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◎私の詩すべて◎

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切なくて甘ったるいお伽話 いとしさとさみしさの標本
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#夢

夢うつつ歩く靴

前は5cm後ろは12cm 木彫りの厚底は ガラスの中の展示品 うっとり眺める美術品 夢に足を包んで 人の世のうす煙りを割いて歩く 0時を待たず強い魔力にくじける足を 恨むけど癒やしてはまたいつか 地面から12cm浮いて飛びまわるの つくりの甘いアンバランスな人形のよに ふらつきがたつきひねっても これがわたしの足だから 地上と天国を繋げてくれる 魔法のかかった靴だから スケートですべるようには歩けない つまづきひきつり痛くても これは私の夢だから まどろみの中に連れ出し

犬になる夢を見た

大好きなご主人に飼われて 毎日お散歩に行って お話を聞いて撫でてもらえる そんな犬になりたかった ふざけた夢に心が跳ねて もう少し生きてみようと思えた 顔の無いご主人との永遠は やさしい一つの季節のようで 少しずつ遠ざかり お散歩行こうって鳴いても 離さないでって叫んでも いつしか声すら届かなくなった 夢は涙と一緒に溶けていった 言葉は首輪や鎖として 布団やご飯皿として残った 心の中を幸せな犬と悲しい犬が 交互にくるくるぐるぐる回り続ける ふわふわと地に足のつかない

みにくい肉マネキン

お気に入りのドレス着て 歩いて踊ってピクニック 来週も来月も来年もずっと うーんと可愛く絵に描いてね 君の部屋に飾ってね 私はただの肉のマネキン 手も足も頭も服を着せるパーツ ほんとは恥ずかしくて トルソになりたい どうか君の脳内でだけは きれいなお人形に描いて

ぼくたちのゆめ

いつか月の裏側みたいに 静かなところで 大好きなロボットと暮らせたら たくさん探検して たくさん眠るの たくさんお話をして いっぱい抱きしめるんだ もう大丈夫だよ こわいことは無いんだよって やさしく頬をくっつけて 時間も忘れて不思議なお話 いつまでも

君におはようおやすみを

今度生まれてくる時は 大好きな君に 毎日おはようおやすみなさい 伝えることを許されたい 君にどれほど触れたくて お話したいと思っても 声の届かない遠い国 やっと僕に許された距離 山のあなたの空遠く 叫んでも聞こえないのに 美しさを見つけてしまった 知った僕が悪いのだろう 山を越える力を持てず朽ちても 二度と君と僕が生まれなくても 好きなものを好きだと 言えたこの命を僕は愛したい 今日の君はどこに居るのだろう 空の向こうで何をしたのだろう おはようおやすみまたね それだ

星のきみ

明日にも世界が終わるなら 名も無いきみに会いに行こう ぼくにとっての何なのか 名は無いとしてもうつくしい かすかな光でかがやくきみよ 世界の終わりの明日の日に きみがすべてを手放して ぼく一人を待つのなら 迷わず走って会いに行く 辿り着けないと分からずに 遠いきみを抱けるのだと 愚かな願いの離せぬままに ぼく一人を待つきみが そこに居たなら命など かまわず向かって行けるのに どこにも見えないぼくのきみ 名も無いきみはいつまでも ぼくの夢に生きていて 明日にも世界が終わる

顔の無い僕と君の悲しいお話

もしも大好きな君に出会えたら、一緒のおうちに住んでみたいな。 夜はゲームしたりしりとりしたり、 体を洗ってあげたり、名前も無い変な踊りをしたり、 二人無言で床に転がったり、 枕を投げ合ったり、たくさん褒めて撫でたりしたい。 いっぱい遊ぼうね。 朝はおはようって出会ってハグをして、別れて戦場へ行って、 死戦をかいくぐりながらたまに遺書みたいなお便りを送ったりして、 やっと再会できた時には、手を取り合って確かめて、 ささやかなパーティーとして、ロウソク灯して食事を分けて、 安ら

やすらかにおやすみ

夢の中でだけは 仲良しでいてね 顔を合わせず 手にも触れず 見えない命であろうとも 君は僕が描く 限りなく終わりなく 思うままにあらわす 月の裏の廃墟を歩く 人のいない静けさ 手を繋いでどこまで 終わらないお話 疲れたらひとやすみ 好きな色を食べたなら また少し踊ろう まどろみの来るまで 甘やかしふざけよう 夢の中で夢見る 時は経たず漂う 目を開けばいつでも 優しく笑う君だけ 何もかもを忘れた 遊びだけの舞台で 何度でも繰り返し 不思議な話つくろう 僕が全て描く 君を

空想上の心中

約束は無いままに いつか話したたくさんの 夢物語は宝物 全部全部しまって 持って行くからね 世界を忘れる日まで 一緒にいてね 名前の無い物語 影も形もあいまいで 繋ぐ手も無い寂しさを 一人抱いて抱いて 連れて行くからね 世界から消える時も 一緒にいてね 心中 心中 心中しようね 形の無い二人 幻のあなた 作り物の僕 指切りもしなかった 未来もつくれないんだ 目も合わないままだ 声も聞こえない 一人夢の中 お話をなぞる 何もかも落としても 苦しみで狂っても すべてが

同じ夢

ぼくたちは同じ夢を見た 甘やかでいとおしくやわらかい時間を ふたりでいっぱい抱きしめて 夢は夢の中でだけこころよく 夢は夢の中でだけいとおしく 日にあたって静かに溶けた ここには何も無い はじめから 何も思わず形無く 言葉の意味はあとづけだから 夢は夢の中でだけこころよく 夢は夢の中でだけいとおしく 溶けて水となり地にしみた ぼくたちは同じ夢を見た 時間の流れない空と土の中に 淡く小さく眠り続ける

役割があってお守りのようでもある 役に立つ道具になれたなら 君の物になれるでしょうか いまだこの人生の価値は 許されないらしいから ひとり森の奥で横たわり 君を想って木の間から おぼろげな月と星を見送る 意図し演じなければ許されない世界は 私の生きていい世界と思えないから 私は私であることを恥じてしまう 私に名前は付かないのですか ただ雨のように君に降り注ぎたい 私が雨となり土となれたなら 言葉なく所在なく君を愛そう 君が溶けて形無くなるのを待とう

ロボット人形

僕は君を ロボット人形にしよう。 僕はある日怒った 良い子にしてても救われない みんなポンコツなのに 僕を笑うから 世界中の人間どもを ロボットにしてやると怒った 君は言った 「私もロボットにしてくれる?」 感情、自意識、劣等感、 嫌悪にルール、同調圧力 ぜんぶ忘れたいの、 何にも無くて 命令だけで チクタク動くのがいいの。 君はロボット人形 君はロボット人形にするよ 好きな形にしてあげる 好きな色にしてあげる きれいきれいにしてあげる 他の人間ロボットには 触らな