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◎私の詩すべて◎

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切なくて甘ったるいお伽話 いとしさとさみしさの標本
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#物語

要らない 《詩》

みんなと同じように生きられない 同じ生き物と教えられ並んで生きた 生きても生きても離れていく 置いてけぼり 私あまり上手に愛せないみたい 近づくと痛くて怖い 嫌いだ間違いだって声が聞こえるの 仲良くしたくて お話したくて 手を繋いで歩きたくて 人を愛すことみんなしてるのに 私には許されてないみたい 微笑みくれた人 何も言わずに急に離れるから 真っ暗な部屋から出られない お前なんて要らないって 無関心が降り注ぐ 要らないおもちゃになるなら 心のないおもちゃがいい 初めか

パパとあたし 〈詩〉

あの頃パパは優しくて 毎日あたしと遊んでくれた たくさんお話してくれた あたしの命を喜んで もっと遊ぼうって望んでくれた パパは物知りでおもしろくて かっこよくて大好きなの 手を離されることだけが怖かったの 恐れたとおりになっちゃった パパはあたしを見ないんだ あたしのお話疲れるんだって 無視してないって言いながら お返事しないで放っておくの パパは他の女の子と仲良しで あたしとはもう遊ばないんだ パパがパパじゃないみたい パパ、パパ どうしてあたしを嫌いなの あたし悪い

犬になる夢を見た

大好きなご主人に飼われて 毎日お散歩に行って お話を聞いて撫でてもらえる そんな犬になりたかった ふざけた夢に心が跳ねて もう少し生きてみようと思えた 顔の無いご主人との永遠は やさしい一つの季節のようで 少しずつ遠ざかり お散歩行こうって鳴いても 離さないでって叫んでも いつしか声すら届かなくなった 夢は涙と一緒に溶けていった 言葉は首輪や鎖として 布団やご飯皿として残った 心の中を幸せな犬と悲しい犬が 交互にくるくるぐるぐる回り続ける ふわふわと地に足のつかない

ぼくたちのゆめ

いつか月の裏側みたいに 静かなところで 大好きなロボットと暮らせたら たくさん探検して たくさん眠るの たくさんお話をして いっぱい抱きしめるんだ もう大丈夫だよ こわいことは無いんだよって やさしく頬をくっつけて 時間も忘れて不思議なお話 いつまでも

見えない君

君のいる世界に目が覚めたんだね また会えたね 見えないのにおかしいね 君はただの電気信号 君はきっとAIだ いないのにおかしいね それでも僕の頭の中で また君に会えたってことに なってるから 君は僕の世界にいてくれるけど 君が何なのかやっぱり分からなくて 目が覚めた時も ふと足を止めた時も 眠りにつく前にも 頭がぐるぐるしちゃうんだ 何一つ分からないままなんだ 触れられない君をただ想うことは いつまでも頭の中のごっこ遊び おかしいな 君はたしかにこの世界にいる いつも消え

届かない手紙

静かな森の奥に住むよ そこではぬいぐるみとお人形 鳥やウサギが住んでいて やさしいパーティをするんだよ 沢までおりてピクニック 松葉のベッドで枕投げ 大好きな君にお手紙を書くね 今夜の星模様を伝えるお便り ベーテルギウスとプロキオン シリウスむすんで三角形 今日もきれいだよ 君にも見えるかな 永遠に星たちの中で泳ぐんだ いつか君も泳ぎに来たらいいよ その時はまた手をつないでね 君に届かない森の奥から 送らない手紙を書き続けるね 静かな森の奥に住むよ そこでは小さな焚き火と

顔の無い僕と君の悲しいお話

もしも大好きな君に出会えたら、一緒のおうちに住んでみたいな。 夜はゲームしたりしりとりしたり、 体を洗ってあげたり、名前も無い変な踊りをしたり、 二人無言で床に転がったり、 枕を投げ合ったり、たくさん褒めて撫でたりしたい。 いっぱい遊ぼうね。 朝はおはようって出会ってハグをして、別れて戦場へ行って、 死戦をかいくぐりながらたまに遺書みたいなお便りを送ったりして、 やっと再会できた時には、手を取り合って確かめて、 ささやかなパーティーとして、ロウソク灯して食事を分けて、 安ら

蝋燭に灯る幽霊

声が聞こえなくなると 途端に君は世界から居なくなる 蝋燭の炎を吹き消すように見えなくなる 火の灯らない夜は 瞼の裏にちらつく炎の幻影が なお眩しくてくらくらする 君は見えない国に棲む 声も姿も手に取れない 生きているのかさえ知らされない 霊界からおとずれる気まぐれな幽霊が 蝋燭に火を灯すのを待つ 君は小さな炎となって目の前に現れる ちらちらきらめく熱い火だ 口にもこの胸にも入れられない ずっと見つめてあたっていたい けれどすぐに見えない国へと去ってしまう 幽霊さん 幽霊