美味しい。

これって、誰もが知っている料理の知識ですが、それは既に科学です。
理解して料理に取り組めば、もっと美味しいチャレンジだって出来るはず。
プロも実践しているこの考え方、ぜひ皆様も食卓で実践してみてくださいね。


料理は科学
|塩と油とアミノ酸|
でした!

株式会社minitts
代表取締役 中村朱美

Thanks!!


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