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Smile

訳あって、今日は車が使えなかった。

子どもの幼稚園まで、歩きとバスで行かなければならない。
憂鬱だ。

外に出ると、冷たい雨が頬を冷やした。

「今日は歩いて幼稚園に行くよ」

「はーい!」

と、子どもは何ともなさそう。

二人で傘をさして、並んで、とぼとぼとバス停に向かう。

寒いな・・・バス、混んでるかな・・・。
子どもの服が濡れちゃう。
着替え持ってくればよかった・・・と少し気が沈む。

でも。

考えてみれば、雨の日に子どもと歩くことはあまりない。
貴重な時間かも、と思い直す。
水たまりをピチャピチャと歩く子どもを見て、心が和む。
100万ドルの笑顔を、何度もタダでくれる。
無邪気さに癒されて、足取りが軽くなった。

バスは、全然混んでいなかった。
子どもと私と、あと二人だけ。

一人の乗客が、曇った窓ガラスに、ニコニコマークを描き始めた。
手と、足も。
そして、その横に「Smile」と。

なぜか私は、それが天使からのメッセージのような気がした。
クリスマスが近いからかな。
今の心の状態、いいよ、と、言われたような気がしたのだ。

一見、つまらない、大変だと思える日常も、
考え方を変えると、大して大変じゃなかったり、
今日のように、愛しい時間だったりするものだ。




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